今さら聞けない「大統領選挙の仕組み」と「激戦州」

アメリカ大統領選挙の情報発信をする上で、一旦まとめておこうと思ったのが「大統領選挙の仕組み」についてでした。
というのも、あまりにも日本とはシステムが違いすぎて、専門用語(「激戦州」など)も多く、先にこれをまとめておかないと今どこで何が起きているのかが非常にわかりにくいなと。

とはいえどういうシステムで行われるのか、アメリカ国民もわからない人たくさんいるんですよね、正直。

ということは!そう、たぶん政府系のサイトとかできっとまとめられているんですよね。それを使って説明しようと思います。

ググってみるとやっぱりありました。笑
https://www.usa.gov

しかも、Free to useの画像が^^
そんなわけで、以下はこの画像を使ってご説明しようと思います。

まずは全体像をお見せしますね。「大統領になる方法」という仰々しいタイトル…。

左上から始まり、ピューッとルートを通って右下の大統領が選ばれるまでの道のりが図解されています。これが1年間のルートです。さて、では細かいので4つのポイントに分けます。


1.大統領になるための3つの要件

大統領選挙に立候補するためには、
①出生の時点でアメリカ国民でなければならない(帰化した人はだめ)
②35歳以上
③14年間アメリカに住んでいなければならない
という要件があります。逆にこれを満たしていれば誰でも立候補することができます。
そういえば、つい最近トランプさんが「オバマはアメリカ生まれだ」と認めたというのが若干ニュースになっていたんですが、実はトランプさんはずっとオバマ大統領のことを「アメリカ以外で生まれたんじゃないか」と疑う発言をしていたんですね。アメリカは国籍について出生地主義をとるので、アメリカ大統領にオバマは相応しくないんじゃないかと騒いでいたのは、ここのお話でした。


2.予備選挙で党の指名候補獲得へ(2〜7月頃)

アメリカには大きく「民主党」と「共和党」という2つの政党があり、歴史的にこの2つの政党が政権を争ってきました。250年近いアメリカ史の中で人々が構築していった「大統領の選び方」は、まずは2つの政党の中で大統領候補となる人を一人ずつ指名し(これを「予備選挙」といいます)、その2人が大統領選挙に立候補し(このときに他の勢力も立候補することはできます)、「一般投票」と呼ばれる選挙で最終的に大統領を選ぶという方法でした。
「予備選挙」は2月初旬〜7月ごろまで行われ、今回民主党はヒラリーがバーニー・サンダースと、共和党はトランプがテッド・クルーズやマルコ・ルビオなどと戦いました。2月以降行っていたのは、それぞれの政党がどの候補者を公認候補として出すかというものだったのです。

予備選挙は、全国50州で開かれ、各州でどの候補者が良いかを決めることになります。もちろん、州で全体の集会を開くのではなく、学校などを借りて、数十人、数百人単位で党員集会を開いて話し合ったり、あるいは投票所を本番さながらにたくさん設けて投票で決めたりします。
単純に獲得した州の数で勝敗が決するのではないのですが、このあたりは少し複雑なので、もし知りたい方はググってください。笑

余談ですが、こういうやり方をしていると、全米で2つの政党の予備選挙が報道されるので、知名度も圧倒的にこの両陣営が高くなっていきます。
そうなると、一般投票の際に第三勢力が出てきても、ほとんどの市民が「誰それ?」状態になってしまい、必然的に民主党か共和党の候補が勝ってしまうということになるのです。


3.党大会で正式に指名されます(7月中旬)

さて、民主党、共和党それぞれの予備選挙で勝ち抜いた候補者(今年は民主党がヒラリー・クリントン、共和党がドナルド・トランプ)は、7月中旬に行われる党大会で正式に大統領候補として指名されます。
この党大会は数日間開催され、党員がたくさんやってきて、非常に刺激的なスピーチをすることで注目されます。
今年は特にミシェル・オバマ夫人の民主党大会でのスピーチや、ピーター・ティールの共和党大会でのスピーチが注目されましたね。


4.さて、いよいよ最後の選挙戦、そして一般投票へ(8月〜11月)

ここから先は、一般投票日、すなわち「11月第1月曜日の翌日の火曜日」(今年は11月8日)に向けて、各候補者の最後の熾烈な選挙戦が始まります。
まさに9月のいまはその真っ只中。各陣営が本当に最後の力を振り絞って、キャンペーンを展開しています。

さて、一般投票において、とても大事な視点、「激戦州」(Swing State)について最後に説明させてください。「激戦州」が何かを知っておくと、大統領選挙のニュースがより面白く感じられると思います。

一般投票の仕組みを簡単に説明すると、予備選挙と同じく市民は州ごとに投票します。このとき、「大統領候補と副大統領候補」ペアで投票するのですが、要は「どのペアにアメリカを任せたいですか?」というのに対して、州ごとに市民が投票するんですね。そして、その州ごとに集計がされます。
ただし、50州のうち26州取ったら勝ち!なわけありませんよね。
人口がめちゃくちゃ少ないワイオミング州(60万人くらい)と、人口が3880万人にもいるカリフォルニア州が同じ民意の重さではないことは容易に想像がつくと思います。

そこで利用されているのが「選挙人」制度。50州に538人の選挙人を人口などに応じて配分し、その過半数の選挙人を獲得したら大統領になるという仕組みです。
上の図は、その配分を表したものです。まあ簡単にいうと、人口に応じたポイント制です。人口が多い州での選挙で勝った候補者には、それなりのポイントが入り、逆に人口の少ない州で勝った候補者へのポイントは少ないと。で、合計ポイントは538ポイントなので、270ポイント取った方が勝ちという非常にシンプルな仕組み。一部の特殊な州を除いて、各州では勝利した候補者がポイントを総取りできるようになっています。

さて、もう少し続けさせてください。

ひょっとしたら皆さんの中には、効率よく270ポイントを取るためにどの州を抑えるべきか計算をした人がいるかもしれません。
しかし、実はもう歴史的にずっと民主党多数だったり、共和党多数だったりする州が相当数あって、民主党のイメージカラーが青色、共和党のイメージカラーが赤色であることから、前者を「ブルーステート」、後者を「レッドステート」と呼んだりします。
こういうブルーステートやレッドステートに選挙キャンペーンを展開しても費用対効果は全く良くないので、ここはもう捨てます。その代わり、どちらの候補に入れるか決まりきっていない微妙な州に両陣営が大体的にキャンペーンを展開するんですね。
これがいわゆる「激戦州」です。赤と青を混ぜた色なので、「パープル・ステート」と呼ばれることもあるみたいです。

では、どこが激戦州なのでしょうか?
FiveThirtyEightという権威あるサイトが出しているデータをご覧ください。

(出典:http://projects.fivethirtyeight.com/2016-election-forecast/?ex_cid=rrpromo)

この図の色が薄くなっているところが、激戦州とされるところです。短縮表示で少しわかりにくいでしょうか。
フロリダ州(FL)、ノースカロライナ州(NC)、ヴァージニア州(VA)、ペンシルバニア州(PA)、オハイオ州(OH)、アイオワ州(IA)、ネヴァダ州(NV)、コロラド州(CO)、ニューハンプシャー州(NH)などが激戦州とされています。

ただ、激戦州というのは予想事業者や定義によっても少し変わってくるのでもう一つ「270towin」というサイトからも持ってきてみました。

(出典:http://www.270towin.com/maps/2016-election-toss-up-states)

茶色になっているのが激戦州とされるところで、先程よりも更に広がっていますね。要は、ヒラリーさんもトランプさんもここを取りに行くわけです。
先週の大統領選挙のニュースと演説先まとめを見てみると、やっぱり両陣営とも激戦州にばかり出向いていることがわかりますよね。

少し長くなってしまいましたが、大統領選挙の仕組みと激戦州についてお話ししました!次回は「激戦州」の戦い方について、また楽しくわかりやすくお伝えしようと思います!!本日はここまで。

では!



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徐東輝(とんふぃ)

弁護士(法律事務所ZeLo/株式会社LegalForce)/NPO法人Mielka代表/World Economic Forum Global Shaper/JAPAN CHOICE運営/『憲法の視点からの日韓問題』/Twitter:@tonghwi17

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アメリカ大統領選挙を楽しんでいただけるよう、そして民主主義の未来を一緒に考えたく、アメリカ政治の様々なニュース・情報を、現地から、わかりやすく、発信いたします! タイトルは「ホラ吹き爺さん、嫌われ婆さん」。なんだか有名な本のタイトルみたいですが、すごく両候補者を的確に言い表...
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