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027 論理③ 切り口

前々回「分ければ分かる」ことを、前回はそのコツとして「MECEっぽく分ける」こと…をご紹介しました。今回はその続きとして、MECEっぽく分けるにはどうすればよいのか、何が必要か?を見ていきます。

切り口とは?

まず最初に、次の図をご覧ください。

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左に「なんだかよく分からないもの」があり、それを上下に分けたり、左右に分けたりしています。上下に分けた人がこの「なんだかよく分からないもの」を他人に説明する場合、「上下を合わせたもの」と言うでしょうし、左右に分けた人なら「左右を合わせたもの」と言うでしょう。

このように、人は説明をする際に上図に描かれた 切り口 で物事を捉え、それによって分けよう(分かろう)とします。この切り口は、一般的には「観点」などと表現されますが、上記の通り〝点〟というより〝面〟なので、「観面」と呼ぶ方が正確かもしれません( …とはいえ、そんな造語では誰にも通じませんので、論理思考を嗜む人は皆「切り口」と呼びます)。

少なくとも、この切り口を用意してから対象を分解しないと「MECEっぽく分ける」ことが難しくなるでしょう。

切り口 3種

世の中には無数の切り口が存在しますが、まずは次の三つの基本形を知っていれば大丈夫です(あとはこれの応用にすぎません)。

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分析は元々「分けてバラバラにする」という意味ですが、最初の「①部分に分ける(パーツ分解)」はこの原義と同じで、単純に「全体を部分に分ける」ことを指します。たとえば空の醤油鯛であれば、本体・キャップ・空気に分けるやり方です(たとえ見えなくとも、中に空気が入っていることに気付くことが大切であり、そのためにはMECEを意識する必要があります)。

二番目の「②時間で分ける(プロセス分解)」は、部分に分けるのではなく「時間軸でプロセス(ステップ)に分ける」というやり方です(その倣いで言うと、パーツ分解は空間軸で分ける…と言って良いかもしれません)。

そして三番目の「③変数で分ける(四則演算分解)」は、文字通り「四則演算(足し算/引き算/掛け算/割り算)で分ける」やり方です(たとえば利益率を「利益 ÷ 売上」に分解するのが、割り算の例としては分かりやすいでしょうか?)。

ただしこれは数字に限りません。カフェでドリンクを注文する場合を見てみましょう。

カフェでのドリンク注文 = 種類 × 温度 × サイズ + トッピング
 例:コーヒーのホットをトールサイズで… あとホイップ追加で!

温度やサイズが 掛け算 で表現されている点にご注意ください。ここでは「変数(種類や温度など内容が変化する対象のこと)にゼロを代入すると、答えが成立しなくなる場合は掛け算で」と覚えておくとよいでしょう。ちなみに「ゼロを代入する」とは、カフェで「コーヒーはホットでよろしいですか?」と聞かれて「それはナイショです」と返答することをいい、「答えが成立しなくなる」とは「コーヒーを出してもらえなくなる」ことを指します。
※トッピングは省略可能なので(ゼロを代入しても成立する)、足し算で表現されています。

なお、パーツ/プロセス/四則演算のいずれの切り口で分解するにしても、切り口を使っただけで(全自動で)MECEっぽっくなる訳ではありません。自ら意識し、粘り強く、MECEっぽく分解することを忘れないようにしてください。

切り口の使い方

最後に、これら切り口の使い方ですが、次の手順に従うのが最も簡単でしょう。

1. 切り口の候補をできるだけ多く出す(どんな切り口がある?)
2. 切り口の効果を予測する(その切り口なら何が分かる?)
3. 候補の中で最も感度のよい切り口を採用する(どれが一番?)

まずは先ほど御紹介した切り口3種を参考に、切り口の候補をできるだけたくさん挙げます。前述の例でいうと「歯車が廻らない原因を特定するには、どんな切り口で分解/分析する方法があるか?」を考える訳です。歯車という大きなパーツに分けるのか、それとも「歯車のひとつひとつの歯」という小さなパーツで分けるのか…を頭に思い浮かべます。

もしプロセスで分けるなら、企画プロセスなのか、設計プロセスなのか、はたまた、材料入手から配送までの製造プロセスなのか…等々を、候補としてできるだけ多く出すわけです。

その際の注意点にあたるのが、2番目の「効果を予測する」です。切り口と効果(その切り口を採用すると何が分かるのか?)はセットですので、その両方を合わせて候補とします。たとえば、歯車という大きなパーツに分けると「大中小のどの歯車が悪いのか?が分かる」、歯車の歯という小さなパーツに分けると「どの歯が悪いのか?が分かる」などと、分解した結果を事前に想定しておくのです。

最後に、そうやって数多く出した切り口のうち最も答えが出そうなものを採用し、実際に使ってみます。もしそれで納得いく答えが出ればOKですし、もし出なくとも二番目の候補で改めて分解し直せばよいだけです。これを続けていけば、どんな得体の知れない物事であっても、いつかは必ず分かる筈です。途中で諦めずに、答えに辿り着くまで(石にかじりついてでも)分解に挑み続けてください。


このようにして、最良の切り口を選び、MECEっぽく分解すれば、(分ければ分かる筈なので)たちどころに「分かった!」という実感を得られるでしょう。しかし残念ながら、それは前々回お伝えした通り「分かったつもり」になっているだけに過ぎません。ぜひその分解結果をアウトプットし、周囲の誰かに確認をお願いしてみてください。MECEに分解できていればいるほど、「分かってるね」と言われる確率が高まることでしょう。

[参考]これまで&これからの記事

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