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斉藤和義 feat.Bose「いたいけな秋」

斉藤和義さんのアルバム「ARE YOU READY?」(2010年10月リリース)の中で、スチャダラパーのBOSEさんとコラボして作った曲が「いたいけな秋」。

7分48秒とかなり長い曲となっていますが、中身は非常に濃いです。

ネットによると、作詞・作曲ともに「斉藤和義・Bose」となっており、2人で作り上げていったことが推察されます。

聴いていくと、構成はいたって簡単。年齢ごとに起こりうる人生を書きつづっていくスタイル。
1章「眩しい春」:0~20歳
2章「はしゃいだ夏」:20~40歳
3章「いたいけな秋」:40~60歳
4章「白い冬」:60~80歳

当時44歳だった斉藤和義さん。Boseさんは当時は39歳ぐらいでしょうか。

1章では、若者特有の青臭さやいら立ちをラップに乗せて歌う。最後は「すべてはこのまま続くはずだった」と締めくくって、2章へ。

2章は最強感をアピール。

「君に触れていればノーダメージ」
「朝からガッツリいけるバイタリティ
勢い余って毒も吐いて
尖って寝ないでフル回転」
「ものともしない知力 体力 想像力 集中力」

でも、最後は「永遠と思えたあの瞬間 お盆を過ぎたらあっという間」と怪しい雰囲気で次へ。

3章までの間にあるのが、さまざまな世界の天才たちが何歳でそれを作ったかという描写だ。

「イマジンを書いたとき あの人はまだ30」:ジョンレノンはわずか30歳でイマジンを書いた。

「地獄の黙示録のころ 巨匠は40」:フランシス・フォード・コッポラ

「ジャンピング・ジャック・フラッシュ あのリフも25」:ミック・ジャガーとキースリチャーズ(ローリングストーンズ)

「サージェントペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド 27」:ジョン・レノンのことかしら?当時、ポール・マッカートニーは25。

この歌詞を聴くと、「ああ、天才は若くして、もう既に天才なんだ」と思ってしまうね。

3章がまさにこの曲の中心。曲名にもなっている「いたいけな秋」。

「魔法は少しずつ現実へ」
「音を立てて狂ってくテンポ すべてをさらっていく台風」

ここに、斉藤さんの「幸福な朝食 退屈な夕食」の歌詞が組み込まれていて、見事に融合している。

中年にさしかかった当時の2人が、その悲哀を見事に歌いきる。

4章はひたすらつらい。

「ぼやける君の輪郭」
「外付けなんてないメモリー
思い出せないあのメロディー」
「君の悲しみが流れ込む 冷たく 深く」

次も、ターミネーターは30:アーノルドシュワルツェネガー
北の国からは46:倉本聰
などと名作がつくり出されたときの中心人物の年齢だけを並べる。

で、
カートコバーン27
ジャニスジョップリン27
ジョンレノン40
と、天才たちが亡くなった年をずらり。

最後は

「届くか?届いたのか?
追いついたか?いや気のせいか?
間に合うか?追い抜いたのか?
そんなわけねえか?もう遅いのか?」

を延々繰り返す。

天才たちに届いたのか、という自問自答。

それに対するコメントはしませんが、この曲の持つむなしさと現実感に私は圧倒されてしまいました。

2022年8月20日 トラジロウ

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