見出し画像

これを恋と呼ぶのだろう①

 これはまだ私が何も知らなかった頃の話。

 私は大学受験に失敗した。今まで失敗という失敗はなかった人生であったが、初めて挫折というものを味わった。自分が常に勝ち組の人間であると疑いもせずに生きてきたが、どうやらその考えは間違っていたらしい。だが、自分でも驚くほど、私が受けたダメージは少なかった。それはきっと、まだ這い上がって軌道修正できるチャンスがあることを信じてやまなかったからではないだろうか。受験には失敗したものの、私は大学進学を諦めなかった。しかし、両親に負担をかけるのは嫌だった。そこで、私はアルバイトをしながら、独学で受験に臨む、いわゆる「宅浪」になろうと決意していた。ところが、両親は私のその決断について良い顔をしなかった。そして、父は私にこう言った。

 「今まで塾に通わなかったから、落ちたんじゃないのか?金は何とかなるから、予備校に行って勉強に専念した方がいいんじゃないか?」

 私は、いつまでも親に頼り切ってしまうことに強く胸が痛んだが、父の言ったことはもっともで、私は何も言えず、ただ頷くことしかできなかった。

 こうして、これから1年、私は予備校へと通うことになった。浪人生活の幕開けだ。この経験が後に、強烈な思い出として私の心に深く刻み込まれることになるなんて、このときの私はまだ知らない。

―続く―

いつも最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 あなたのスキがすごく励みになります。 気に入っていただけたら、シェアしていただけるとありがたいです。 これからも書き続けますので、ぜひまた見に来てください!