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「一番最初」という表現の、正しさ以外の部分の考察

先日、保育園児の娘が、「一番最初にすべり台に乗って…」と話し出しました。
「一番最初」は意味が重複しているけれど、日常で耳にするから使い始めたのかもしれない。どうしよう、指摘しようか……。
などと迷っているうちに、娘は「で、二番最初はぶらんこ…」と言い始めたので、あわてて正しい言葉の使用方法を伝えました。
言葉の意味を正しく伝えないと、まちがった意味で覚えて定着&応用してしまいますよね。
「一番最初」は重言(重複表現)なので、使わないようにする。これが言葉を正しく使う基本姿勢だと思います。

まあ、それは当たり前なのですが、ではなぜ人は「一番最初」を使ってしまうのでしょう?
正しいとは言えない使い方にもかかわらず、です。

「最初」と「一番最初」の、ニュアンスの違い

手元の三省堂新国語辞典第6版で「最初」を引くと、「いちばんはじめ」と説明されています。やはり、「一番最初」は意味が重複している表現です。
しかし、特に話し言葉の場合では、「一番最初」という表現をよく耳にします。
試しに、Yahoo!で「一番最初」をニュース記事検索すると、結構な数の記事が出てきます。

「一番最初」は、話しているときによく出てしまう言葉なんでしょうね。

ここからは、データをもとにしない主観での考察です。
「最初」と「一番最初」の違いは何かを考えて、2つ浮かびました。

1つは、言葉がもつ力強さのようなものの差です。
「最初」よりも「一番最初」の方が、言葉としてのパワーが強く、聞く側の耳に残りやすいのかなと感じます。
相手に「いちばんはじめ」であることをどうしても伝えたいときに、「最初」よりもふさわしい表現として「一番最初」を選ぶのかもしれません。「最初の最初」と言い換えられそうな強さでしょうか。

もう1つは、「最初」が示す範囲の曖昧さです。
「最初」は「いちばんはじめ」なのですが、どうしても「序盤」ぐらいまでの広い範囲をイメージしてしまうのです。
それが「一番最初」だと、一番めであることをはっきりと分かりやすく伝えられそうに思えます。「いの一番」とも言い換えられそうなはっきりさです。

「正確さ」がない言葉もコミュニケーションでは必要とされる場合もある、かも

文化庁が2018年度にまとめた「分かり合うための言語コミュニケーション」報告では、他者とのやり取りを円滑にするために、「正確さ」「分かりやすさ」「ふさわしさ」「敬意と親しさ」の4つの観点を持って言葉選びをすることを推奨しています。

言葉選びの基準は、「正確さ」だけではないんですよね。。
この4つの観点で考えると、「一番最初」は「正確さ」には欠けるが、「分かりやすさ」や「ふさわしさ」を強く備えているように思います。
これが、「一番最初」が使われ続けている理由なのではないでしょうか。

言葉についての話題は、「正確さ」だけではなく、「分かりやすさ」「ふさわしさ」などなど、もっと広い視点でいろいろあるような気がします。。

先の文化庁報告がそれほど広まっていない、日常の場面に落とし込んで考えるという記事をあまり見ない気がするので、個人的には、今後も考えていきたいところです。

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