RHYMESTER@日本武道館 未だ枯れぬライムと向上心
80年代後半の日本のHIPHOP黎明期に結成され、今年35年周年を迎えたライムスター。
日本語ラップのシーン形成に多大な影響を与えながら後進の道を切り開く一方で、近年はオープンな姿勢で様々なジャンルのアーティストとコラボレーションしてる。まさに人間交差点を自ら具現化しているかのようにボーダーを超えてHIPHOPを媒介し続ける正真正銘のパイオニア。アルバム曲じゃないけど、最近はユーミンともコラボしてるしねぇ。
そんな彼らの最新アルバム『Open The Window』のツアーファイナルは17年ぶりの武道館公演。そんなの行かないわけにはいかないじゃん。
『Open The Window』に収録されている11曲中、実に8曲がコラボ曲であり、今回の武道館公演は発表当時からアルバムに参加してる全アーティストがゲストとして出演クレジットされていた。だからライムスターとそれぞれのゲストがどんな化学反応を見せてくれるのか、めちゃくちゃ楽しみにしてました。
ということで18時開演の5分前に到着。ステージ後方に開いた窓を模した巨大スクリーンがあり、左右にもスクリーン。ステージ上中央にもう一つ大きなステージが設けられており階段で行き来できるようになってる。
開演予定時刻から15分遅れて場内暗転。『Open The Window』のイントロとともにステージ中央の上段ステージにせり上がって登場するライムスターのお三方。しばらく黙って立ったまま大歓声に頷きだけで応えるDさんと宇多丸さん、めちゃくちゃカッコいい…。宇多丸さんが着てるオレンジのトレンチコートがまたバッチリ過ぎてため息出る…。
一発目は『After6』!アルバムトップの曲で、18時開演だしコレ以外にありえない確信のオープニング。
本日最初のゲストReiを呼び込んでアルバムと同じ流れで『My Runway』。「1,2,3,4,5 Pose」のとこで3人揃って一歩ずつスライドしてくステップがカッコ可愛い!
上段ステージからMASTA SIMONが現れ『予定は未定で。』。レゲエのWorld ChampionとKing of Stageの最強タッグによるレゲエナンバーでガンガンハンズアップさせられちゃう。「ダララララレイ、Hey!」の「Hey!」が超気持ちいい。
続いてステージ上手に設置されてる檻の中でグダグダなコント始める岡村ちゃんこと岡村靖幸。アトロクで宇多丸さんが、
って言ってたの、これだったのかw
とはいえイザ曲始まったら歌の説得力とダンスのキレが半端なくて流石の岡村ちゃんでした。でも出禁w
続いて横山剣とスモーキーテツニとともに『世界、西原商会の世界 Part2!』と『肉体関係 Part2』2曲連発。こっちの横山ケン初めてみたけど見た目のオーラも歌声もギラギラしかしてない最上級イケ渋オヤジだった。JINさんの西原商会マイクアナウンスもバッチリ決まる!『肉体関係』終わりに5人がしばらく固まる演出もカッコよ。
ここで2008年の活動休止前の曲をまとめてやって頂ける、お得な三種盛りのコーナー。宇多丸さん曰く90年代からライムスターやジャパニーズヒップホップを追っかけてる古参ファン(いわゆるさんぴん世代)から、むさ苦しい感じで
「なんでオレらのあの熱い90年代の曲やってくんないんスか!?」
ってよく言われるからだそう…w。
古参圧…、乙…w
『耳ヲ貸スベキ』、『リスペクト』(ラッパ我リヤなしバージョン)、『グレートアマチュアリズム』の3曲続けて。ここまでのゲストも絡めた風通しの良いカラフルなステージングから一転、90年代日本語ラップ特有のほのかにドープめな雰囲気にガラッと変わる。ライムスターの活動歴の長さゆえの変化自在感。
上段ステージにせり上がって登場したのがSOIL&”PIMP”SESSIONSと再び登場のRei。『ジャズィ・カンヴァセイション』、『初恋の悪魔 -Dance With The Devil-』を2曲続けて。彼らが演奏するジャジーかつ複雑な生音のリズムにもぴったりフロウを乗せてグルーヴを加速させるDさんと宇多丸さんまじでプロフェッショナル。
間髪入れずにhy4_4yhの2人が駆け出してきて2組で『なめんなよ 1989』。「自分固有の立場で言えること言う」のリリックめっちゃ好き。そのままジャパニーズHIPHOPのアンセム『B-BOYイズム』になだれ込む!ここもちろんブチ上がらざるを得ない。「自分が自分であることを誇る」のリリックめっちゃ好き。
こっから今度は2009年の活動再開後の曲だけを集めた三種盛りのコーナー。『マニュフェスト』以降から本格的にライムスターを聴くようになった自分みたいな層にぴったりなメニュー。『ちょうどいい』、『POP LIFE』、『The Choice Is Yours』の3曲。全部好き堪らん。
『The Choice Is Yours』 聴きながら思い出したのが2018年のNEW ACOUSTIC CAMPにライムスターが出た時のこと。そのLIVEの最後に演ってくれたのがこの曲だったんだけど、ちょうど安室奈美恵の引退LIVEの日だったこともあって、宇多丸さんがこんなことを言ってたのよ。
今日も実は渋谷でKen Yokoyama(Hi-STANDARDの横山健の別バンド)がレコ発ツアー初日のLIVE演ってて、ラウドミュージック好きな自分はそっちも気になってソワソワしてたんだけど、この曲聴いてライムスターの武道館とこっちの横山剣を選んだ自分は間違ってないと心の底から思えたw
アルバムタイトル曲『Open The Window』。その前に宇多丸さんのMC。
nulbarichのJQの生歌初めて聴いたがとんでもなくメロウ。この曲聴いてるとただただ素直な気持ちになって、窓開け放とうって思える…。
そしてここで待ってました、スチャダラパー!両サイドからキコキコと三輪車漕いで登場するBOSEとアニ!もちろん『Forever Young』!JINとシンコそれぞれのDJブースの前面に「RHYMESTER」と「SDP」のロゴが描かれていて、この2つ並んでるの見てるだけでゾクゾクしちゃう!BOSEの安定した超聴き取り易いラップと、アニの安定の超適当にウーアー言ってるラップ堪らん!この6人がわちゃわちゃやってるだけでとても幸せな気分になれる。
ちなみに意外だけど、スチャダラは武道館での単独公演をやったことがないらしい。確かに野音のイメージ。若かりし頃からスチャダラに対して忸怩たる思いを抱えてきたライムスターの面々がちょっとだけ誇らしげで可愛らしく見える。アニが「今日ぼくたちに新しい夢ができましたw」と言って去っていったw
本編ラストはアルバムラスト曲の『待ってろ今から本気出す』。この曲、タイトルだけ見ると言い訳がましいボンクラ茶化してる曲なのかなとか思えるでしょ。でもリリック聴くと、むしろ歩みを止めずにNextStageを目指すチャレンジ精神や、あくなき探究心を表明してる曲でめちゃくちゃライムスターの真髄詰まった曲なんだよね。こっちも全力で待ってろ今から本気出すレスポンス!
一旦引っ込んでアンコールで戻ってきた3人を迎えたのがオーディエンス側のサプライズで用意されていたサイリウムライト!これ見て宇多丸さんが「なっち(安倍なつみ)の卒業ライブ!?」って流石の返ししてました(よう知らんけど)w
ここでDさんが齢54にしてソロデビューすることになったということで以下のようなMC。
まさしく「未だに尽きぬ闘争心 未だ枯れぬライムと向上心」(『待ってろ今から本気出す』)
オーラス曲は後期ライムスターのアンセム『Once Again』!!!
自分もこの曲に救われてきたからメモリアルなステージのクライマックスで聴けて感無量!
客電も点いたステージ上で、最後はプロの締め師DJ JINさんによる一本締め。「よぉーおっ、パン!」で一回だけ叩くのは大いなる間違いであるという説明を受け、正しい一本締めを教わる。おもしろいがめんどくさいwおもしろいけど。武道館でこんな締めくくりしたアーティスト絶対いないだろwライムスターにしかできない大団円。
いやぁもうマジで圧巻のKING OF STAGEでした。感服いたしました。
メモリアルな機会かつ武道館という特別な場所だからといって大袈裟な演出に振れることもなく、エモーショナルに振れることもない。
自然体のまま武道館と対峙して、あくまでもアナログ2枚使いと二本のマイクロフォンを起点に、3人のスキルと連携でグルーヴを増幅させてスペクタクルを生み出していた。つまり「持てるスキルと情熱 つぎ込んであますことなく証明」してた。
これで「未だ本気で本気出してない」って、ちょっとどうかしてるw
こんな超絶プロフェッショナルな背中見せられたら、改めて惚れちゃうし、こっちもやらないわけにはいかないって気にさせられる。RHYMESTER、本当にカッコいいわ。
あ、そうだ。
ライムスターは武道館でやるようなメジャーなヒップホップアーティストなのに、いまだにアナログ2枚使いだけで全てのLIVEを敢行している世界的にも類稀なる存在なのである!
これ太字で言っとかないといけないやつw
というわけで、日本が誇る正真正銘のKing Of Stage RHYMESTERに最大級のリスペクトを込めて、
音楽は…
…
…
…
素晴らしい!!!
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