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ペーパードライバーがカナダで運転をはじめた話

最近、友人から12万円で車を譲り受けた。Chevrolet社のAveoという車種だ。日本では数回しか運転したことのない、ド・ペーパードライバー。母親は運転をまったくしないゴールド免許保持者。やはり血は争えない。

日本で2018年に免許を取得し、2019年にカナダBC州の免許に書き換えをした。2年間の運転歴がなかったため、Novice Driver(新人ドライバー)扱いである。こちらで再度実技試験を受けないと、フルドライバーに昇格できない。

初心者の代名詞・若葉マークの代わりに、こちらでは「N」のマークをつけることになっている。青い車体に輝くはNの文字。若葉マークの着用義務は1年だが、このNはフルドライバーになるまでずっと貼っておかなければならない。長い付き合いになりそうだ。

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運転をはじめた1週間は、とてもストレスフルで、頭痛と睡眠不足に悩まされた。どっちがアクセルでブレーキかもわかっていない。シフトレバーに関しては「これ、あんまり使わないヤツですかね」とのコメントを残すなど、もはや死に急いでいると捉えられてもおかしくない状態だった。

友人からも「まだ一人で運転するのは……」と躊躇され、両親からも「頼むから教習を受けてくれ。金は出す」と懇願された。そこで、2回ほど教習を受けることにし、個人のやっているドライビングスクールに連絡をとった。

担当してくれたのは、バスドライバーとして働いた経験もある、インド出身の60代のおじさんだった。運転中、さまざまな指示を受けるのだが、自分の英語力のせいか、ところどころ訛りが強くて聞き取れない。雰囲気とフィーリングで取り急ぎ「はい!」と元気よく返事をし、車を発進させる。

ドギマギしながら運転している私の真横で、おじさんのおしゃべりがはじまる。おじさんの弟が日本に住んでいるため、日本に何度か訪れたことがあること。おじさんの長いヒゲ(推定20cm)は9月頃に剃ったらしいが、また生えてきて困っていること。じゃあ剃れ、剃ってくれ。

私の注意力が散漫になっているところに、さらに追い打ちをかけるように、おじさんは長いヒゲを自前の櫛でとかしはじめた。前フリもなくいきなり現れた櫛。そして「なにも櫛でとかすのは髪だけではない、ヒゲもだ」という新常識。もはや運転どころではない。こんなの注意散漫・死に急ぎ教習。

1回目の90分の教習は、終始おじさんのヒゲについて考えてしまった。しっかり105ドル支払った。

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