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「乃木坂らしさ」はどこから来たのか(乃木坂46的文化)

白石麻衣が卒業したときにも言われていたみたいだけど、乃木坂は今こそが変革期だと指摘されているわけで、たしかに乃木坂を立ち上げてきた一期、二期の多くが卒業した現在は、いよいよ本格的にそういった時期になったことを感じます。
そんななか五期生の問題もあって「乃木坂らしさ」についていろいろと言及されてきているんだけど、だれもその正解はわからないみたいですね。みんなそれぞれ自分のイメージを持っているけれど、それを具体的に言語化できてない。確かに自分で「乃木坂らしさ」を言語化してみるとなんだかウソっぽいしなんだかしっくりこない。まして他人に対してはそれぞれが持っているイメージが微妙に違ってたりするわけで、それを一つのイメージとして定着させるのは無理だよなと思ったりもします。
そんなわけで「乃木坂らしさ」を言語化することは一旦諦めて、現在の乃木坂を作り上げてきた人たちの言葉をこれまで雑誌媒体その他で記録されたインタビューから拾ってみて、そのなかから今の乃木坂が生まれた要因を見つけようとしてみました。

―乃木坂が46結成時は、特にアイドル戦国時代でしたものね。
すごかったですよね。そんな中で、AKBさんが“動”を表しているとすると、私たちは“静”を表しているなと。(中略)
それもスタッフさんに強く指導されたわけではなく、メンバーが作っていったものがそうなっていっただけなんです。(中略)
もうひとつは、不思議な安心感というか。乃木坂のメンバーには闘争心というものを表に出さない人が多くて。メンバー自体もすごく仲が良くて、上下関係もないし、それに関して別になんとも思っていない。そのふわっとした、落ち着いた雰囲気がライブでもちょいちょい見え隠れするんですよ。

若月佑美 「BUBKA 2017年10月号」

坂道グループ全般に言えることだと思うけれど、メンバーみんな仲が良いってのはグループの根っこの部分にある大事なことなんですね。乃木坂が作り上げて、その伝統を櫻坂、日向坂が継承しているって感じですか。

ではなぜそんなに仲良くなったのかについては若月佑美が語っている「乃木坂のメンバーには闘争心というものを表に出さない人が多くて」という部分に大きな理由があると思うのですね。
それは性格的な要因も大きかったんでしょうが、素人が大半だったグループでは経験するものすべてが初めてでどうしていいのかわからない状況のなか、つねに不安だったはずです。そんな不安になんとか対抗するためにメンバー同士が寄り添い、互いを認め合うことで乗り切ろうとする行動を無意識に行ったのだと思われます。そういったグループ内の空気を当事者として「不思議な安心感」という表現で語られているのでしょう。

心理的安全性

生駒里奈が挨拶の途中で泣き出したことで有名な「AKB48リクエストアワーセットリストベスト100 2012」出演後、乃木坂メンバーがみんな楽屋で抱き合って泣いてるのはナントカチューブを探せば見ることができますね。
ソースが見つからないけれど、そのときにメンバーが互いに褒めあってたというのをどっかで読んだ気がします。それは当時圧倒的な人気を誇ったAKBの公式ライバルとして登場した(させられた)自分たちが感じた、非常に大きなプレッシャーに対抗するための防御行動だったのではと勝手に推測しています。そうしなければ、彼女らはそのプレッシャーに押しつぶされて、そのまま消えてしまっていたでしょう。

そんな厳しい経験を重ねることで、メンバーたちにとっての乃木坂というグループは「自分たちが安心できる場所」として機能してゆき、その結果として自ずとみんな仲が良くなることによって素の自分が出てしまうときもあったに違いありません。
これまでは他人からの不快な干渉を受ける元凶になっていた自身の言動や行動が、乃木坂にいればそれがない。それまで嫌いだった自分自身も素直に受け入れられ、これまで隠してきた自分の個性が認められる場所である乃木坂というグループは「心理的安全性」が実現された環境として生まれてきたと思われます。

幸運な偶然

ならば、どうしてそこまで他人を素直に受け入れる事ができたのか。
それはやはりグループ加入前に人間関係に悩んできたメンバーたちが、乃木坂という場を自分たちのサンクチュアリとして認識したからではないでしょうか。そこに集い、その規律を乱さない限りは、どんな人でもその個性を受け入れる。それが出来たのが、偶然集まってきた乃木坂一期生たちだった。本当に幸運な偶然だったと思います。

生駒里奈が卒業後のインタビューで「グループに入っていじめがあったらすぐに辞めようと思ってたけど、そんなもの全然なかった」と語っています。同じように人間関係で苦労してきた他のメンバーたちにとっても、素の自分が認められるという環境は非常に心地よかったんでしょう。その結果としてメンバーそれぞれの個性が発揮され、それが乃木坂としての魅力につながっていくという好循環を生んだのじゃないかと勝手に推測します。

追記 2023/07/31)
これを書いたあと、Youtubeのイジリー岡田チャンネルにゲスト出演した川後陽菜さんの回を見たら、東京でアイドルになることにそれほど執着していなかった川後さんも、もし合宿所でいじめ行為があったらすぐにやめようと思ってたけど、そんなものは全然なかったから乃木坂をずっと続けられたと話してました。

実際、配信動画などを見ると、メンバーたちは相手の良いところを褒め、ちょっとしたことであっても「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えるという行動を、先輩同期後輩、スタッフその他に関わらず自分たちに関係する人に対して頻繁に行っています。そういった自然と身についたさりげない行動が乃木坂らしさを形作っている大きな要因ではないかと思います。特に目立つものではないけれど、確実に乃木坂の文化として根付いていますね。

そういった文化が基礎になり「心理的安全性」をもつ組織が自然と出来上がり、結果10年経ったいまでもそれが続いているわけですね。

松村沙友理は生駒里奈との交換留学生として参加してきた松井玲奈について、「乃木坂をぶっ壊されるんじゃないかと感じて怖かった」とラジオで話してました。後日それは全くの杞憂に過ぎないとわかるのですが、AKBグループ内でトップを張ってるスターが闘争心を乃木坂に持ち込むことで、メンバーが感じていたそれまでの「居心地のいい」(若月佑美が言う”そのふわっとした、落ち着いた雰囲気”を持つ)乃木坂が破壊されるのではないかという恐怖感があったことからの発言だと思います。

闘争よりも協調

メンバーの関係性を大雑把にくくってみると、グループ全体を俯瞰して自分の役割を果たしつつも個性を発揮し上を目指すメンバーの姿勢は「闘争よりも協調」というべきもので、それが乃木坂であり、それがいわゆる「乃木坂らしさ」を感じさせる根幹にあるんじゃないかな、というのが今の所の結論ですね。

だから、メンバーを従えるセンターという中西アルノの見せ方から「闘争心」の姿を無意識に嗅ぎ取ったファンの多くが、彼女の参加に拒否反応を示したのではないかなと思ったりしますね。

インタビュー記事をすべて網羅できないので、この投稿では以下の記事を参考にさせていただいております。
非常に興味深い記事群であり、大変参考になります。どうもありがとうございます。

トップ画像はTwitterから拾ってきたやつです。

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