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年中休業うつらうつら日記(2023年6月10日~6月16日)

23年6月10日

2週間前に撮ったせいうちくんの脳のMRAの結果を一緒に聞きに行こうと、早起きするため前夜のZOOM飲み会すら早上がりしたのに、やっぱり起きられなかった私。
いや、目を覚まして起きて歩き回るまでは行ったんだが、眠そうなので、せいうちくんが、
「いいよいいよ、僕だけで結果を聞いてくるから、大丈夫」と勘弁してくれたのだ。
「どうせ床屋に回って帰るし」と。
ありがたく寝かせてもらって、アタマの内側と外側両方さっぱりしたせいうちくんを迎える。

MRAの結果はそう悪くはなく、大きな血管に異常はないが、細かい血管の先っちょの方にはすでに硬化が見られるそうだ。
「それって、認知症が始まってるってこと?」と気色ばんで聞いたら、
「そこまでは行かないし、今の状態程度に物忘れなんかもするってだけらしい」
その硬化は還暦直前の男性としては異例なものなのか、ごく普通なのか。
そこが知りたい、と言ったら驚いたような顔をして、
「ああ、そうか。そう聞けばよかったのか。聞かなかった」との答え。
肝心なところを聞いてこない男だ。やはり一緒に行くべきだったか。

認知症の一族の一員として将来必ず認知症を発症するだろうという見込みは、がん家系で死ぬ時はがんだろうと考えるのよりしんどいかもしれない。
今、現にせいうちくんの父親はかなりの認知症で特養に入所しているし、アメリカにいる伯母さんはもう20年近く、娘の顔も忘れるほどの認知症患者だ。
うちの息子も10年前にステイさせてもらったせいうちくんの従姉の家で、毎朝、
「あなたは誰?どこの大学を出ているの?」と聞かれ続けたらしい。
「人間、最後に人にする質問で人生がわかっちゃうよなぁ。僕は何を尋ねるようになるんだろう。『好きな映画は何ですか?』とかだといいんだけど」としみじみ語っていた。

頑固な希死念慮のおかげで死ぬのがイヤだと思ったことのない私にとって、せいうちくんの認知症への恐怖はまた全然別の、ある種、畏敬の対象だ。
いつか自分が大切な人のこともわからなくなると知って生きているのは死ぬより辛いだろう。
病人の世話などできる私ではないから、施設に入る心づもりの彼に何と言ってあげればいいのか。
「毎日、出会い直して恋をしよう」なんて陳腐なことしか言えないや。

生活上の注意としては、「地中海食」がいいらしい。
もちろんせいうちくんも「そりゃいったいなんですか?」と聞き返してきたってさ。
オリーブオイルと動物性たんぱく質(脂質は避ける)をたくさん採って、赤ワインを飲むと良いそうなのだ。
「週末にタラモサラダ作るつもりだったからちょうどいいね。あれ、オリーブオイルたくさん使うよ」と言ったら、「でんぷんはNG」だって。
要するに前に必死でやってた「糖質制限」が認知症にも効果があるってことか。
焼きそばもアカギのアイスバーもダメになるが、また糖質制限に戻るかなぁ。

吉田秋生の「詩歌川百景」最新巻が届いたのをきっかけに、続き物になっている「ラヴァーズ・キス」全2巻と「海街Diary」全9巻を読み返す。
ついでにこれまた続き物の「YASHA(夜叉)」全12巻と「イヴの眠り」全5巻も読んだ。
ホントは最初に「BANANA FISH」全19巻を読むべきなんだ。短編集の「PRIVATE OPNION」も。
いったん手放してしまって文庫版しか入手できなくなっていた「BANANA FISH」全巻が、最初の「まっ黄色の表紙」の版で買い直せたのはとても嬉しい。
アニメ化されてBANANA FISH人気が復活したおかげだ。ありがたやありがたや。

それにしても吉田秋生は、「BANANA FISH」の初めと終わりですっかり絵が変わってしまい、その後ずっと「とんがりすぎ」の顔で「ラヴァーズ・キス」まで描いてたんだが、よく「海街Diary」で丸い顔に戻せたなぁ。
「河よりも長くゆるやかに」をこよなく愛するせいうちくんなんか、神様が戻ってきたような喜びようでほとんど涙を流していたよ。
もちろん「詩歌川百景」も愛読している。

そう言えば、こないだせいうちくんと話してる時に、
「うさこのおなかは丸くて可愛いよ」と言われて、
「大友克洋の『アホな強盗が入った時に突っ立っていた裸の幼女』のおなかみたい?」と聞いたら、ものすごく驚いていた。
「まさにそのシーンを思い浮かべていた。なぜわかったの?!」
まあ、あの強盗と幼女と扇風機の暑い夏の話はなんだか忘れがたいよ。

今日はそのお返しをされた。
「あなたは吉田秋生のキツネみたいな細目も好きなんだよね。煮詰めると『吉祥天女』に行きつくみたいな」と言ったら、パジャマから腕をのぞかせて、ペロリと舐める真似をされたのだ。
そ、それは吉田秋生の「ジュリエットの海」じゃないか!ススキで腕を切る!
こんな狭いところで分かり合ってしまう自分たちが嬉しいような恥ずかしいような、ぎゅっと抱き合ってごまかすしかない時間だった。
お互い、オタクな青春を送ってきたもんだね。

23年6月11日

前に住んでたマンションの近くにいい皮膚科のお医者さんがいるので、せいうちくんと行ってきた。
第二・第四日曜に限って昼まで3時間ほど開いているようだ。
私は手術の傷がケロイドになってるのを鎮めるためのテープをもらい、せいうちくんはアトピー止めの塗り薬。

頬のしみは液体窒素でかなり綺麗になったから、今度は目の下のそばかす様のものをお願いしようと思ったが、治療中に日焼けすると台無しになるので、夏場は避けるべきだって。
「秋にやりましょ。秋に」と言われた
ざっくばらんで親切でちょっとお高くとまっていて、でも頬とか小さく白い手とか妙に触れたくなる魔性の女。
一方で、不愛想でツンデレな江口のりこ似の心臓医とか、あちこちの病院に気に入りの女医さんをかこっている私である。

今日はギリギリ雨が上がっていて自転車で行けたが、これからの季節、車を処分してしまった我々にはなかなか苦しい。
皮膚科以外は歩いていける範囲に病院や買い物先を確保してあるが、せいうちくんが趣味の「あちこちのスーパーでそこのウリ商品を買う」を発揮しにくい季節ではある。
そのうちネットスーパーとか生協の配達とか導入しようかなぁ。

午後はやっぱり昼寝をしてしまい、2人で目が覚めたら18時。
「どうする家康」のBS4K放送始まっちゃってるじゃないか。
結局その日の夕食はノーマルな家康の時間に4Kの録画を観るという形でとることとなった。
もう6月半ばなのにまだ本能寺に行きつかなくて、大丈夫なのか。
信長の話じゃなくて家康の話なんだから、幕府成立まで行かないといけないんだろうに。
思っていたより松潤家康に入れ込んでいる我々。
それにムロツヨシ秀吉がどんな太閤さまになるのか見たい。

23年6月12日

いよいよ関東地方も梅雨入りしたらしい。
これで堂々と「湿気がツライ」と文句が言える。
湿度70%、温度26度を超えると私は機能しなくなるのだ。
湿気当たりでぐんにゃりしてしまう。
今年は電気代高いんだけど、エアコンで除湿するしかない。
こんなんで、「次世代以降のエネルギー事情を憂えている」なんてどの口で言うんだろう。

雨の合間を縫って洗濯するのにも限界があり、景気よく乾燥機を回す。
その熱が洗面所にこもって、ほとんど立ち入り不可。
歯磨きはリビングで扇風機にあたりながらするしかない。

こないだ長老とGくんが泊まり飲みをしに来てくれた時、「風呂上りはどんな恰好か」って話になった気がする。
その時言ったか言わなかったか忘れたが、うちは基本「裸族」である。
私は全裸で扇風機にあたりながら各種サプリをのみ、せいうちくんはアトピー肌に薬を塗ったりする。
息子が1人で泊まりに来ると、必ず素っ裸で扇風機の前で大の字に寝ているのはDNAよりも文化のせいなんだろう。
いや、待てよ、さすがの我々も、彼が第二次性徴を迎えてのちはそんな真似はしていないぞ。
三つ子の魂百まで、ってやつだろうか。

そういう不思議を抱えたまま、今年もうちの扇風機は夏だろうが冬だろうが1年中しまわれることなく、毎日稼働している。

23年6月13日

佐藤秀峰の「ブラックジャックによろしく」「新・ブラックジャックによろしく」を読んだ。
彼は自分のマンガをはじめ、マンガの電子化に大賛成の立場で、自作はKindleなどでいつでも無料で読めるようにしてるみたいだ。
原稿料をもらって連載をし、コミックス化されてある程度本人が潤ったらあとは世の中に還元していきたいという考えらしい。
立派な姿勢だと思う。

「ブラよろ」の精神科編と抗がん剤の話、「新・ブラよろ」の臓器移植の話にはまいった。
精神科は現在では街に心療内科も増え、受診はカジュアルなものになっている。
時代は「臭いものに蓋」ではなくなっているようだ。
昔は僻地の病院に閉じ込められ、親族からも死んだ者のように扱われ、完治・社会復帰はあまり考えられていなかったらしい。

抗がん剤にしても、本人に告知しなければ十分な治療ができないのに告知は忌み嫌われていたという。
私は自分ががんなら当然知りたいし、ついでにあまり無理な延命治療はしたくない。
治療で不死になるなら別だが、どうせ人間は必ず死ぬのだ。
運よくこの歳まで生き延びた以上、もし余命を宣告されたらその有益な使い方を考えたい。
末期の肺がんが発見され、それを受け入れて趣味の切手を猛烈な勢いで整理したのちホスピスに入って悠然と死んでいった父親の影響が大きいのだろう。

夜中ずっとあれこれ考えさせられながら読んだ大部で、頭がパンパンになった。
人間はどう生き、死んでいくべきか、あんまり夜中に1人で考えるのは良くないかもしれない。

23年6月14日

「ブラよろ」が面白くってついつい徹夜をしてしまった。
朝から眠りに入るのは久々だ。
もう徹夜なんてできない歳になっているらしく、激しく消耗した。
15時頃まで切れ切れの眠りの中で悪夢の連続パンチを食らってしまった。
たいていの悪夢で、私は仕事を探しているか大学に残ろうとしている。
仕事を辞めざるを得なかった後悔、大学で勉強しなかった悔いが今頃出てくるとは。
寮の掃除当番等をサボり倒して4年間居座った罪悪感も相当あるようで、「全館、自分1人で毎日掃除しますから置いてください」と夢の中で先輩たちに土下座していた。
そんなに後悔するならその頃ちゃんとやってればよかったのに、若い頃からバカだったなぁ。

今週末は我々の34回目の結婚記念日にあたるので、2人で外食してお祝いしたうえに息子夫婦が泊まりに来てお祝いしてもらうというゴージャスな計画。
手巻き寿司でもてなしたいので自転車で20分ぐらいの激安八百屋に大葉や貝割れ大根を買いに行こう、雨にならないといいなぁ、などと段取りしている。

困ったことにせいうちくんにプレゼントするつもりでポチッた「ブラックジャック時計」がまだ届かない。
1週間から4週間かかるらしく、この週末でちょうど2週間経過。
届いてもおかしくないし、届かなくてもしょうがない。
せいうちくんに、と言うより息子夫婦に見せたくて、首を長くして待っている。

23年6月15日

毎日毎日とろとろと眠ってしまうのは、湿気で体力を奪われているせいにしておこう。
「ポーの一族」のアランみたい。
「メリーベルも雨には弱かった」とエドガーの独白。
ただの不精がなんだかロマンチックになるじゃないか。

問題は、日記に書くことが何もなくなる点だ。
昔は何かの考察をでっち上げて長々と書く特技もあったが、最近何にも考えられなくなっている。
せいうちくんは、
「頭の根幹からリセットしている時期なんだと思う。いいことだ」とやたらに前向き。
確かに、この状態だと悩みもぼんやりして焦点を結ばないからなぁ。

さっきちょっとみた夢で、せいうちくんがくっきりとしたザビエル禿になっていた。
これはとてもイヤだった。

あと、父と姉と一緒に食事に行く夢をみた。
母がいない。
こんな事態は現実には起こったことがないと思う。
母は私の中からついに成仏してくれるのか。

半袖パジャマが不足している。
去年愛用していたものをサイズオーバーしてしまったのだ。
頼りにしている通販のセシールは半袖パジャマに関してはまったくあてにならない。
私の好むシャツタイプの綿100%のやつを、全然売ろうとしないのだ。
パジャマに可愛いフリフリなんかいらない。
Tシャツタイプも二重ガーゼもいらん!
なぜ半袖はなんでもかんでも短パンタイプのボトムスと一緒に売るのだ!
と、単にこちらの好みが狭いだけなのに、PCの前で怒りの汗をかいている。

こういうことがあるから、車中泊の旅の途中でも大型スーパーに寄るとついついパジャマを物色して、荷物を増やしてしまうんだよなぁ。
現に、今着ているパジャマは旅の間にイオンか何かで手に入れたものだ。
来週、せいうちくんと2人で初めての車中泊の旅をするからその時に仕入れられるといいのだが。

パジャマだけは、自分で縫う技術があったらどんなにいいかと思う。
布地屋さんには奇天烈な柄の綿生地がたくさんある。
かつて大変気に入っていた「水色の地に下駄と扇子が乱舞している」とか「白地にトサカと足の赤と黄色がものすごく映えるニワトリの群れ」とかのパジャマはもう二度と見つかっていない。

その悩みと並行して、せいうちくんとの体感の寒暖差が激しくなるのも今頃。
たった今、半袖パジャマで作業している私の横で、せいうちくんは長袖パジャマにはんてんを着込んで仕事している。
寝る時も、エアコンのドライをつけるとせいうちくんは薄手の羽根布団をがっちりかぶってないと寒いらしいが、私はおなかの部分にだけ布団の端をちょこっと掛けている状態。
夕食時などは「食べると汗をかく」という理由で私は半裸で食卓に着いていたりする。
暑がりと寒がりの同居はかくも厳しく、電気代も絡んで悩ましい夏になりそうだ。

23年6月16日

今日は結婚記念日イブ。
つまり、34年前のこの日、2人して「明日は結婚式だー、早く寝なきゃ」とかやっていたわけだ。
翌朝、ケンカを始めて「もう式場に行かない!」と私がゴネていた記憶しかないんだが。

記念に今夜、外食することにした。
前回「北島亭」でとても美味しいステーキを食べたので、また食べたい。
「その肉」が確保されているかどうかは今日、行ってみないとわからないそうだ。

幸いお天気も良し、夕方からの外出なのでそうくたびれないだろう。
定例ZOOM飲み会に間に合わない恐れはあるが、それは先週伝えておいた。
あさって息子夫婦が泊まりがけで遊びに来てくれるので、明日はその準備と買い出しに追われそう。
正当な結婚記念日なのに扱いが悪くて、すまんね。
今日、しっかり祝ってくるから。

昨日、Twitterで「#義母嫌い」「#義母アレルギー」を読んでしまった。
GWでもないのに、なぜ突然のトレンド入り?と首をかしげる人もいたようだ。
新婚半年、せっかくの2人きりの休日に「泊まりにおいで」と言う義母は嫌われるのだろうか?
戦々恐々と、せめておいしいものを食べてもらおうと思っている。
姑になるのも大変そうだ。ただの大好きな女友達、ってわけにはいかんのかなぁ。

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