編集工房けいこう舎マガジン

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こんにちは。編集工房けいこう舎です。“短篇小説を愉しむ文芸誌"『吟醸掌篇』を出しています。

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  • 林浩治「在日朝鮮人作家列伝」

    1945年から今日まで、10人の「在日朝鮮人作家」の作品と人生、その歴史背景を、文芸評論家の林浩治さんにミニ評伝で紹介していただきます。 (本文の著作権は、著者にあります。ブログ等への転載はご遠慮くださいませ。その他のことは、けいこう舎https://www.keikousyaweb.com/までお願いいたします)

  • 野口良平「幕末人物列伝 攘夷と開国」

    "黒船でやってきて開国を迫る欧米列強に、圧倒的に力の弱い自分たちが、いかに義を説き、対等につきあうか" 人類史上、だれも答えを出したことのない難問を、わがこととして考え、語り合い、行動した幕末の人々。 その思考の足跡を、あまたの史料と会話するようにしてたどったのが、野口良平先生の『幕末的思考』(みすず書房)です。 高尚な哲学の言葉で注意深く書かれているのに、めちゃくちゃドキドキする不思議な本。 たくさんの魅力的な人物が登場しては駆け抜けてゆきます。 知らなかった人物も、イメージが静かにひっくり返った人物もたくさんでした。 ぜひとも、一人一人の物語をもっとよく知りたい! しかも、高校生がよめるような列伝にならないかなあ! と。 それで、大胆不敵にも、野口良平先生にお頼みしてしまいました!!

  • 寺田和代「本と歩くアラ還ヨーロッパひとり旅」

    "海外ひとり旅=若者”イメージをくつがえし、年齢や経験を重ねてこその旅の味わいをつづった大人のひとり旅ガイド『ソリスト』。 その著者で"アラ還の旅人"、寺田和代さん(ライター・編集者)がモタモタよろよろ(自称;)めぐったヨーロッパの街々で、さまざまな出会いに助けられながら旅の滋味に心ときめかせる哀愁の旅エッセイを、その地に関連する文学や作家の息吹を交えながら伝えます。 閉塞感ただよう時代だからこそ、異国の風に吹かれて深呼吸を!

  • とらぶた自習室──編集人の勉強メモ(栗林佐知)

    けいこう舎編集人の読書などからの勉強メモです。

  • 山﨑まどか「山﨑ノ箱」

    ロマンチック過失漫画「山﨑ノ箱」 by 山﨑まどか!!

最近の記事

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その14、最終回)

←(その13)からのつづきからのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その14) 15)息子の死と歎異抄との出会い  1974年12月、高史明は『生きることの意味 ある少年のおいたち』をちくま少年図書館の一冊として出版した。自身の少年期を描いた自伝的作品だ。この作品で日本児童文学者協会賞、産経児童出版文化賞を受賞した。  これは息子に対するメッセージでもあったのだが、出版の7ヵ月後、75年7月1

    • 林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その13)

      ※↑ 季刊『人間として』筑摩書房刊1970年創刊 ←(その12)からのつづきからのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その13) 14)夜がときの歩みを暗くするとき  金天三が小説を書こうとしたのは罪障感のためだ。  天三は罪のない同志を査問した。彼の潔白を感じながら党中央の決定にしがみつこうとしたのだ。そのあげく、良心に反してまで守ろうとした党の決定が廃棄され、朝鮮人だという理由で党から排除

      • 林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その12)

        ※↑ 著作者:Photographer2008  CC 表示-継承 3.0   (詳細はページ末に) ←(その11)からのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その12) 13)長男誕生  結婚して5年目、下北沢に引っ越した。  金天三は野間宏から本を読めと言われて文学書を沢山借りてきて読み倒し、そのうち古本屋から安いものを買ってくるようになった。  そして金天三自ら書くようになった。  1

        • 林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その11)

          ※ ↑ 六全協と日本共産党33周年記念式典(写真詳細はページ下に) ←(その10)からのつづきからのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その11) 12)離党  結婚して5ヵ月ほど経ったある日、夜遅く天三は酔っ払って帰ってきた。そして布団に倒れ込み声も出さずに泣いた。  その日金天三は地区委員会に呼ばれて行った。合法の事務所だ。 そこで朝鮮人は党を辞めなければならないと言われた。 党中央の通

        林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その14、最終回)

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        • 林浩治「在日朝鮮人作家列伝」
          47本
        • 野口良平「幕末人物列伝 攘夷と開国」
          30本
        • 寺田和代「本と歩くアラ還ヨーロッパひとり旅」
          43本
        • とらぶた自習室──編集人の勉強メモ(栗林佐知)
          1本
        • 山﨑まどか「山﨑ノ箱」
          17本
        • けいこう舎『吟醸掌篇』について
          6本

        記事

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その10)

          ↑ ※高史明・岡百合子夫妻と作家の黄英治さん ←(その9)からのつづきからのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その10) 11)結婚  数カ月後、地区委員会から唐突に恋愛許可の通達が届いた。 金天三の相手である北慶子こと岡百合子は大学卒業の直前だった。 組織は二人の結婚を進めた。 二人は再会して党への献身を語り合った。 55年の年明け早々、組織は結婚の手はずを着々と進めていた。結婚は町の党活

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その10)

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その9)

          ※ ↑ 1950年頃の共産党本部(写真詳細はページ末に) ←(その8)からのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その9) 9)恋愛と査問  その年の夏、下町の倉庫街にある非合法機関紙印刷所に足を運ぶと、顔見知りの女子大生が印刷助手として来ていた。 金天三は、党の非合法機関紙「平和と独立のために」の発行責任者で学生対策部の常任として、共産党お茶の水大学細胞のキャップだった彼女と会う機会があったが

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その9)

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その8)

          ※ ↑ 血のメーデー事件「暴徒と警官隊」(写真詳細はページ末に) ←(その7)からのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その8) 8)血のメーデーと火炎瓶闘争  翌1952年5月、いわゆる「血のメーデー事件」が起きた。 東京メーデーは明治神宮外苑で午前10時30分から約15万人が参加して開催された。 サンフランシスコ講和条約反対のデモ隊が、使用不許可となっていた皇居前広場に入り警官隊と衝突した

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その8)

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その7)

          *↑ 旧小河内村(詳細は中程のキャプション) ←(その6)からのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その7) 7)山村工作隊  1951年2月、日本共産党員であった金天三は、秘密裏に開催された共産党第四回全国協議会に連なる会議に出ていた。 四全協で所感派は国際派を地上に残して地下潜行したうえで、中国共産党の支持を受けて暴力革命路線を突っ走る。  金天三は地下組織の一員に選ばれた。天三は夢見心

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その7)

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その6)

          *↑日本に来た米軍のマッカーサー陸軍大将たち (詳細はページ末) ←(その5)からのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その6) 6)共産党に入党する  1950年3月、在日朝鮮人連盟解散命令に伴って接収の対象になった台東会館での抗議運動に巻き込まれて、警官を殴って警棒の乱打を浴び意識を失い検束用のトラックに投げ入れられた。  初夏、拘置所から出た翌日、天三が職安に行くと共産党の活動家である

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その6)

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その5)

          *↑写真:GHQの前で快哉を叫ぶ朝鮮人たち(詳細はページ末に) ←(その4)からのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その5) 5)東京へ  1949年秋上京した。 朝鮮人学校の悪仲間のひとりが同行した。  この年は、レッドパージによって公務員が大幅解雇され、組合のストライキを含む闘争に対して、国鉄下山事件、三鷹事件などの謀略事件が起きた年である。 前年には朝鮮の済州島で四・三事件が起きてい

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その5)

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その4)

          *写真↑ 当時の朝鮮学校の授業(詳細ページ末に) ←(その3)からのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その4) 4)朝鮮人学校  いったんは改心したつもりの天三は父の勧めで朝鮮人学校に通うことになる。  戦後の日本に起きた朝鮮人の教育運動は、民族語を奪われた植民地下の苦痛に耐えてきた人々が、その苦痛への思いを民族的自立の願いに重ねて噴出させた民族的エネルギーの賜物であった。  しかし朝鮮語

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その4)

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その3)

          *↑写真:日本上空に爆弾を投下するB-29(詳細はページ末に) ←(その2)からのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その3) 3)日本敗戦、小悪党の世界に生きる  1945年6月29日と7月2日、下関も米軍による空襲を受け、中心市街地は焼け野原となった。  8月15日、天三は自分のたった一人の理解者のように思っていた天皇が、神ではなくて人間だと知った。天三を殴っていた教師は彼を見ると逃げた

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その3)

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その2)

          *↑写真 :操業開始時の彦島造船所(1914年)(詳細ページ末に) ←(その1)からのつづき →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その2) 2)小学生金天三少年  尋常小学校1年生の頃、父が朝鮮へ墓参り帰郷を決断し、天三兄弟をつれて関釜連絡船に乗った。 金海の田舎に牛車にゆられて、洛東江を見下ろす小高い丘の上にある母方の祖母の家に着いた。滞在一週間で日本に戻った。  その後、父が首を吊る事件が起きた

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その2)

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06   高史明(コ・サミョン) 参考文献

          【参考】 高史明『夜がときの歩みを暗くするとき』筑摩書房 1971年 高史明『彼方に光を求めて』筑摩書房 1973年 高史明『一粒の涙を抱きて』毎日新聞 1977年 高史明『生きることの意味』ちくま文庫 1986年 高史明『闇を喰む Ⅰ海を墓』角川文庫 2004年 高史明『闇を喰む Ⅱ焦土』角川文庫 2004年 岡真史『ぼくは12歳』ちくま文庫 1985年 岡百合子『白い道をゆく旅―私の戦後史』人文書院 1993年 中村一成『ルポ思想としての朝鮮籍』岩波書店 2017年

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06   高史明(コ・サミョン) 参考文献

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その1)

          →マガジン 林浩治「在日朝鮮人作家列伝」トップ →林浩治「在日朝鮮人作家列伝」総目次 高史明── 暴力と愛、そして文学 ―パンチョッパリとして生きた (その1)  高史明を知る人の多くは『生きることの意味』の著者としてだろう。そしてもしかすると、岡真史の詩文集『ぼくは12歳』を編んだ父親として知る人もいるかも知れない。はたまた昨今は親鸞の教えを説く宗教者と思っている人がいるかも知れない。  高史明は在日朝鮮人2世で、戦後日本共産党の地下活動家として苦難の道を歩み、その経

          林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その1)

          野口良平「幕末人物列伝 攘夷と開国」 第二話 高山彦九郎(9)の注 公家の家格について

          →野口良平「幕末人物列伝」第2話 高山彦九郎(9)から ← 野口良平著「幕末人物列伝 攘夷と開国」マガジンtopへ (編注)公家の家格について 高山彦九郎(9)の本文中 彦九郎たちの関心は、尊号問題に集中した。天皇の実父閑院宮典仁親王は、幕府の制定した公家諸法度の規定では、五摂家と大臣家よりも低い身分とされていた。 のところなのですが、 一口に「お公家さん」といっても、公家のなかで「家格」といって、家柄にヒエラルキーがあるのですね。 こんな感じみたいです。 ご参考ま

          野口良平「幕末人物列伝 攘夷と開国」 第二話 高山彦九郎(9)の注 公家の家格について