医療用のマリファナ
今回は、最近話題のマリファナについての論文をご紹介します。
日本でいう大麻、英語でカナビス(canabis)とも言いますね。
日本では法律で禁止されているマリファナですが、最近はアメリカでかなり大規模に解禁されたことが話題になっています。
まあ、そうした政策の話はさておき、
マリファナは薬としての効果がある
ということは皆さん、知っているでしょうか?
これは、医療用のマリファナ、医療用大麻などと言われます。
例えば、マリファナには吐き気止めや痛み止めとしての効果があるのは、わりと有名な話です。
こうした効能を病気で苦しんでいる人に活用するのが、医療用のマリファナです。
マリファナには様々な成分が含まれていますが、
主だったものとしては、テトラヒドロカンナビノール(Tetrahydrocannabinol: THC)という使うと気持ちよくなるという精神的な作用があるものと、
カンナビジオール(cannabidiol: CBD)という、そういった精神的な作用が無いものがあるそうです。
そして、カンナビジオール(CBD)の方は、精神作用もないから安全ですし、薬としての効果も期待できるため、注目されているみたいですね。
ちなみに、マリファナ、大麻の成分は医療用だとしても
日本では法律で禁止されています。
知らずに外国から持ち込んで、逮捕されたりしないようにしてください。
さて、ここではアメリカの神経学会(American Academy of Neurology)が2014年に発表した論文を紹介します。
Systematic review: Efficacy and safety of medical marijuana in selected neurologic disorders. Neurology. 2014. 29; 82: 1556–1563.
これはシステマティック(系統的)レビューというもので、様々な研究報告のまとめです。
まあ、簡単に言えば、科学的にしっかり作ったまとめサイトみたいなものです。
ここでは、1948年から2013年の11月までに発表された論文の中で有力なものを集めてまとめています。
つまり、
65年もの長きにわたる人類の英知の結晶です。
といっても、マリファナの効果を全て調べたわけではありません。
神経学会が調べたものですから、脳や神経に関するものだけです。
実は、
マリファナは脳の病気にともなって出現する様々な症状を和らげる
と言われています。
この論文では 、主に
多発性硬化症
という免疫の異常で脳が障害される病気について書かれています。
この多発性硬化症は、様々な症状を出す病気なんですが、その症状を和らげるのにマリファナが有効かどうかを調べた研究報告を重点的にまとめています。
その他にも、
てんかんという発作的にけいれんしたり、意識を失ったりする病気や、
パーキンソン病などの体が動きにくくなったり勝手に体が震えたりする病気(全部ひっくるめて運動障害と言います)に対して
マリファナが効くのかどうかを調べた研究論文もまとめています。
ただ、ちょっとややこしいんですが、マリファナが脳の病気を根本的に治すというわけではなくて、ただ症状を和らげる、緩和させる形です。
中核となる治療は別にあるんです。
例えば、多発性硬化症という病気では、免疫を抑える治療が中核的な治療になります。
ただし、マリファナも症状を和らげる効果があるので、中核的な免疫の治療を行いつつ、マリファナも使ってさらに症状を和らげるという使い方になります。
もう少し身近なもので例えると、風邪の時に熱冷ましを飲むようなものです。
それで風邪のウィルスを直にやっつけることはできないけど、高熱で辛い部分だけは和らげることができます。
専門用語でいうと、対症療法というものですね。
世の中には、なんだかマリファナが色々な病気を根本から治すかのように言う人もいますが、それはちょっとオーバー。誇大広告ですね。
そもそも、何にでも効く万能薬なんてありませんから。
さて、一言に医療用のマリファナと言っても、マリファナを使った薬は何種類かあるようで、錠剤や、口の中にスプレーで入れるもの、吸引するものなど色々みたいです。
先ほど言ったカンナビジオール(cannabidiol: CBD)と、テトラヒドロカンナビノール(Tetrahydrocannabinol: THC)が主成分になりますが、この配分はものによって違い、大体はCBDとTHCの両方が入っているみたいですが、CBDだけのもの、THCだけのものもあったりと、色々な種類があるみたいですね。
さて、こうして沢山の研究結果を調べたところ、医療用マリファナの有効性が明らかになりました。
その結果を発表する前に言っておきますが、ここでは「多分」とか「おそらく」という風に、
いまいちはっきりしない、曖昧な表現が多用されます。
「なんだ、科学とはいい加減なものだな」「はっきりしろ」などと思われる方もいるかもしれませんが、
逆です。
科学では、はっきり分からないものを、さも分かったようにいうのはタブーです。
論理の飛躍、知ったかぶりはダメ
ということですね。
だから、科学的証拠がしっかりと出そろっていない部分は、結論を出さずに保留したり、「多分」「おそらく」などと言ったりします。
例えば、テレビで専門家がコメントするときも、ちゃんとした人ほど、「現時点では分からない」とか、「おそらくこうだと思うが、まだ断定はできない」などと言っているはずです。
「こんなことは明らかな事実」だとか「科学的に証明されている」みたいに断定する表現を多用する人の方が、怪しい、要注意だと思って下さい。
さて、それでは、この論文の結果を発表しますが、、
すでに、
多発性硬化症にともなう様々な症状にマリファナが有効
という科学的な証拠はそろっているみたいです。
一つ一つを細かく言うと、
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