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母島レンジャー 夏の活動ハイライト

日中はまだまだ暑い小笠原ですが朝夕は涼しくなりました。すっかり夏は終わり、冬が近づいてきています。
小笠原の東京都レンジャー(以下都レンジャー)は、歩道や園地等の小笠原国立公園の利用施設の維持管理、自然保護に関する違法行為の監視、外来種の侵入・拡散防止を日常の業務としています。
7月末から8月は船便も増え、夏は小笠原観光のハイシーズン!普段より歩道や園地の利用者が増えることにより事故や自然保護に関する違法行為、外来種の侵入・拡散など自然への影響が起こるリスクが高まるため、都レンジャーにとってはこの期間が繁忙期になります。そんな繁忙期の島内巡回等の業務の傍ら、母島の都レンジャー(以下母島レンジャー)がどのような活動をしていたか紹介させていただきます!


★カヤック訓練

都レンジャーは周辺の無人島の調査に行く際、漁船等からカヤックに乗り換えて上陸を行うことがあります。カヤックは小回りが利き、漁船等が入り込めない浅瀬にも入っていけるので上陸の際はとても重宝しています。しかし、便利なカヤックも正しい知識がないと転覆等の事故につながってしまいます。
正しく安全にカヤックを利用するために母島の環境省の皆さんと合同で訓練を行いました。

まずは陸で…

海に入る前に、まずは道具の確認や操船方法、事故対応の基本的な知識を再確認しました。カヤックの経験に各々バラつきがあったので、陸での確認を行うことで実際に海に入る前に全員の知識レベルをそろえることができました。
次はいよいよ海での実践となります。

海に入る前の再確認

海で実践!

この日は無風で海はベタ凪。実際の事故を想定した訓練をするには海が穏やかすぎるかと思われましたが、覚えたての知識を実践するにはとても良いコンディションでした。

乗る前にまず道具と安全の確認

2人1組で少し沖まで出て、落水や転覆時の対処を練習しました。凪の海でしたが、最初のうちは転覆からの復元に苦戦する様子も見られました。しばらく練習すると全員コツをつかみ、しっかりと対処できるようになりました。
ライフジャケットの正しい膨らませ方や着用方法なども確認し、全員が申し分ないレベルでカヤックを扱えるようになりました。
安全のためには海況が悪い日にカヤックを利用した調査を行わないことが一番ですが、上陸調査中に海況が急変することもあるので、カヤックの扱い方や事故対応を学び、常に安全対策に努めています!

様々な状況を想定して意見を出し合い、試してみる。

★オガサワラシジミ一斉調査

オガサワラシジミは小笠原の固有種の蝶ですが、2018年以降、野生環境下での確実な確認がなく、飼育下での繁殖も途絶えてしまったため、絶滅が危惧されています。そんなオガサワラシジミを見つけるために各行政機関と合同で調査が行われました。
調査1カ所あたり2~3人で担当し、11ヶ所の調査地に分かれました。
2日間にわたる調査となり、母島レンジャーの活動の中で大きなイベントとなりました。

2013年に母島で撮影されたオガサワラシジミ

多摩の都レンジャーも駆けつけてくれました!

繁忙期の中で人数も時間もかかるこの調査を行うにあたって、多摩地域の都レンジャー(以下多摩レンジャー)が助っ人として駆けつけてくれました!
多摩レンジャーは奥多摩、御岳、檜原、高尾の4ヶ所を拠点に活動しています。
業務内容は自然公園の利用マナーの普及・啓発、密猟や盗掘の監視、遊歩道や案内板などの管理、動植物の生息状況の継続的観測や監視が主です。また自然公園を訪れる皆様への自然解説、登山ルートや施設の案内など自然公園の保護と適切な利用を図るために活動しています。
今回来てくれたのは母島レンジャーとしての勤務経験もある心強い助っ人!母島への来島は久しぶりとのことで調査の休憩中も母島の自然を隅々まで見ていました。1年目の新米母島レンジャーが多摩レンジャーに調査現場を案内してもらう場面もありました。 

タコノキの隙間に潜む生物を観察する多摩レンジャー

調査の結果は...

2日間の調査でしたが今回調査した場所ではオガサワラシジミの生存が確認できる決定的な証拠はつかむことができず、発見には至りませんでした。しかし、今回だけでは調査しきれていない場所もまだまだあります。母島レンジャーとしては今後も日常的な業務で山に入る時は常にオガサワラシジミを気にかけ、発見に繋げていきたいです。

一斉調査終了。誰もオガサワラシジミの発見は諦めていない。

★ははじま丸による母島列島周遊クルーズ   

ははじま丸は小笠原諸島の父島と母島を片道2時間で結ぶ定期船です。人の往来のほか、本土から届く物資のほぼ全てが父島を経由して、このははじま丸によって運ばれています。母島の生活にとっては無くてはならない船です。

母島沖港に停泊中のははじま丸

ははじま丸で母島の周りを一周!

今回小笠原村の主催で、ははじま丸による母島列島周遊クルーズが開催されました。このクルーズは洋上でのんびり優雅に過ごすクルーズとは少し違います。普段は母島の西側を通る決まった航路で運航しているははじま丸ですが、このクルーズでは母島列島をぐるっと周りながら船内の展示や解説員の放送で母島列島の生い立ち、自然の価値、自然を守るためにどのような取り組みが行われているのかを詳しく知ることができます。母島レンジャーは前日の準備と当日の解説員としてクルーズに参加しました。

船内の展示

天気も海況もばっちり

朝8時半に参加者71人とスタッフ22人を乗せたははじま丸が母島沖港を出港しました。
母島島民だけでなく父島や本土からの参加もありました。母島レンジャーは平島・姉島・妹島・姪島・乳房山・東山について、各箇所の自然の特徴やそこで行っている業務内容を解説しました。他にも、クルーズ中は常に解説が行われ、研究者の方々や環境省、林野庁をはじめとした母島列島の自然保護に携わっている方々が解説員を担当しました。
船内の展示、解説ともに充実していて参加者の方々にはとても楽しんでいただくことができました。

天気も海況もばっちり!クルーズ日和でした。

★おわりに

コロナによる観光客の減少からも徐々に回復しつつあり、夏の観光ハイシーズンは賑わっていた母島でした。歩道や園地の利用者の大きなケガや事故もなく無事に夏を終えることができてホッとしています。
次に母島の観光客が増えるのは年末年始です。利用者が多い中だと大規模の歩道整備はできないので、利用者数が落ち着いている今のうちに歩きにくくなっている歩道を整備して事故を防止していきます。また、年末年始も引き続き人が増えることによる自然への影響の低減に努めていきます!