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アメリカと大阪の類似性について【テキトーな話】

こちらは文化人類学や言語学の知見に基づいたものではなく、私の肌感覚でテキトーに書かれたものです。ご理解いただいたうえでお読みください。

アメリカに住み始めて早くも半年が過ぎ、現地の人と英語でコミュニケーションを取る場面が増えてきた。

たくさんの人たちとコミュニケーションを取るうちに、確信を持てたので言わせてほしい。
アメリカ(西海岸)のノリは、大阪に似ているのではないかと。


アメリカ人と言えばアメリカンジョークをぶっぱなす陽気な人たち、大阪人と言えば丁々発止のボケツッコミをかましあうお笑い戦闘民族。一般的にそんなイメージがあるだろう。

関西にゆかりのある方ならばご存知と思うが、すべての大阪人が初対面相手にボケ倒すということはない。同様に、街中のすべてのアメリカ人が両手を広げて「だから言ってやったのさ、〇〇ってね!Ha-ha!」と笑い転げているなんてことはない。

しかし、初対面の人にぶっ放す人もいる。
日常会話の途中、なにげないやり取りの中で、突如会話の温度が急上昇する。
大阪の天神橋筋商店街で「これください」と商品を店の人に渡し「はい、300万円」と返ってくるような、あの唐突なボケの急騰だ。

大阪人は相手を見る。相手を見たうえでボケのジャブを打ち、イケると踏んだら思いっきりアクセルを踏む。そう、大阪人のボケは親愛の証。イケると踏んだ相手にボケをスルーされると深く傷つく。

きっとアメリカ人も同じだ。


私は渡米前に一度、アメリカ人のアメリカンなテンションをスルーしてしまったことがあり、それを非常に後悔している。

ビザ取得窓口での出来事だった。指の形が指紋を取るのに向いておらず、うまく指紋が取れなくてアメリカ人係員さんの指示を受けながら私は四苦八苦していた。難儀した末にようやく指紋を登録できた私に、係員がぶっ放した。きちっとした服装・髪型に眼鏡の「事務員」といった容貌のおじさんが、それまでの硬い表情を崩して目を見開き、両手親指を立てて「グレートジョブ!フォゥッ!!」っと大声を出したのだ。

私は突然のテンションに置いてけぼりになり、オロオロしながら「あ……サンキュー……」とボソボソ答えてしまった。おじさんは少し寂しそうだった。おじさんの瞳は、関東に引っ越した直後に関東人相手に不用意にボケてしまい「どういう意味?」と返されたときの大阪人の瞳にそっくりだった。心が痛む。(そして同時に、突然ボケられた関東人の気持ちも知った。唐突にボケてごめんね。)

そのとき、次にアメリカ人にボケられたらちゃんとボケ返すと心に誓ったのだ。私はスルーの痛みを知ってる女やから。


先日、ホテルに泊まったときのことである。
アメリカに来て初めて私はぶっ放された。

このご時世なので朝食はビュッフェスタイルではない。ビュッフェ会場に1家族ずつ入り、入り口で1人分ずつ紙袋に入れられたソーセージ付きオムレツとマフィンとオレンジを受け取り、簡素にテーブルに並べられた紙パック入りのジュースや小さな箱入りのシリアル・コーンフレークから好きなものを選び、会場を出て、それぞれの客室に持ち帰って食べる方式となっていた。

そこでだ。ビュッフェ会場入り口で待ち構えていたスタッフがやってくれた。

※ 以下、ホテルマンのセリフを洋画翻訳調でお送りします
「あのウィルスのせいでちょっとばかしシンプルになってるが、心を込めて用意した。めいっぱい楽しんでってくれ。テーブルを見てみろ、ジュースもシリアルもたくさんある。めちゃくちゃたくさんある。選び放題だ。子どもたちも気に入るだろう。レッツパーティー!!!フッフウゥゥゥーーーー!!!!!(両手の拳を突き上げてシャウト)」

ちょ、ジャブなし、唐突にテンションMAXやん。ビュッフェ会場に響き渡る雄叫び。

心の準備ができていなかったが、私は誓いを履行した。ポカーンとする夫の横で、すかさず私も拳を突き上げシャウトした。
「イェア!パーティ!フォウッッ!!!」

ホテルマンの瞳が輝いたのを私は見逃さなかった。「お、こいつ日本人のくせにやるな」ぐらいには思ってもらえたのではないだろうか。彼は機嫌よく手を振ると私に対して目で力一杯笑みを送り、次のお客のために朝食の袋詰めを再開した。

やった。達成感。



店員さんやプリスクールの先生方を観察すると、やはり「ボケられる相手かどうか」はとても見られている気がする。大阪人の見定めと似たような空気を感じるのだ。(プリスクールの園長先生はいつでも誰に対してもテンションMAXである。東京でも大阪弁でガンガン行くタイプ。)

私が日本人であることも「ボケる」のを躊躇わせているだろうし、私がイギリスアクセントの英語を話すのも、どうやらその一因のようだ。このあいだアメリカ人に「なんでイギリス英語なの?」と聞かれた(イギリス領香港育ちだからです)のちに「イギリス英語と比べると、アメリカ英語は田舎臭いよね……」と自虐ネタを言われてしまったのだ。
なんだこの反応は。東京人の前で「大阪弁が抜けなくて」と自虐している大阪人のようではないか。やはりアメリカは大阪なのか。


アメリカ人にもっともっと「ボケて」もらいたくて、私は英語を雑に話すことにした。元々私が話す英語は文法が無茶苦茶だが、輪をかけて雑に話すことにした。
スーパーでレジ打ちの人に「You need a bag?(買い物袋はいる?)」と聞かれて「No, thank you.」と丁寧に返していたのを「No bag. Thaaankyou!(サーンキュッ)」とお茶目に返すだけで、彼らのニッコリ度が増す気がするのだ。

これを続けると、私の英語力はますます下がりそうだが。

(2310文字)


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こちらの企画に遅刻しました。ごめんなさい。


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