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マンガ読みの年中休業うつらうつら日記(22年10月22日~10月28日)

かなりの勢いで寒くなってきました。いつの間にか上着を着てます。薄手のパーカーとは言え、ついに上着のいる季節かぁ、と年月が経つ足の速さに茫然。もうじき11月。コロナの1年がまた暮れようとしています。思ったより慣れてしまったような、やっぱり今でも大変なんだろうなぁみたいな、どっちつかずな気持ちです。まわりで重症化したり後遺症が残ったりした人がいないせいかもしれません。息子を含む皆、風邪をひいたようにかかり風邪をひいたように治っています。隔離期間中が退屈だったって話を一番よく聞くかな。これでは緊張は薄れてしまいますね。でも気をつけて過ごします!

22年10月22日

昨夜の定例ZOOM飲み会は比較的早く落ちた。
明日、用事があるから早起きしたかったのだ。
しかし結局寝つかれず、夜中にまだオンラインになってる長老を呼んで個人的にZOOMしてもらう羽目になった。
もう寝ようと思って歯を磨いてた長老、すみません!

最近話題の人、Hくんは私の落ちたあと、やってきたそうだ。
何か私に怒っている、と言っていたらしい。
それはぜひ理由を聞かねば。
日記に悪く書いたせいかしらん、意外と単にカラオケで誉めなかったのが紅一点の責として重くのしかかってくるのかしらん。

朝になったらとても久しぶりな2日続けての普通の週末。普通こそ貴重、と2人で大喜び。
古い友人Nさんが近く引っ越しをして故郷のお母さんを呼び寄せ、同居介護を始めるそうだ。
今、本を捨てまくってると聞いたので、あわてて「捨てるぐらいならください」とお願いして、今日取りに行く。
前々からNさんちの本の山はせいうちくんの憧れの的で、自炊技術を駆使して全部データ化しますから、と提案していたのだ。

引っ越しが現実的になるより何年も前からの話だったが、本当に本を始末せざるを得ない時に思い出してもらえなかったのは残念で、すでにもうずいぶん捨ててしまったため続き物の欠落やシリーズ物が一部しかないとかが大量に発生してる恐れがあるという。
「それでもかまいません!」とレンタカーを借りて、引っ越し前のNさん宅に押しかける我々。
段ボール10箱分以上の「捨てるしかない本」をもらった。

本の山はまだまだあるそうなので来週にも同じ要領で引き取らせてもらうことにし、今回はお礼に近所の店で天ざるをおごる。
近所に住んでるNさんは「ずっと前に来たけど、特に美味しいという覚えもなく忘れていた店」だそうで、軽いつまみとビール(我々ドライバーなのでNさんのみ)を頼み、それからオーソドックスに「天ざる」を3つ。
天ぷらが熱々で衣のサクサク加減が実によく、蕎麦は細めでそば粉の配合が良く、冷たくて美味しかった。
こんなに美味しい天ざるを食べたのは初めてかも。
四谷という東京のど真ん中にエアポケットのように存在する気持ちのいい下町だった。
Nさん、いいとこに住んでたんだねぇ。

「じゃあ、また来週よろしく」と言って段ボール箱をいっぱい積んだワゴン車で、帰り道にはこれまた「20年近く前の引っ越しがまだ片付いていない」K子ちゃんちに寄って、整理しようと思っていたというマンガを受け取って帰る。
段ボールが玄関から出ないぐらい荷物が積み上がってる部屋ってのも想像しにくいが、彼女はそこから何とか段ボール2つ分のマンガを出してきてくれた。
お礼に持って来たお菓子を渡し、向こうからも貸してた本の返却と共にお菓子をもらう。いかにも女子だ。

せいうちくんは帰ってから猛烈な勢いで陽の差すベランダにNさんの本を広げ、虫干しすると同時に埃と湿気で歪んで表紙がベタベタになってる本を1冊1冊固く絞った布で拭いていた。
「さすがNさんだ。本を大事にしない乱読家とは聞いていたが、表紙を拭いただけでバケツの水が2回真っ黒になるとは!」と驚いてた。
来週と再来週も本を引き取りに行くことになっている。
思ったよりはるかに多いラノベは不要としても、他の本はなかなか珍品ぞろい。
K子ちゃんのマンガは綺麗にする必要もない状態で、正直宝の山だった。


今日のマンガはあずまきよひこ「よつばと!」既刊14巻。
これね、最初は「四羽の鳩?四葉のクローバー?」って結構悩んだのよ。
まさか「よつば」って女の子が出てきて、「よつばと(花火)!」とか「よつばと(スイカ)!」とか「よつばと(お年玉)!」って意味だとは想像もしなかった。
子供のかわいらしさとわけわからなさと不安な気持ちとどーでもよさが的確に描かれている。
とーちゃんはどうも本当のとーちゃんじゃないみたいだし、とーちゃんの友達のじゃんぼはただ大きい人だし、となりの姉妹たちもよつばの生活に色どりを添える。
息子が大好きな作品で、14巻を読んでしみじみと言っていた。
「よつばが、初めて『心の声』を持つんだよ。これまで彼女は自分の考えてることと言ってることが一致してたんだけど、ついに『自分の内心』を体得したんだね」
そこまでは気がつかなかった。参りました。

22年10月23日

今日も1日ヒマなので嬉しい。身体が震えるほどだ。
Gくんが車中泊の旅行に出かけてしまい、手始めに長老の山荘に泊まりに行くそうなのでZOOMを申し込んでみた。
本当は我々も行きたくて、せっかくレンタカー借りたんだから家に本の山を運び入れるだけ運び入れてそのあとは山荘に行っちゃおうか、って猟奇的な計画を立ててはみた。
しかしせいうちくんももはや若くはなく、「それで1泊して日曜日に帰るって、ちょっと無理」と弱気だ。
実際に荷物を搬入したあとは私でさえ「無理だ!」と思ったよ。

夜に山荘にいるはずの長老とGくんをZOOMに呼び出すだけで満足することにした。
昨夜長老にはお願いしておいたからたぶん出てくれるだろう。
FBによればもう着いているらしいGくんで、2人とZOOMしようと思ってあらかじめ予告しといたんだが、2人とも連絡がつかない。
「酔いつぶれて寝ちゃったかな?」とせいうちくんと顔を見合わせてる間にGくん登場。

なんでもお隣の別荘(当然かなり離れている)の老夫婦にお招きを受け、2人とも飲みに行ってたそうだ。
Gくんはかろうじてまだ50代の端に小指が引っかかってる状態なので、80歳の奥さんから、
「若いうちは何でもやれる。今からでも遅くない。働きなさい!」とお説教を食らったそうだ。

仲間内では40年無職で通し、「働いたら負けだ!」と常々豪語しているGくんに「働け」なんて無茶を言う人はいないので、世間にはいろんな人がいるなぁと面白く傾聴した。
「長老がなかなか帰らんのだ。もう、わしが引きずって帰るしかないかと思っていた。向こうはもう後片付けに入ってるのにいっこうに帰る様子を見せず、『皿洗いがすむまで』とか言って他人の家のビールを勝手にさらにひと缶開けていた。大変だった」と語るGくん、意外と良識派だったのね。
我々と飲む時はもう最初から帰らない構えと言うか、翌日も起きたら飲み始めて2日目の宴会に突入をためらわない人なんだが、さすがに初めて会った人の家でそういう狼藉はできなかったか。
勝手知ってる長老の方がやんちゃだったわけだ。

3、4年前、まだコロナが起こる前、長老が会社を畳んでヒマになったのと娘さんが2人とも結婚してやることがなくなったのとで、山の別荘でプチ合宿を毎夏開いていた時期がある。
Gくんはそんな時にふらりとやってきたが、まだ長老とはあまりなじみがなかった。
配車の関係で、長老が東京に帰る2日後までGくんと2人きりになってしまい、
「わしは彼とそれほど知り合いじゃないんだぞ!」と戸惑っていた長老だが、ビールを飲みながら「若い女性の水着はビキニとハイレグとどちらがいいか」「ブルマーとミニスカ、どちらがいいか」などと話すうちにすっかり親しくなったらしい。
今ではGくんが始めた定例ZOOM飲み会でこの2人が最後の最後まで、なんなら夜明けまで2人きりでどっちかが酔いつぶれて復帰不可能になるまでしゃべり続けているのを皆が知っている。

私が知っている人間の中でもっとも細かいことに気がつく2人だから、無理もない。
外向きには酔っ払って機嫌のいい長老と、酔っ払って怒鳴り散らすGくんは正反対に見えるが、スタイルが違うだけで中身はすごく似ているような気がする。
ZOOMのメンバーが皆落ちた深夜過ぎに行ってみて、この2人と話すのが大好きな時間だ。

本人たちは深く考えていないようだが、人間60歳ぐらいになってからでもすごく親しい友達ができてしまったりするもんなのだなぁ。
私にもそういう人が現れないかしらん。
女性がいいな。
森薫の「乙嫁語り」みたいに「姉妹妻」の申し込みをしたいぐらいだ。


今日のマンガは大場つぐみ原作・小畑健作画の名作、「DEATH NOTE」全14巻。
これは本当に好きで好きで何度読んだかわからない。
だから悔しい。
どう考えても映画版が一番よくできているのだ!
女性FBI捜査官の死に方も、宿敵「L」の最期も、原作よりはるかに映画のストーリーの方がすごい。
さらに、「L」の死で盛り上がらなかった分を埋め合わせるように原作マンガにはニアとメロという「Lの後継ぎ」が出てくるが、これがかえって話をややこしくしている気がする。
本当に珍しく映像化作品の方を絶賛してしまうのだが、L役の松山ケンイチ、ワタリ役の藤村俊二、八神警部の鹿賀丈史、ミサミサの戸田恵梨香、どれをとっても最高のキャスティング!
ただ、個人的に藤原竜也はあまり好きでなくてキラの風格を感じにくいので、せめて当時の櫻井翔を使ってくれたらどうだったろうか。
マンガは説明が多くて読むの大変だけど、こんな設定考えつく大場つぐみって天才か!?って思う。
もちろん小畑健の絵もうまい。
ある時代を作ったマンガのひとつだろうなぁ。

22年10月24日

そろそろ整形外科に行かなくては。
月にいっぺん、ひと月分の湿布薬と鎮痛消炎ジェルをもらっておかないと足りなくなってしまうのだ。
午前中は起きられなかった。
夕刻を狙おう。

17時半ごろに行ってみると、案外混んでいた。10人ぐらい待ってたかな。
寒くなってきたせいか、炎がひらめく形の大好きなストーブが復活していた。
ちろちろと偽物の炎が上がるのを眺めながら本を読んで待っていたら、30分ほどで診察室に呼ばれた。

あいかわらず両手人差し指と中指の腱鞘炎は触れると筋を感じる程度には良くないそうだが、これぐらいだとただちに効く注射をするほどではないらしい。
指を曲げるとパキパキとひっかかる「ばね指」の症状になってから、だそうだ。
とりあえず鎮痛ジェルを塗って様子を見てくれって。

両ひざも、今ぐらいだったらヒアルロン酸の注射をするまでではなく、ただ太ももの「大腿四頭筋」を鍛える運動をすれば良くなる見込み。
問題は、めんどくさくて毎日の体操を怠ってることなんだよなぁ。

ともあれ、ひと月分のシップとジェルをもらって帰る。
今日はせいうちくん、久々の夜の会があって帰りが遅い。
名古屋の友人Cちゃんが「コロナにかかった若い二人はどうなの?」とLINEをくれた。
「もうすっかりいいみたいよ」と答えると、「そう。重症化する人もいるから少し心配してたのだけど、よかったわね」と気遣ってくれる。
いい友達だ。

息子は大丈夫と言っていたけど、カノジョは本当によくなったのかしらん。
「2人とももう大丈夫と聞きました。お粥とか慌てて送りすぎたから、もし邪魔になって困るようならご実家に持って行ってください。(2歳児の幼児がいるので)子供がいくつまで離乳食を食べていたか、昔のことでおぼつきませんが、何かと役に立つかと思います」とLINEすると、すぐ返事が来る。

「ご迷惑かけてすみません。邪魔なんかじゃないですよ。熱は下がりましたがまだのどが痛いので、お粥は1食に2ついただいたりして重宝しています。いろいろ送ってくださり、ありがとうございました」って。
うーん、やっぱり息子の報告ってあてにならないぞ。
カノジョももうすっかりいいのかと思っていたら、まだのどに残っているのか。
「どうぞゆっくり休養を取って元気になってください」と〆る。

その息子に、こないだせいうちくん方のおばあちゃんから「誕生日に何か送りたいから住所を教えて」と言われてたんだよね、彼は。
もちろん教えていた息子だが、せいうちくんはご機嫌斜め。
「あなたは何をするかわからないから、息子の住所が知りたければ僕に聞いて!」と電話で文句言った。そしたら、
「過ぎたことをいつまでもぐちゃぐちゃと。わかりましたよ!もう私は金輪際何もしませんよ!」と怒っていたお義母さんだった。
せいうちくんが、
「息子が可哀そうだから、僕に怒ってるからって何も送らないとかしないでくれ」と頼むと、
「あたりまえじゃない。私にもかわいい孫なんだから!」と言っていたんだが、息子に聞くと誕生日を2週間過ぎた今でも特に何も届かないらしい。

「おばあちゃんとお父さんがまた小競り合いを起こしてたから、忘れちゃったのかもしれないね。巻き込んでごめんね。気にしないでいて。またこちらから何か送るから」と告げると、
「僕のことは全然気にしないで」とけなげな返事。
人から住所聞くだけ聞き出しておいて贈り物はしないなんて、ますますただ住所他知りたかっただけに思えてしまう。
そしてあの人の場合、住所を知るということは相手方のことを調べたり突然訪ねて行ったり向こうの親御さんに何か言ったりといった極端な行動が伴ってきたのだ。少なくともかつては。
本人もその自覚があるからそのへん文句言うと「すぎたことをぐちゃぐちゃと」って文句になるんだろう。


今日のマンガは橋本哲の「乱歩の美食」全2巻。
乱歩と言えばあの江戸川乱歩か、彼はどんなものを食べていた?と興味がわくのは当然、実は私も騙されたも同然の状態でこの2冊を手にすることになった。
探偵・宇田川乱歩は浮気調査などの尾行を引き受ける時に必ずある条件を出す。
尾行の中に1回、食事の場を入れてほしいと。
人間は何をどう食っているかで決まる、というのが乱歩の哲学で、ターゲットの食生活を見てさまざまな判断をしたいんだそうだ。
そして今日も浮気かと思った相手は単に郷土料理を食べに行っただけだったり、早々に証拠写真まで撮れてしまったのでアシスタントの女性と四川料理としゃれこんだり、行方不明の人を探し当てたりして探偵乱歩の活躍は続く。
作るところはほぼ関係ないんだが、「美味しんぼ」に似た作風になるのはもう、しょうがないだろう。

22年10月25日

年に1度の主婦検診。
この地では初めてとなるため駅前の、行ったことない病院を選んでみた。
9時半と言われているので「9時ごろ行くと早めにやってくれる?いや、9時からの受付の人を先にやるからやっぱり9時半のワクの人は9時半に行くのがいいんだろう」と考えて9時20分ごろ行ってみて驚いた。
まだ開いてない待合室前の空間で、4人がパイプ椅子に座って待っている。
開院そのものが9時半からだったのか!

他に椅子はないので立って待っていて、きっかり9時半にカーテンが開かれ扉が開いた。
待っていた順(自分が「5番目」である以外はわからなかった)に呼ばれて、受付をすませる。
あー、早く来過ぎなくてよかった。
椅子にはありつけたかもしれないが、9時に来ていたら正真正銘30分まるっと待つところだった。

中に入れてもらってからは検診券や自己申告の生活習慣表を渡し、更衣室に案内されて検査着に着替える。
今回は検査の項目を大幅に削ったので、きっと早く帰れるだろう。

と思ったら意外と長い。3時間近くかかった。
血圧と身長と体重と腹囲測って、採血・採尿して、胸部X線写真撮って、視力検査と聴力検査して、子宮頸がんの検体採取して、心電図取って乳がんの触診とマンモグラフィーやった、それだけなんだよ。
更衣室や着替えがあるということは保健センターなんだろうが、慣れてなさすぎる。

とか言いながら、視力検査ではお茶目な真似をさらしてしまった。
片眼で覗いてる顕微鏡のようなものに5つ、アルファベットの「E」みたいなのがあっちこっち向いてて、その向きを答えるんだが、上1列5個を言い終わったら、「じゃあその下、6番からお願いします」と言われ、とっさに「6、7、8、9、10」と大声で読んでしまった。
ちがうよね、その数字の下の記号の向きを答えてほしかったんだよね。
言っちゃってからは完全に理解できたよorz。

検診終わって帰る時、検査着のポケットにロッカーのカギを入れていたんだが、それとは別にコンタクトケースが入ってるのを見つけた。
どの検査着のポケットにも入ってる?いやいや、それは大げさだろう。
気になるので使用済みのかごに入れる際に抜いて、更衣室の鏡の前に置いてきた。
そして廊下で看護師さんに、「検査着のポケットにコンタクトケースが入ってました。私のじゃないんですが」と伝えると、非常に恐縮して「失礼いたしました!」と謝ってきた。
「検査着洗ってない」疑惑かな?
誰のコンタクトケースだったんだろうなぁ。

結果は1か月後。
乳がんと子宮頸がんは毎回少し気にしてるが、血液検査や胸部レントゲンはしょっちゅうやってるから気にならない。
何かあれば心臓の方の定期検診で出るだろう。
せいうちくんに懇願されるので毎年主婦検診は受けてるが、ちょっとめんどくさいね。

息子の結婚後の姓について、急にものすごく不安になってきた。
カノジョにもお母さまにも息子にも「姓はどちらのを名乗ってもいいと思います。主に下の名前で活動している息子の方が姓を変えても困らないかもしれません」とカッコつけて、「ご長男さんなのに、よろしいんですか?」とお母さまに心配されたりしたが、ホントに本気でどっちでもいいと思ってた。
少なくともカノジョが変えるのが当然とは全然思わないし、自分の子供の姓が変わってしまう、その面倒さを不憫に思い、自分から永久に離れて新しい家庭を作るんだな、と納得する、そういう作業だと思っていた。

ところが、にわかに息子の姓が変わるのがイヤになっちゃったんだ!
カノジョにはお兄さんが2人いるから実家の姓は孫たちにも引き継がれて残っていくだろうが、息子の姓が変わったら、もう「せいうち」を名乗る人は増えない。
もちろんせいうちくんの実家や一族は関係なく、我々がささやかなシアワセのよりどころとするこの「せいうち家」のことである。

リベラルぶってみたのに今さら「やっぱり姓が変わるの寂しい」なんて言えない、と悩んで困っているのを、せいうちくんは一笑に付した。
「息子に直接聞いてごらんよ。彼は、急に気が変わったって言っても全然気にしないと思うよ。キミの気持ちをポイントのひとつとして勘定に入れてくれって頼んでみたら?」とアドバイスしてくれた。

息子に電話して、少し話した。
「申し訳ないんだけど、母さん、やっぱりあなたの姓が変わるのが寂しい。カノジョの姓が変われば向こうのお母さんが同じ思いをするってのはわかってるんだけど、お兄さんも2人いて向こうの名前は残るわけだし…」などと煮え切らなく言っていたら、息子はぷっと吹き出した。
「そうなの!寂しくなっちゃったのか。そんなこと、早く言えばいいのに。ちゃんとポイントにつけておくよ。カノジョと話す?」と電話を替わってくれた。

「ごめんなさい、カッコいいこと言ってたけど、実際に息子の姓が変わると思ったら動揺してます。もちろん2人で話し合って決めてもらうべきことなんだけど、変わらないでいてくれるといいなぁって私が思ってるのを、小さな分銅にして天秤の片側に乗っけてください」とお願いしたら、彼女は優しく言った。
「当然ですよ。私は今の姓に全然執着がないですから、きっと息子くんの姓を名乗ると思います。どうぞご心配しないでくださいね」

ありがたすぎる。
今度、カノジョのお母さまとお食事会の企画が復活したら真っ先にこのことを謝ろうっと。

でも、息子が笑う程度の問題なんだなぁ。
自分ではすごくカッコつけてリベラルぶってみたから、恥ずかしくてしょうがなかったよ。
中途半端はいけないね。

今日のマンガは石塚真一の「BLUE GIANT」全10巻「BLUE GIANT SPREME」全11巻「BLUE GIANT EXPLORAR」既刊7巻。
日本で独学で始めたサックス吹きを職業にするため、まず日本中をまわって各地のジャズ・フェスティバルやライブハウスで吹かせてもらい、第二部ではヨーロッパに飛び出してバンドを組み、現在進行中の第三部では単身アメリカにやってきて活動の場を広げる主人公・ダイ。
息子が大好きで、NYにお笑い修行に行きたいと言い出したのもこのマンガの影響ではないかと思っている。
突然そんなこと言われても、と思ったがちょうど職もなく、コロナ前だったこともあって修行はずいぶん成果を上げたようだ。
人間、行きたい時に行きたいところに行ってやりたいことをしないと後悔するね、という当たり前のことを教えてくれたマンガ。
息子はダイほど天才じゃないからこれから道を変えたり様々な苦労があると思うけど、コロナ前にNYに行ってなかったら今の彼はないんだなぁとしみじみ思う。
ダイがプレイヤーとして成長していくさまをすぐそばで見ているような臨場感、無音のマンガなのに音が圧になって向かってくる感じの表現はスゴイ。

22年10月26日

心療内科の定期検診日。
天気もいいのでお使いイベントをこなしながら徒歩と電車でとことこ向かう。
先週は忙しそうであまり話せなかったが、今週はどうかな?

かなり食いつきのいい状態だった。ヒマだったんだろう。
息子たちが本来「家族お食事会」と「入籍」をすませているはずだったんだが、2人ともコロナにかかったので仕切り直しだ、と告げると「あちゃー」とおでこを叩いていた。
それでも、
「いい家庭を築いていますね。お互いに心配し合い、助け合う。案外これが難しいことなんですよ」とも言っていた。

昨日悩みまくってた「姓の問題」について打ち明けると、なぜか息子のように大笑いしていた。
そして、これが肝心なのだが、決め方についてひとこともこちらから言ってない時点で、
「リベラルと言えば、僕らの頃はもう学生運動でね。フェミニズムなんかも出てきてたから、カミさんと結婚する時はじゃんけんでどっちの姓にするか決めましたよ。僕が勝ったんで意味なかったけど」と言うではないか!
「息子たちもじゃんけんで決めるそうです!でも、それぞれの名前の来歴や歴史を調べて何か重要な人がいるとか珍しいエピソードがあったらそっちを残そう、どっちも何にもなかったらじゃんけんで決めようって」
「ほうほう、そりゃまた自由だね」
「その『何かしらある名前』ってところに私の『できれば変わってほしくない』をポイントとして加算してみてくれ、って話をしたわけです」
「うーん、あなたんちは本当に面白いね。ダンナさんは奥さんが好きでたまらないし、息子さんは自分をとっても大事にしてる。健全ですよ」
なんか、ほめられちゃったらしい。

夫婦が依存し合い過ぎているのではないか、という質問にも明確に答えてくれた。
「依存して何が悪いんですか!お互いに大切な存在で、大切にし合っている。ダンナさんは学生時代にあなたに会ってからずっと他の人に目がいかないぐらいあなたのことしか考えてなかった。あなたにそれだけの価値があるからです。他の誰かと出会ってもっと幸せになったかもなんて、考えてもしょうがないですよ。彼にはあなたでなきゃいけなかった。あなたにも彼が必要。それだけのことです」

なんとなく吹っ切れた気がした。
たぶんいっときのことで、また不安になる時も多いだろうが、少なくとも応援してくれている人が存在してるのはありがたい。

トイレの洗面台に置く小さな「バオバブの木」のような植木を買った。
100均なので高さ10センチないぐらい。
前の竹も気に入ってたんだけど、枯らしちゃったからなぁ。
売り場で横に置いてあったやはり100均の椅子が可愛かったのでそちらも買う。
帰ってトイレに飾ったら、木だけでは出ないストーリー性みたいなものがあると思う。

せいうちくんは「なんだか『星の王子さま』的だね」と言っていたが、次に私が見た時には反対側の棚に置いてあった小鳥の置物2羽が参加していた。
2羽でぎゅうぎゅうと椅子に座っている。
私は1羽が背を向けて椅子にのっかり、もう1羽は鉢植えの陰から悔しそうにうかがっている図にしてみた。
しばらくこのシリーズ続けたら面白いだろうなあ。
箱庭療法じゃないけど、人には人の数だけストーリーがあるんだと思うよ。


今日のマンガは岩本ナオの「マロニエ王国の七人の騎士」既刊6巻。
八つの国がある大陸の中で「マロニエ王国」は真ん中にある。
まわりを取り巻くのは7つの国。
マロニエ王国の女将軍バリバラの七人の息子たちが、それぞれの国に大使として赴くことに。
長男の「眠くない」は「夜の長い国」へ、次男の「博愛」は「好色の国」、三男の「暑がりや」は「寒い国」、四男の「寒がりや」は「あったかい国」、五男の「獣使い」は「生き物の国」、六男の「剣自慢」は「武力の国」、七男の「ハラペコ」は「食べ物の国」へとそれぞれ派遣される。
彼らの目標は「いつかカッコよくお姫様を助けること!」。
各自、赴いた先で様々な困難に遭ったり仲間ができたりいろんな体験をする。
お年頃の彼らにとっては「気になる女性」も重大事。
兄弟たちに母・バリバラが望む目的は本当は何なのだろうか。

22年10月27日

久しぶりに京極夏彦を2冊ほど読んだ。
例の、どんどん立方体に近く分厚くなる「京極堂シリーズ」だ。
「姑獲鳥の夏」を読んで「魍魎の匣」を読んだわけだが、不思議なほど昔ほど怖くない。
最初に読んだ時はおどろおどろしくて気味悪く、夜中のトイレに行けなくなったものだ。

トリックが知れてしまえばそれこそ京極堂中禅寺秋彦に呪を説いてもらったようなもので、「関口君、世の中にはあり得ないことなど起こり得ないのだよ」って気分になれるのかもしれない。
今は「狂骨の夢」を読んでいるが、話がややこしすぎて昨日までに読んだ分を今日はすっかり忘れているのでなかなか進まない。

週末に息子が泊まりに来たいと連絡してきた。
せいうちくんが「結婚したらお父さんの保険から外れるから」と勧めた対人・対物保険(自転車で人とぶつかるとか、お店の品物を壊しちゃったとかについて保障してくれる)について、これまでのような無関心ではなく、「いいね、入ろうと思うよ」と返事が来たのは、本人の成長だろうか。
まったく実にゆっくりさんだが、確実に成長はしているので良しとしよう。
我々が生きてる間に完成形になってくれないと困るよ。

週末彼が来るとなると、せっかく3日ぐらい続いている禁煙が危うくなるかも。
せいうちくんは面白そうに、「息子にも禁煙させたら?」と言うが、趣味嗜好の問題だから、あまり人に無理強いはしたくない。
こちらが心を強く持っていれば済むことだ。
しかし、息子と換気扇の下で押し合いへし合いして吸うタバコは格段に旨いんだよなぁ。


今日のマンガはコナリミサト「凪のお暇」既刊10巻。
ついつい誰にでもいい顔をしてしまって疲れ果て、くりんくりんのくせ毛をストレートパーマで直すのにも疲れ果て、ものわかりのいいカノジョでいることにも疲れ果て、会社を辞めてちょっと田舎に近いところで自分らしい生き方をしようと頑張る元OLの凪。
アパートに住んでる怪しい風来坊に惚れたり、つつましく暮らす親子と節約生活をしたり、開運の石を売りつけに来た女性とも仲良くなり、凪の生活は落ち着いたかに見えた。
元カレが「オレがいなくちゃダメなんだろ?」みたいに乗り込んでくるのと、故郷のお母さんが「そろそろ結婚を」って見張りに来るのを除けば、だが。
「普通」の人生から「お暇」をとった不器用な凪は、ただ自分のしたいように生きるにも大変な手間がかかる。
きっと誰でも、今植わっている鉢から「お暇」をとってみたらそうなるんだろう。
頑張れ、凪!ゴンちゃんは君のこと、もう好きになってるぞ!

22年10月28日

先週行われたプチ合宿について、大事なことを書いておくのを忘れた。
せいうちくんは毎晩私がクイーンベッドの端で本を読んでいる間に寝てしまい、夜中過ぎて読書に飽きた私がそろそろ寝ようとすり寄っていくと肩に腕を回して腕枕をしてくれ、もう片方の手でぎゅっと抱き寄せてくれる。
これがまったく目が覚めてはおらず、自然反射でやってるように見えるもんだから、常々、
「相手が私でなくてもやるに違いない。気をつけた方がいい悪習慣だ」と難詰していた。

本人は、
「そんなことない。ちゃんとキミだってわかってやっている。反射なんかじゃない」と反発する。
では実証、とばかりに息子に「父さんが寝た後、ベッドの隣に入ってみて」と頼んだ時は、
「なんでオレがそんなことしなきゃいけないんだよ!やだよ!」と抵抗され、せいうちくんからも、
「息子が正しい。親のセックスに子供を巻き込んではいけない」とか威張られた。

そして今回、せいうちくんが早く寝ちゃってから酔っ払った長老GくんSくんと話していた時にその話になった。
Sくんは「そりゃあ、試してみなくっちゃ」と欣喜雀躍し、実はアシストを頼みたかったGくんはすっかりやる気で、「じゃあオレがせいうちさんのとなりにやさし~く入ってみるぞ」と寝室に向かう。
「現場を見届けなきゃ」とSくんと私も忍び足でついて行き、扉のとこから薄暗い室内を見ていた。
(長老は酔っぱらって寝てた)

Gくんが布団に入る…Sくんと私は笑いをこらえている…掛布団がもぞもぞと動いた!これは、ぎゅっとしてる!
次の瞬間、せいうちくんが「うわぁ」と言って飛び起きた。
その瞬間について、彼がのちに語った通りに言えば、
「うさちゃんだと思ったらGくんだった。メガネが当たるからあれ?と思った(私はいつもメガネをはずしてすり寄る)し、さわり心地がパジャマの生地じゃなかった。Gくんを抱きしめちゃった!かりんとうだと思って食べたら犬のうんこだったみたいな気分だ!」だそうで。

Gくんは怒りもせず、「せいうちさんはオレを抱いた男だ~」と浮かれていた。
実験があまりにうまくいったので楽しかったのだろう。
我々も楽しかった。Sくんと笑い転げた。
せいうちくんの睡眠下における貞操はこれほど怪しいものなのか。
今後、人が雑魚寝するようなシチュエーションにはなるべく行かせないようにしよう。
誰よりも本人が一番ショックを受けてるのがまたおかしい。
あなたの主張する「愛情」は、ただの脊髄反射だよ!

その後は暗がりで抱きしめられた時、3回に1回ぐらいは「Gくんでーす」と言ってみている。
匂いがどうとか手触りがどうとか御託が多かったが、今は慎重に様子を見てるみたいだ。
対象物を疑ってかかるその態度、いいね。近代科学の基本精神だよ。


今日のマンガは鳥飼茜の「ロマンス暴風域」全2巻。
「先生の白い嘘」や「サターンリターン」で女性心理を鋭く描き、ジェンダー問題に貢献してそうな彼女の、やはりよくわからない男と女の物語。
風俗で知り合った女性と交際しようと思ったら、結婚されてしまった。
それでもつきあっていたら、ある日ストーカーまがいのことをしてしまい、「こんな人、知らない」と怖がられる。
もう近づくこともできず、日々の生活にも興味を失っていく男の、また始まる似たような日常。
この作者はすごく何かを訴えてくるんだが、あまりに本気で赤裸々なので、「本当に?」と疑ってしまうぐらいだ。
人の孤独や男女の立ち位置を、どうして貴女はそんなに知っているの?と聞きたくなる。
この作品には「えーっ、これで終わりなのぉ?!」と思いっきり叫ばされたぐらい、よくわからないよ。

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