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LTspiceで波形を見ながらデジタル変復調の基本動作を理解する

ワークステーションと呼ばれた時代はMentor Graphics系のSpice、パソコンになってからはPSpice(OrCAD)系でアナログ回路シミュレーションを使用していましたが、最近は無料で使えるLTspiceを個人的に利用しています。

通信の世界でも変調の主流はアナログ変調からデジタル変調に変化して、アナログ回路を評価するためにデジタル変調信号でシミュレーションするのは意外と大変だという声をよく聞きます。

何が大変かと言うと「デジタル変調の信号源をLTspiceでは簡単には作れない」「最近の復調はデジタル信号処理で行うためLTspiceだけでは十分な評価ができない」ことがあります。

そこで今回、簡単にLTspiceだけでデジタル変調信号を評価できるように実用的な使い方をまとめてみました。この対象者としては

・すでにLTspiceをPCにインストールしている
・SPICEの基本は理解している
・デジタル変調信号の基本は理解している
・簡単にデジタル変調信号を扱ってみたい

内容的にはLTspiceの機能をフルに活用し、汎用的な形でまとめるように努めましたがコマンドや設定値の表現が長くて複雑になってしまうため添付ファイルの回路図で容易に再利用できるようにしました。


復調時の搬送波やクロックの同期処理について、本書では同期ができた前提で話を進めて説明をしていますが、実際の回路で確認したい場合は以下のリンク先にまとめてあります。


最初に準備として「modulate」部品の使い方、特徴を理解することから始めましょう。


■modulateとは

変調波を作り方は「実際の電子回路」「独立電圧源(voltage)」「ビヘイビア電圧源(bv)」などの方法も考えられますが、ここでは「modulate」部品の機能で作成したいと思います。

先ずは「modulate」部品を選択します。メニューバーの部品のアイコンをクリックします。

LTspiceメニュー

ポップアップメニューが出るので「SpecialFunctions」→「modulate」と選択します。

LTspiceポップアップ画面

「modulate」「modulate2」と2種類ありますが違いは、出力が「Q(sin)」だけか「sin」「cos」の2出力かの違いだけです。

「modulate」は説明分にもあるようにVCOと変調器で構成されています。

■modulateの使い方

modulateのValue値を「mark=40K space=10K」に設定し、FM/AM端子は以下のように設定します。ここでは、Vfm、Vamの範囲は0~1として説明します。

FM端子制御 出力周波数F(Vfm)=([mark]-[space])/1×Vfm+[space]
AM端子制御 出力電圧V(Vam)=Vam×1

Vout(t)=V(Vam)×sin(2πF(Vfm)×t)

modulatorの使い方

出力電圧にはAM端子を「1」の固定にしてFM端子を「0→1」まで直線的に変化させると出力に周波数が10KHzから40KHzまで連続的に変化するチャープ信号が現れます。

■modulate機能を利用したアナログ変調波

ここではアナログ変調器として「modulate」機能を使ってアナログ変調波を作成したいと思います。前記の例でチャープ信号を発生させたので、先ずは同じ周波数変調のFMからです。

・FM変調

一般的なFM変調の表現は

搬送波周波数→([mark]+[space])/2→25KHz
周波数偏移→([mark]-[space])/2→15KHz
変調周波数→Vfreq電圧源で設定したsin波の周波数→1KHz

FM入力のsin波、SINE(Voffset Vamp Freq Td Theta Phi Ncycles)に於いてVoffset=0.5、Vamp=0.5を設定してみましょう。

VfreqSINE(0.5 0.5 1K) → 0.5×sin(2π1Kt)+0.5
FM変調波

図からわかるように粗密波のFM波形を出力することが簡単にできました。

・AM変調

同様にAM変調波を発生させてみたいと思います。FM変調とは違いAM変調の表現では変調信号の強さの単位として「周波数偏移」の代わりに「変調度」と言う表現が用いられます。

搬送波周波数→[mark]→40KHz(Vfm=1で設定した周波数)
変調度→Vgain電圧源で設定(Vamp/Voffset×100)→100%
変調周波数→Vgain電圧源で設定したsin波の周波数→1KHz

Vgain → SINE(1 1 1K) → 1+1×sin(2π1Kt)
AM変調波

今回、AM/FM変調だけなら「ビヘイビア電圧源」で記述した方がよっぽど簡単にできますが、これからお話しするデジタル変調波を作るための予行演習として「modulate」部品の使い方を理解してもらいました。

ここから、主目的である「デジタル変調」について説明したいと思います。

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