2018年6月25日日向縁2_ブログ公開版2

10月24日 問題化させられる「萌え絵」

 ちょうどこの日、「絵本に“萌絵”が使われていることについて」がネットでやたらと議論されていたので、私からもちょっと短めに話を。

 プロレスラーの蝶野 正洋さんという人の話だけど、娘が見ている『ガールズ&パンツァー』というアニメを後ろからちらっと見た蝶野さんは「ああ女の子向けアニメだな」と最初は思ったそうな。  この話を聞いて「ああ、その通りだな」と私は思った。普通の認識だ。
 ああいった可愛い女の子が主人公で、女の子がたくさん出てくるアニメって、昔は「女の子向け」だったはずなんだ。女の子が主人公の作品は女の子向け。男の子が主人公の作品は男の子向け……だいたい物語は見せたい(読ませたい)と思う人と同じくらいの年代性別の人を主人公にする傾向があった。
 みんなも女の子がたくさん出てくるアニメとか「あれは女の見るやつだ」って昔は言ってたでしょ。
 それがいつからなのか、どういうわけか今は逆転して……女の子が主役のアニメは「男性向け」、男の子が主役のアニメは「女の子向け」。ネットでは男性の主人公が出てきただけで「ああ腐向けね」、女性の主人公が出てくると「萌え豚向けね」という反応が出てくる。私はいまだにこの反応の仕方に違和感があって……。時代に振り回されているのは、多数派の人達のほうかもよ。
(『銀魂』とか「腐向けアニメ」とよく言われるけど、あれほどオッサンホイホイなアニメはないと思うんだが……。男性キャラクターが出てくる、というだけで「腐向け」と言う人は多い)
(アニメキャラのアイドル化がこの傾向を作った……のかも知れないけど、私はそこまでアニメについて詳しくないので、別の人に語ってもらいましょう)
 引っ掛かるのは、内容云々をきちんと見ずに、こういう反応を「反射」で思考してしまう人があまりにも多くなってしまったこと。
 かわいい女の子→萌え豚向け→性的である→子供には相応しくない。
 ここまでの図式を内容をきちんと読み込むことなく、“反射”で考えてしまっている。さすがに考える力が弱くなっているんじゃないか……という懸念がある。
(「萌えアニメ→性的」という図式は、それを「性コンテンツにして消費している人がいる」が正しいわけであって、元になっている作品が悪いわけではない。『けいおん!』にセックスシーンがあるわけではない。「性コンテンツにして消費されるものがいかん」というのなら、街を歩く人間それ自体がけしからんということになる)

 私は『projectMOE』という女の子がたくさん出てくる作品を描いていたけれども、この作品を「男性向け」と思ったことは一度も無い。むしろ「女性にかわいいって言われたいよね」と思って描いていた。女性の理想を描こうと思った作品だったもの(そして描ききれず挫折した)。読んでいるほうは「女の子主人公→男性向け」という図式に当てはめて読むかも知れないが、描いている方はそんなつもりは全くない……そういうケースだっていくらでもあるだろう。

(最近の私のイラストはやたらと性的な傾向が強くなっているが、これはそういうアドバイスがあったから。「こういう傾向で描いたほうがいいんじゃないですか」というメッセージがあって、その通り描いたらpixiv評価が4倍以上も跳ね上がって……。アドバイスは正しかったわけだけど、気持ちは複雑)

 思うのは現代人の思考力の鈍さ。なんでも図式に当てはめるけども、その図式が雑(図式に当てはめるのだったら、せめてがっちりとした知識を持ってからにしてほしい)。図式に当てはめた上で、特定の感情を自動で読み込む……みたいになっている。女の子を描いたら、萌え→性的な絵である→性差別だ→許せない!……という感じ。ポンコツのパソコンみたい。
 今は1つの画像見て、いかに早く情報を処理するか……そのことが重視されてきちんと絵を見ない、きちんと事象を見ない、掘り下げる能力のほうが弱くなっているんじゃないか(要するに馬鹿になっている……と)。そういう懸念を大人達が自分自身に向ける時じゃないのか……という気がしている。

 それと……そもそもの話だけど「萌え絵」の定義がよくわからない。美少女イラストをたくさん描いている私ですら、実はよくわからない。仕事として「萌え絵」を描いている人は定義を知っているのかもしれないけど。私は知らないまま、なんとなくで好きなものを描いている。
(どの作品が「萌えアニメ」なのか実は区別を付けられておらず、アニメ感想でも「この萌えアニメは……」と表現することは滅多にない)
 普通の人が言う「萌え絵」って、「それは今時の絵です」っていう場合が結構ある。それはあまりにも大雑把にまとめすぎじゃーないかい? っていうの。
 「萌え」とはどういうものを指すのか……この定義も曖昧で……。私は紫式部が『枕草子』で描いた「いとをかし」の精神がその原型なんじゃないか、と考えている。子供や子犬や子猫を見てかわいいと思う心理。これが今の時代の言葉で「萌え」なんじゃないか。「萌え」の心理は現代人にしか認知できない特殊な心理ではなく、意外と日本人が古くから持っている心理なんじゃないか……。
 と、私は考えているのだけど、工場の外観を見て「萌え」と思う人もいる。これは困った。本格的に「萌え」の定義がわからない。「萌え」の定義は、萌えを感じる人の心の内にだけある……としか言えなくなる。

↑これは萌え絵??

とらつぐみのnoteはすべて無料で公開しています。 しかし活動を続けていくためには皆様の支援が必要です。どうか支援をお願いします。