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時間のカツアゲ

アルバイトを始め、それを理由に彼の誘いを断り始めた私を淋しく思ったのか、彼は言い出した。

「バイトなんかやめて俺と遊べ」

何と素直で我儘な要求か。しかし一理ある。彼には相手が少ない。私に構ってきたからだ。彼は時間が限られている。彼に恩義がある私は「不孝」と頭に浮かんだ。

いや、時間はこちらも限られている。
今バイトをしなければ、今バイトをすることはできないのである。という禅問答のような返事をした記憶がある。

今の瞬間を考えてみれば、お互いに時間は同じなのだ。悟ったかのような気分になった私はこの後しばらくして、再度彼と私への時間配分について悩みに悩み、それは結局キャリア選びにも影響が出ることになる。

バイトは続けた。大事だったんだよ。

#エッセイ



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