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悪の護身術

10代のあなた、こんにちは。

心療内科医でも心理学者でもカウンセラーでもない私が「#8月31日の夜に」タグで、悩める10代に向けて何かを書いていいものかと悩みました。
だってnote公式ってば、募集要項に『8月下旬は10代の自殺が』とか書いちゃって、本気かよ、って思いました。自殺しようとする10代に向き合った文を、本気でnoteを書いてるみんなに書かせるのかよ、って。
「あの夏に乾杯」とか「夏のオススメ」と並べて募集していいのかって話です。

【2019/08/21 16:10 追記】
募集要項の記載が修正されました。
note公式さんが指摘に対して素早く誠実に対応してくださるということを伝えるため、追記という形で本文はそのまま残しておきます。

noteは10代の自死を、エモーショナルな話として消費させる気かしら。
そういうの、あんまり好きじゃないな。

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元ネタとなるNHKのキャンペーンページに「自殺」は一言も触れられていないんですよね。
そりゃあそうでしょう。死にたいぐらい悩んでいる人に寄り添うことは、大人でも子どもでも、とても難しいことです。
「#8月31日の夜に」タグにすでに寄せられているnoteも、ちゃんとNHKの意図に沿った、もやもやとしてふわふわとした悩みに寄り添うような、ゆるく、優しく、光の感じられる文章ばかりです。
noteを書く人は、みんな、悩める10代のみなさんに本気で寄り添おうと思って書いています。

でも、note公式の募集ページでは「自殺」って書いちゃっていますね。
『「8月下旬は10代の自殺が1年で一番多くなる時期」ですが、自殺しそうな10代はさておき、ゆるふわにnoteは寄り添います。』とでも言いたいのかしら。
取り下げてもらえるようにnote運営に頼んだ方がいい?

【2019/08/21 16:10 追記】
繰り返しますが、note運営さんにより対応済みです。

自殺しそうなあなたに向けて、誰も気軽にアドバイスなど書けません。
正直なところ、あなたが死ぬほど悩んでいるなら、このタグに集まった文章を読んではいけないとさえ思います。
読んでも絶望を深めるだけです。そんな美しいnoteが集まっています。
(ちょっとだけ夏休み明けが憂鬱、そんなあなたには最適です。優しいnoteばかりです。たくさん読んでください。)

これって、死んでしまいたいほどに悩んでいる10代にとっても、10代に寄り添おうとして嫌な記憶を掘り起こしながらnoteを書いた人にとっても、不幸なことではないでしょうか。


だから私も書くかどうか、とても迷いました。
でもまぁ、書く気になったので書いちゃいますね。
呼び水をさしたのはnoteですよ。

ここからは、とても嫌な気分になる、しかも長い話です。5000文字。
10代のときに死にたくなるほど悩んだ私の、フルスイングの文章です。
有料にして気軽に読めないようにしてしまいたいぐらいですが、10代に向けての文ですから全文無料で読めるようにしておきます。

自己紹介

先に自己紹介をします。
私は過去に悩める10代だった、いまは30代の大人です。
何に悩んでいたかというと「いじめ」です。
小学校1年生から6年生まで、ずっといじめられていました。
身体に対する暴力はありませんでしたが、○人組を作るときには必ず余る、悪口をびっしり書かれた紙を撒かれる、生理用品ポーチ(生理用ナプキンと替えのパンツが入っていました)をカバンから抜かれて忘れ物箱に入れられ「これ誰のー?」と中身をみんなの前で晒される、など精神的な暴力を受けていました。ブス、ブスと罵られ、自分はブサイクだと思っていました。

なんでいじめられたんでしょうね?いま考えてもよくわかりません。

発端は小学校一年生の夏休み明け、ある女子グループに受けた些細な嫌がらせでした。
一学期に私が仲良くしていたカオリちゃん、可愛い子です、を「一学期はずっとマリナちゃんがひとりじめしてたんだから、今日からは私たちがカオリちゃんと遊ぶ。マリナちゃんは、もうカオリちゃんと遊んじゃダメ。」と言って女子グループはカオリちゃんと私を引き剥がしました。
カオリちゃんは申し訳なさそうな顔をしていたけれど助けてはくれず、私もそこで泣きつかなかったんですね。
ふぅん、って思って過ごしていたら、いじめられ役に固定されちゃった。

変なの。

ふぅん、とは思うようにしていましたが、辛かったです。
それはもう、辛かったです。毎日学校に行きはしましたが、何も楽しいことなどありませんでした。
小学校の記憶で楽しかったものは一個もありません。

親もひどかったんですよ。
10歳くらいのときかな、もう限界だ、となったときに親にいじめのことを打ち明けたんです。
もともと、うちの親は子どものありのままを受け入れてくれるタイプかというと、そうではありませんでした。
成績は良くなければならないし、口では「あなたの好きにしたらいいよ」と言いながら親の希望どおりに行動させようと誘導するタイプです。
案の定、涙ながらの私の訴えに両親はこう言いました。
「自分のことは自分で解決しなさい。」
泣き崩れて両親に抗議する私に、うっとおしい、とも両親は言ったかもしれません。パニックになりすぎてあまり覚えていません。

そのあと自殺しようとしました。
結局自殺しなかったので、いま生きているんですけど。
なんで自殺しなかったかというと当時住んでいた家がマンションの5階で、私の部屋の真下の地面にエアコンの巨大な室外機があったのです。
室外機の羽は上を向いて、ぐるん、ぐるん、と回っていました。
即死できるか怪しい高さで、万が一死ねなかったときに、室外機の大きな羽にゆっくりゆっくり巻き込まれていくのは、痛そうだなぁ。
そう思って、自室の窓枠に腰かけ足を外にぶらつかせていた私は、すごすごと室内に戻りました。

エアコンには感謝しています。この猛暑の夏もお世話になっていますし。

死ねなかった結果、当時とはうってかわって楽しい人生を送っています。
10代の途中から急に人間関係に恵まれはじめたんです。
私は何にも変わっちゃいないのに、不思議ですよねぇ。

変なの。


悪の護身術

ここから書くのは「悪の護身術」です。
いじめられる日々が続いたら、普通は気が狂います。
自殺に失敗してからいじめが終わった日まで、私がどうして生き抜いたか。それは悪魔に魂を売ったからです。

これを読んでいる10代のあなた。あなたいま、お悩みなんですよね。
いまお悩みの10代のあなたを、悪魔に代わって私がそそのかします。
対価はあとで、しっかり貰いますから、そのつもりで。


はじめますよ。

あなたの鎧を作りましょう

いいですか。
あなたを苦しめる人たちの顔を思い浮かべてください。
あなたをせせら嗤う幻聴などが聞こえてくるかもしれませんが、しっかり思い浮かべてください。
いいですか。
彼ら彼女らは、クズです。馬鹿です。下等生物です。
およそ人間と言っていい存在ではありません。
彼ら彼女らを、徹底的に見下し嘲笑ってください。
憎んでもいいですし、憎むに値する存在でさえない、と切り捨てるのも最高です。

親や先生など、周りの「良き大人」は言うかもしれません。
憎しみの感情はよくない。彼ら彼女らも、いい子たちだよ、仲良くできるはずだ、と。
そんな戯言に耳を貸さないで。
あなたを苦しめるその人たちが、いい人なわけないではないですか。
いいですか。徹底的に見下し嘲笑ってください。

その気持ちを忘れずに、学校に行くのです。
周りは馬鹿ばっかり。あぁ、くだらない。
そう、その調子です。あぁ、くだらない。


憎しみ、侮蔑、世間的には「良くない」とされる感情で鎧を作りましょう。
それらは、下手をすると、幸福なんかよりもずっと強い感情です。
鎧をまとったあなたは強い。
その黒々とした鎧で身を守ってください。

柔らかい心を保ちましょう

そこでひとつ注意していただきたいのですが、鎧の下の柔らかな心は、そのまま、みずみずしいままに保っておいて欲しいのです。
あなたを苦しめる奴らには心をさらさずに。あくまでも鎧の下で。

保ち方は、いいですか、何か好きなものを見つけるのです。
漫画でも、アニメでも、映画でも、音楽でも、何でもよいです。
あなたの感性に訴えかける、何でもよいから人間の生み出したものを愛してください。

私の場合は、本でした。図書館の本は誰よりも多く読みました。

子ども向けの冒険譚、詩集、歴史小説、理科の実験の本、とにかく片っ端から読みました。新旧、洋の東西問わず、なんでも読みました。村上春樹とかもこっそり読みました。ませた10歳ですね。
大人になって、すべてを覚えているかというとそうでもないのですが、確実に私の心を柔らかく保ってくれたと思います。

アーシュラ・K・ル=グウィン『ゲド戦記』、ミヒャエル・エンデ『モモ』『はてしない物語』、J・R・R・トールキン『指輪物語』、C・S・ルイス『ナルニア国物語』、アガサ・クリスティ『名探偵ポアロ』シリーズ。
ははっ。ありました、小学生時代の楽しい記憶。本を読んでいたときはたしかに幸せでした。
(わざわざこんな長い文章を読んでくれているあなたも、きっとすでに本好きなのでしょうね。)


そうこうしているうちに、あなたは大人へと近づきます。
高校生、大学生、社会人、だんだんと自分の裁量で動けるようになってきます。
たまたま近所に住んでいるから、という理由だけで寄せ集められた人間関係から、徐々にあなたに適した集団に属せるようになっていきます。

鎧を脱ぎましょう

鎧を脱いでもいい、と思える人に囲まれたときに、その硬い鎧を脱ぎ捨ててください。
戦略的に鎧を身につけたあなたならば、脱ぎ捨てるのも簡単なはずです。
鎧を脱がないまま成功する人もたくさんいますけどね、心から幸せを感じるためには鎧を脱いだほうがいいと思いますよ。

私は、がむしゃらに、無意識に鎧をまとってしまったため、脱ぐのにとても苦労しました。
でも、自力で脱げなくても大丈夫です。
大人になればなるほど、どう頑張っても見下せない、尊敬すべき人々に出会えるからです。

憎しみで作った鎧を脱がせてくれる人。
私にとってそれは大学生になってから出会った、優しい心根を持った友人たちでした。
先天的なものか後天的なものかは分かりませんが、底無しに優しい人というのは実在するのです。
ちなみに高校は進学校と言われるところに進みましたが、そこで出会った友人は、いい人ばかりで今でも仲は良いのですが、多かれ少なかれ同じような鎧をまとっているように感じました。
だからですかね。高校では私の鎧は脱げませんでした。

あなたにとっての鎧を脱がせてくれる人は、誰でしょうね。
学校や会社で見つからなければネット上で探すのもよいと思います。
学校や会社なんて、所詮せまい人間関係です。
どうせネットで探すのならnoteで探すのがおすすめです。
みんな、あなたと出会えるのを待っていますから。

心を柔らかく保つよう努力したあなたなら、必ず誰かに出会えます。
だめですよ。鎧の下で干からびていては。
良き仲間に出会い、うれし涙を流すためにも、心をみずみずしく保ってください。

たくさん遊びましょう

鎧を脱いで身軽になったあなたは何だってできるようになっています。
鎧を着た辛かった年月を取り戻すかのように遊んでください。


これで、「悪の護身術」の伝授はおしまいです。


対価をいただきます

だいぶ前の方で「対価はあとで、しっかり貰います」と私は書きました。
覚えていますか?
「悪の護身術」を知った悩める10代のあなたに、していただきたいことがあります。

この「悪の護身術」。
悪魔の契約ゆえに、人間の10代にとって精神医学・心理学的に推奨されるべきなのか否か、わからないのですよ。
このやり方のすべてのステップが、精神医学・心理学的にどう位置付けられるのか、これらはのちのち心に悪影響を及ぼさないのか。
それを調べて欲しいのです。

時間はたっぷりあるでしょう?
悪魔と契約して強い鎧をまとったあなたは、下等生物に悩まされていた無駄な時間をまるまる取り戻したはずです。

図書館で精神医学や心理学の文献をあたるもよし。
要点をしっかりまとめて、大学の研究者に質問を送ってもよし。
私も大人になってから気づいたのですが、研究者は、若い人、特に10代からの質問をとても喜びます。
(でも、その研究者が「良き大人」として振る舞い、あなたを諭しはじめるようならすぐに連絡を絶ってください。その研究者はクズの仲間です。)

約束ですよ。対価として実行してください。

これで、本当におしまいです。
また会いましょうね。




あとがき

いや、もう、めちゃめちゃ疲れました。しばらくは軽いnoteだけ書きます。
なんですか、この「#8月31日の夜に」というお題。
NHKに寄せられているような、ゆるっとふわっとした文章が期待されていることは分かっていますけどね。
でもnote公式が「自殺」なんていうから。

ということでnote公式はこのnoteを買ってください。(激おこ)
【2019/08/21 16:10 追記】
買ってもらえませんでした。(激おこ)
【さらに追記】
note公式さん記事買ってくださいは冗談です。
noteをゆすりたかりの温床にするなんて、ダメぜったい。(おこ)

悩める10代は完全無料。
ありがとうございました。こんなに長い文を読んでくださって。
疲れたでしょう。

大人はサポートしてくださると嬉しいですが、スキでもじゅうぶん嬉しいです。私自身は「悪の護身術」契約満了していますので。

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