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3.子供に無関心な母親

僕と鬼子は子供の親権を争うための離婚調停をしていた。しかし3回の調停では決着が付かず、次からは裁判で争うことになった。そもそも子供の親権は、母親が勝ち取れる率が9割だと知らされていたから、僕に勝ち目がない事は覚悟していたが、調停員たちの判断では『調停では何とも言えないから裁判で決着つけてよ』ということだった。それだけ鬼子の主張や行動がはちゃめちゃだったからに他ならない。

僕が主張していたのは主に、鬼子の子供への無関心さと家事の放棄。マサオの寝癖が凄まじくても知らん顔、ツンツルテンのズボンを履いていても気にならない。そのくせ自分の洋服はちゃっかりと新調したりするから、余計に腹立たしい。鬼子がマサオを黙って連れ去ってしまう数日前に、僕とマサオは、マサオの冬服一式を一緒に買いに行った事があった。

「ありがとうパパ」

はにかんだマサオの笑顔を今でも忘れない。買っておいてあげて良かった。じゃなかったら今頃マサオは、最も温めなければいけない手首と足首が丸出しの状態で、「寒い寒い」言いながら小学校に通わなくてはならなかっただろうから。

そんな感じで鬼子はマサオに関心がない。通信簿にも一切の興味を見せなかった。マサオが持ち帰ってくる"あゆみ"にも、目もくれなかったのである。鬼子の興味があるものは、飼っている猫とフラフープ。猫がオシッコできなくて可哀想だからという理由だけで、僕の父親ですら家にあげてもらえない始末。結局近所のファミレスで可愛い孫と会うしかないという、何とも身勝手な猫だけ猫かわいがり女なのである。

そしてダイエットのためのフラフープは、マサオの宿題もそっちのけで1時間でも2時間でもテレビを観ながらグルグルと回している。鬼子にとっての最重要事項はフラフープを回す事なのである。


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