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ボルシチ。味噌汁。

先日、初めてロシアで念願のボルシチを食べた。

ロシアといえばピロシキ、ビーフストロガノフ、ボルシチと勝手に決めこみ、それらをひたすら食べよう目論んでいた私は、ロシアに到着するや否や、タクシーのおじちゃんにボルシチが食べられるお店を教えて!と意気込んだのだった。

案内されたのはピザ屋だった。
ここでボルシチ?と思ったのだがメニューにはしっかりとボルシチがあった。
注文すると、細切りのビーツや野菜類が入ったスープが出てきた。
これがボルシチらしい。
味はコンソメスープと変わらなかった。

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小学校のとき、私はトマトスープのことをボルシチと思っていた。
学校の給食のメニューに「ボルシチ」が定期的に登場していたのだ。この「ボルシチ」は名前こそボルシチだが、ただの野菜がたくさん入ったトマトのスープだった。

しばらく私はトマトスープのことをボルシチと言うのだと思い込んでいた。

その後、ビーツという食べ物があることを知り、それから「ボルシチ」には「ビーツ」が使われるということを知った。

そこで今度は、私は「ボルシチ」とはトマトのスープではなく、ビーツのスープなのだと思い込んだ。

またしばらくして、何がきっかけだったかは覚えていないが、ボルシチを今度は作ることになった。
作ることになって初めてボルシチの材料を調べてみた。

ちなみにボルシチとはWikipediaによれば、

テーブルビートとタマネギ、ニンジン、キャベツ、牛肉などの材料を炒めてから、スープでじっくり煮込んで作る。

のだそうだ。

さらに読み進めていくと、「ボルシチ風スープ」というものがあると紹介されていた。
またしてもWikipediaからなのだが、

日本などでは、ボルシチと同じ調味料を用いながら、テーブルビートを用いずに、代用としてトマトを用いた具だくさんでオレンジ色のスープを「ボルシチ」と称している例がみられる。


つまり、小学校の時に食べたのは「ボルシチ風スープ」だったということが○十年ぶりに発覚した。

また、ボルシチとは種類がいくつもあり、家庭の作り方によってもまた違ってくるのだそうだ。

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私がピザ屋で食べた物は間違いなくボルシチであったのだ。

その後に食べた、ビーツをすりつぶしてポタージュ状にされたピンク色のスープもボルシチ。
肉の煮込み料理と思って頼んだ食べ物もボルシチ。

とりあえず何でもボルシチ。

ボルシチは日本の味噌汁と似ていると聞いたことがある。
その時は何でそんな赤いスープと味噌汁が似てるのか。と思っていた。

味や色の話ではなかったのである。

ワカメが入っていても大根が入っていても豆腐が入っていても、トマトがまるごと入っていても、お椀から伊勢海老が飛び出していたって、味噌が入っててお店が「味噌汁」と言ったら味噌汁なのだ。

ニンジンが入っていても玉ねぎが入っていても、味がほとんどコンソメスープでも、見た目がほぼ肉煮込み料理だって、ビーツが入っていてお店が「ボルシチ」といったらボルシチ。

一緒だ。

作る人のこだわり。家庭の味。
・・・その日の冷蔵庫の中身。使いきりたい食材。
それらによって決まる味。

かくして私はロシアでボルシチを色々食べたが、「これがボルシチだ」という味がわからないままに帰国した。

ボルシチ初心者にはわかり得ない、到底深いボルシチの色々が気になるので近々またロシアに行きたいと思う。

そして、またいつかロシアに行くまでには、ボルシチを吹きこぼして大惨事となったキッチンのトラウマから抜け出し、なんとか味噌汁の一つもまともに作れる自分になりたいと思う。

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