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[受賞記念]遠野醸造のクラウドファンディングの裏側を公開!

遠野醸造が実施したクラフドファンディング『ホップ栽培面積日本一!岩手県・遠野で「香る」クラフトビールに挑む!』が、CAMPFIRE AWARD 2018 フード賞を受賞しました。ありがとうございます!

クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」で約1年間で実施されたプロジェクト5300件の中から 、「支援総額」「支援者数」「社会的影響力(話題性)」の3つの観点から総合的に評価し、プロジェクトを選出していただいたそうです。

私たちはまだ会社を設立して1年、TAPROOM(醸造所併設型の飲食店)を開業してからは7か月のブルワリーです。開店から多くの方に来店いただいたり、またメディアに取り上げていただくことで、事業もうまく進み、目指すビジョン「コミュニティブルワリー」が具現化されつつあります。
そんな自分たちが想像していた以上の成果や未来に向けての良い兆しは、クラウドファンディングを実施したことが大きく影響しています。

開業に向けた資金集めだけではなく、プロジェクトを通して多くの方が応援してくれて、仲間になってくれました。支援して終わりではなく、今でもその仲間の皆さんとの関係性は続いています。

今回の受賞にあたり、自分たちがどのようにクラウドファンディングを進めていったのかの裏側を公開したいと思います。

同じようにこれからチャレンジする人たちを応援したい、というシンプルな想いです。そして、情報をオープンにして、シェアしてみんなで盛り上げていくというのが、私たちが遠野醸造を経営する上で大事にしていることだからです。

私たちのプロジェクトの支援者数や支援総額を見て「これは特別なことだ」「あなたたちだからできた」と受け取られることもありました。でも、私たちは元々有名だったわけではありません。醸造も、ブルワリーの経営も未経験からのスタートです。

そんな私たちだからこそ、プロジェクトの進め方は工夫をしました。今まであまり語っていなかった、その工夫や裏側をオープンにして、1人でも多くのこれからクラウドファンディングに挑戦する人たちの力になれれば嬉しいです。

0. 遠野醸造のクラウドファンディング結果

最初に結果の支援金額と金額の推移です。目標金額は500万にしましたが、これは最低でも達成したい数字で、設計段階からストレッチゴールの700万を目指そうと決めていました。結果は、390名もの方に約800万近い金額を支援していただきました。掲載期間1か月。そのちょうど半分の時期に達成しています。

ここからは時系列に沿って、募集期間が終了するまでにやってきたこととその狙いについて書いていきます。

1.企画前に 〜コアなファンづくりと情報発信〜

遠野のまちなかにブルワリーを作ろうと本格的に動き始めたのは2017年の4月。まだ物件も決まっていない状況で、遠野に移住して間もないメンバーも含めて始めたのはコアなファンづくりとプロジェクトが進んでいく様子の情報発信でした。それらは結果、プロジェクトを公開する時点で自分たちのことを認知してくれている人たちがある程度いたことに繋がります。これはスタートダッシュが成否をわけるクラウドファンディングにおいては非常に有効な進め方でした。

<<コアなファンづくりでやったこと>>

●毎月のクラフトビールナイト(主に地域内の人向け)
せっかくやるなら地域に愛されるブルワリーになりたい。人口2万7千人の遠野市に移住した私たちが最初に始めたのは、世界各地のビールを集めて人を呼んで飲み比べをしたり、料理とのペアリングを楽しむイベント「クラフトビールナイト」でした。楽しく飲んでビールの奥深さを体感してもらって、最後には「自分たちはこれからこの街にブルワリーをつくりたい。応援してほしい。仲間になってほしい」と夢を語っていました。クラフトビールナイト自体は醸造所がオープンした今でも続けています。

●ビアツーリズムの開催(主に地域外の人向け)
地域外の人にも仲間になってほしい。そのためにここ(遠野市)でしか体験できないイベントを開催していきました。ビールの重要な原材料であるホップ畑が見られる地域は限られており、広大なホップ畑となるとその数はもっと少なくなります。そんな地域の資源であるホップ畑を舞台に、ビアツーリズムとして農作業体験、畑でBBQ、収穫体験などを企画しました。小規模ですが毎回満席になり、全国各地からわざわざ遠野に来てくれました。そしてクラフトビールナイトと同様に、自分たちの夢を語り続けました。

こちらを事前にテストで行ったことが、クラウドファンディングのリターン設定にも繋がっていきました。リターンを検討・分析する中で、自分たちだからこそ提供できる価値がリターンにあると良いと思いました。(実際ビアツーリズムやシークレットツアーなどのリターンはとても人気でした)そういった意味でも事前のファンづくりを通して、顧客のニーズを把握し、自分たちが持っている価値(リソース)を整理することはとても大事です。

そして、それらのイベントの様子をどんどんFacebookページにレポートとしてあげたり、地元メディアなどに取材にきてもらって露出をしていきました。イベントに来れなかった人に対しても、今遠野で新しい動きが起き始めている、なんか楽しそうなことやっている、ということが伝わるように発信を続けていました。

最初にクラフトビールナイトを実施してから、クラウドファンディングの公開までは約10か月です。私たちの場合は、ブルワリーの予定地が中々決まらなかったことで少し長い期間にはなりましたが、コアなファンを増やしたり自分たちの取り組みが認知されていく大事な時間でした。

もし、将来的にクラウドファンディングに挑戦しようと考えている人がいるなら、公開前までに、自分が主催するイベントを開催して、自分の考えを伝えたり、仲間を増やす機会をつくっていくことをオススメします。またメディアに取り上げられるのを待つのではなく、取り上げたくなるプロジェクトや企画を起こし、自ら発信を続けていくと良いと思います。

2.企画 〜プロジェクトページのライティング〜

ここまではクラウドファンディングを始める前の活動です。ここからはクラウドファンディングに取りかかった際の話です。
どのように自分たちが挑戦したいことを表現していくか。表現の仕方で、結果は変わってくると私たちは考えました。私たちの場合は、想いを簡潔に、そして客観的にまとめるべく、文章はプロのライターに発注をしました。
https://n-yota.com/  ライターの中村さん(写真左)

ライター選びで大切にしたことは、
①自分たちが思い描く未来を熱量を持って伝えられる人
②単に文章を書くだけではなく、リターンの構成や情報発信の方法まで一緒に考えてプロジェクト全体に参加してくれる人

の2点。クラウドファンディングの企画段階から終了までフルコミットしてもらい、ともにアイディアを出したり、戦略を考えることができました。

東京在住のライターを遠野に招待し、一緒に地域をまわり、キックオフイベントにも参加してもらいました。それは単に文章を書いてもらいたかったのではなく、遠野という土地を肌で感じてもらい、イベントの熱量を実際体感して欲しかったからです。

ただ、プロのライターに依頼したというのは、あくまで私たちのやり方なので、自分で文章を書く人に向けて参考になりそうなポイントを考えました。

それは自分が書いた文章を他の人に見てもらって第三者の視点を入れていくことです。それはクラウドファンディング会社のキュレーター、自分の挑戦を理解してくれる人、まだ全貌を理解していないけど共感してくれそうな人、プロジェクトを公開したら支援者になってくれそうな人など。読み手がどう感じるかというのが大事なポイントだと思います。

私たちも、プロジェクトの文章だけでなく、リターンについても金額や内容を「1.企画前に」で出来たコアなファン何人にも公開前に相談していきました。応援したくなる内容なのかを客観的にアドバイスをいただいたのです。これは結果として、一緒に企むところから入ってもらったことで、公開後はまるで自分ごとのように支援の呼びかけをしてくれた方が何人もいました。

3.公開に向けて  〜スタートダッシュをするために〜

ここまでで、プロジェクトページの文章やリターンの内容が決まりました。
ここからはプロジェクト文章完成〜公開前までの動きについてのまとめです。

私たちは公開後、いかにスタートダッシュできるかを考えていました。それは、CAMPFIREのキュレーターから下記のナレッジを教えてもらったからです。

・最初の1週間と最後の1週間に支援は集まりやすい
・掲載後すぐに支援されていると、まだ支援していない人の注意をひき、
 支援につながる可能性が高い
・プロジェクト開始から24時間以内に目標金額の20%以上支援が集った
 プロジェクトの成功率は約94%    (CAMPFIRE成功の書より)

<<スタートダッシュをするためにやったこと>>

具体的にやったことの前に。ここでも「1.企画前に」の動きが影響してきます。皆さんも知り合いがクラウドファンディングを開始する時に、支援してほしいと急にメッセージを送ってきてビックリした経験はありませんか。私たちは、できるだけそういうことが無いように、事前に仲間を増やしたり取り組んでいることへの認知度を上げようとしてきました。個別に丁寧にメッセージを送ることも大事ですが、仕込みの方がもっと大事だと思っています。その前提で、下記を読んでいただけると嬉しいです。

もう読み疲れてきた頃かもしれませんが、ここからは怒涛の仕込みです。

●クラウドファンディング始める宣言
クラウドファンディングをやるというのは、ずっと言い続けていたのですが、「いつからやるのか」を年明けに宣言しました。Facebook(上の画像)では広く告知、そしてお世話になってきた方には年賀状(下の画像)を送りました。年賀状にのみ、限定公開のQRコードをつけて事前に閲覧できるようにしていました。もちろん手書きのメッセージも添えて。

●開始までのカウントダウン
公開まではFacebook上で1週間以上前からカウントダウンを行いました。ほぼ毎日文章や画像を投稿して公開当日に向けての熱量を上げていきました。前日には醸造所予定地で、クラウドファンディング決起集会というイベントを開催して多くの地域の方が参加してくれました。

●個別にメッセージを送っていく
これはクラウドファンディングに挑戦した人は必ずやることですね。関係性がある人にメッセージを送り、公開した直後に支援またはSNSでシェアしてほしいとお願いしていきました。

●チラシの準備
公開後に配布するチラシの作成も先に進めていました。地域の方などはWebを使わず直接銀行振込みをしたい人もいるのでそういった支援方法も記載しています。クラウドファンディングでチラシをつくる人も多いと思いますが、大事なのは公開日までにこういったチラシができていることです。公開後しばらくしてからチラシやポスターを作成している人も多いですが、やるのであれば一番熱量が上がっている時期に用意しておくと効果が出ると思います。

●期間限定の名刺を用意
当時、まだ会社のロゴが決まっていなかったのもありましたが、名刺をクラウドファンディング期間仕様にしました。名刺交換のタイミングでクラウドファンディングに挑戦していることをしっかり伝えていくのに役立ちました。

●メディアを仕込む
クラウドファンディングの時期がおおよそ決まった段階から、「1.企画前に」でお世話になったメディアの方に声をかけて、期間中に記事を上げてもらえないかと相談をして、いくつか実際に掲載が実現しました。

●クラウドファンディング期間中のイベントも事前に準備
支援を呼びかけるためのイベントも公開日までにはある程度準備ができている状況でした。公開後にイベントの準備を始めると適切なタイミングを逃してしまう場合があります。私たちは、公開から最終日まで「どこで支援が落ち着いてしまうのか」「どこで山場をつくらないといけないのか」を考え、全てスケジュールに落とし込んでいました。

CAMPFIREのキュレーターの方から教えてもらったナレッジでもう一つ大事にしていたものがあります。それは、支援者1/3の法則です。

支援者の1/3は自分の直接の友人・知人、1/3は自分の友人・知人の友達、残りの1/3がサイトなどを通じて知る全く知らない人

1対1のコミュニケーションで自分の直接の友人・知人が応援してくれるように事前の仕込みと熱量を上げていく動きをしていく→熱量をもった直接の知人・友人が拡散してくれる記事を見てその友達が支援してくれる→そしてメディアで広く発信した内容を見て残りの1/3の人が支援してくれる、というような狙いをプロジェクトの進め方に落とし込んでいきました。

後から振り返るとこの時点で成功するかどうかは決まっていたように思います。どこまで事前に動けていたかが本当に大事です。

4.公開後の動き  〜ひたすら盛り上げていく〜

公開日は、いわてわかすフェスというイベントの日でした。ここまでの活動でお世話になった方からこのイベントに呼んでいただけたので、イベント開催日にクラウドファンディングを公開するという仕掛けにしました。スタートダッシュするという目的があったので、イベントに合わせて公開日を決めました。

イベントでは参加者の前でスピーチをさせていただいたり、ブースに来てくれた人に自分たちの挑戦を話させていただきました。上の写真で持っているパネルもイベントで目立つように制作していたものです。
事前に呼びかけていた方々、このイベントでお会いした方々が一斉に公開初日に支援していただいたことで、開始当日で達成率40%まで伸ばすことができました。

その後は、
●準備していた仙台でのイベントを開催したり、

●計画に沿って活動報告記事をアップしていったり、

仕込んでいたメディア露出や、イベント登壇や、個別の声かけ、SNSでの発信でひたすら自分たちが挑戦したいことの挑戦と告知をしていきました。

結果、
開始当日で40%
開始2日で55%
開始10日で80%
開始18日で100%達成
開始から36日で終了
 という成果に繋がりました。

ここまでが、遠野醸造がクラウドファンディングに挑戦した裏側です。ここに書いていることは、CAMPFIREのキュレーターからもらえる「成功の書」に掲載している内容も多いです。それらを愚直に、ひとつずつ実行していった結果です。実際に行ってみてどうなったか、具体的に何をしたのかの部分が、プロジェクト実施者から語られると、今後挑戦する人にとって役に立つのではないかという想いでここまで書かせていただきました。

書いていく中で思ったのは、やはり準備がすごく大事だということです。これは、企画や構想に時間をかけるということではなく、どんどん動いてイベントや場を運営して、人に相談して、巻き込んで、夢を語って、熱量を高めていくということです。未来にプロジェクト実施を考えている人は、ぜひ今から動いてみてください。

私たちにとってクラウドファンディングはやることがたくさんあって大変でしたが、公開後はどんどん仲間が増えていくことや、自分たちがやりたいことへ近づいている感覚が嬉しくてたまりませんでした。

そういったクラウドファンディングの楽しさを経験する人が増えていくといいなと思っています。この記事が、これから挑戦する誰かの背中を押すことができたら嬉しいです。遠野醸造も応援しています。

株式会社遠野醸造
袴田大輔
太田睦
田村淳一

遠野醸造TAPROOM
遠野市中央通り10-15
https://tonobrewing.com/
ぜひ出来立てビールを飲みに来てください!

遠野醸造ができるまでをまとめた記事はこちら↓
https://note.mu/tamjun/n/n9f95fb2bfe5d

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◎この記事を書いた人◎
田村淳一
株式会社遠野醸造 取締役 / 株式会社BrewGood 代表取締役
BrewGoodではまちのブランディング(http://brewingtono.jp/)、制作、ホップやビールにまつわる新規事業の立ち上げと支援、新規ブルワリー開業の支援などをおこなっています。
twitter : https://twitter.com/tam_jun                 Mail:info@brewingtono.jp



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