2017年5月24日AmazonKindle売り上げ90日間の様子

『ProjectMOE』という作品の成立と今後についてのいくつかの説明

『ProjectMOE』第6話その7、その8が連続して公開になりましたが、次の発表までしばらく時間がかかるので、その間の穴を埋めるためのお話を少々したいと思います。

『ProjectMOE』とは何なのか?
こちらのバージョンでは唐突に第6話から公開され、『ProjectMOE』とは何なのか、どのように成立したのか、その過程を知っている人は非常に少ないでしょう。作品自体はpixivをはじめ、色んなところで公開しているので、「見たことはある」という人は少しはいるかも知れないですが。

『ProjectMOE』の構想が始まったのは2011年の12月頃だったと記憶しています。今から6年前ですね……。時間の経過は恐ろしいです。
しかし当時の私は資金ゼロ。まずバイトからはじめ、次に制作に必要なパソコンを買い……という最初の最初から始めなければならなかったので、「思い付いた!」から実際の制作に入るまで、ものすごい時間がかかってしまいました。
お金を作り、パソコンを買い、バイトをやめて、さあ漫画を描くぞ! ……と、いうわけにはいきません。まず「絵の勉強」から。ある程度の心得はあったのですが、絵の初心者として勉強を最初からはじめました。pixivにはじめてイラストを投稿したのは、2014年4月1日ですね。絵の勉強からはじめ、さらに私は漫画なんて人生で一度も描いたこともなかったから、「コマ割の勉強」もしなければなりません。
「思い付いた!」からすぐに制作……というわけにはいきません。私には何もありませんでしたから……お金も、技術も、仲間も、何もかもありませんでしたから、全ての問題を1人でひとつひとつ解決しながら進まなければなりませんでした。

そして、ようやく『ProjectMOE』第1話が完成。公開されたのは2015年1月15日。構想スタートから発表まで、実に4年。
もはや映画が1本できる時間ですよね。ですが、私はたった1本の漫画のために、準備期間を含めて、4年を掛けたのです。私1人で動いていたから、どうしてもこれだけの期間がかかってしまったのです。

2016年2月10日。
第1話公開からおよそ1年。『ProjectMOE』が1冊の電子書籍としてまとまりました。
第1話から第5話までのストーリーに、さらにおまけエピソードを加えて、220ページ。380円。お値段の割に、かなりのボリュームのある内容にしたつもりでした。本は、AmazonKindleで手に入れることができます。

その売り上げは――14部。

この数年間で私が得た利益は3444円です。

「おそらく売れないだろう」
そういう予感はしていました。なにしろ、読んでいる人があまりにも少ない。読んで、作品を「いいね!」などで評価してくれるのは10人くらい。
pixivなどでは「告知」を入れることが許されているけど、その他のサイトでは基本的に告知はNG。「面白い」と思ってくれている人がいても、その人に「単行本が出てますよ」という情報を届けることができない。伝える手段がないのです。作品を知っていても、単行本が出ていることを知っている人は非常に少ないのではないかと想像されます。
知名度がほぼゼロなのに、なのに奇跡のように漫画単行本が売れる……そんなことが起こるはずもありません。漫画単行本は2ヶ月くらいで売り上げが途絶え、以降ずっと売り上げゼロです(それが最初に掲げた画像です)。

それに、やはり目に付くクオリティの低さ。
なにしろ初めて描く漫画です。まずコマの動きがぎごちない。最初の頃は、吹き出しの位置でずいぶん迷ったものです。読みづらいんです。
絵も良くない。下手です。個性を感じない。キャラクターが生き生きとしていない。気持ち悪いんですよね。
せっかくのシナリオが、漫画が下手なためにボロボロになっています。面白いはずのところで、楽しいと感じません。シナリオのほうが面白いです。自分で読んでいても、正直、つらいです。いいところを挙げようと思っても、1つも見付かりません。
第6話に入る頃にはだいぶ良くなってはいるのですが、第1話で読むのをやめてしまった人はものすごい数になると思います。実際、第1話の閲覧数と第2話の閲覧数を比較すると、半分以下です。とあるサイトでは、第2話まで読み進めた人はわずか8%という数字が出てしまいました。第6話まで追いかけた人は、ごく少数でしょう(それで、こちらでは第6話からスタートしたのです)。

漫画の才能が全くない人間がどんなに努力したって、この程度。
私は「失敗」したのです。5年という時間を費やして、ゴミを作っただけでした。

『ProjectMOE』第1巻が惨敗し、私は今後のことを考えなければなりませんでした。
“続ける”か“辞める”か。

私は“続ける”を選択しました。
『ProjectMOE』前半の(制作上における)難関である第6話の制作に入ることにしました。
それから1年かかり……いま現在です。第6話の制作は、やっと後半戦に入ったところです。
困難な状態はずっとずっと続いてます。体力的にも精神的にももうとっくに限界まで来ているにも関わらず、ボロボロになった体を引き摺って、漫画を描き続けています。なにより、資金が底をついている。そういうわけで、少しでも支援を頂ける場所を探して来たというわけです。


ここまでが、“これまで”のお話です。
この作品を通して私が何をしたいのか。本来どうすべきだったのか。ある意味の今後のロードマップ(あるいはこうなりたいという“希望”)のようなものを示したいと思います。

私はこの作品を、そもそも“チーム”で制作したいと思っていました。
すでに描いたように、私は漫画を描いたことがなく、「絵の勉強から始めた」とあるように、絵が描けるタイプでもありませんでした。当然、CGを扱ったのもこの作品のためで、全くの初めてでした。
私は作画を別の人に委ねたかったのです。私より確実に才能を持ち、集客能力を持った人に描いてもらいたかった。
私の描いたオリジナルキャラクターは、pixivを見るとわかるように、閲覧数は200程度。「いいね!」は20くらいです。要するに、まったく才能がない、まったく魅力がない……という意味ですね。
私が絵を描いている限り、絶対に作品に人気が出ることはない。読まれることはない。制作効率という面を見てもよくありません。

私は“チームで制作がしたい”と書きました。
そこをもう少し細かく書くと、原画と作画監督に分けて描く……というやり方を試してみたかったのです。
従来、漫画は「漫画家」という天才を筆頭に置き、それをアシスタントが支える……という構図ですが、この手法だと漫画家1人に大きな負担を強いることになります。漫画家に身体的精神的な問題が出てしまった時、制作体制は一気に崩壊します。漫画家が若いうちなら問題ありませんが、年を取ってきてから過激な制作体制を維持していくことは困難になります。
負担が一部に集中するのを避けつつ、効率よく作業を進め、かつクオリティを保つ。この方法は、すでにさいとうたかを先生が実際にやっておられます。
だからこその集団制作方式。私がやりたかったのは、「小さなアニメ現場」のような感じです。私がシナリオと演出を担当し、原画マンと作打ちをして絵を描いてもらい、その絵を作画監督が修正、絵柄を統一し、その後、仕上げに回す。「漫画の現場」と言うより「アニメの現場」に近い構造です。
能率とスピード、それからクオリティをすべて維持しつつ、週20ページ以上。月100ページ以上。単行本は3ヶ月で1冊。1年かかっても完結させられなかった第6話は、2ヶ月で終わらせます。

そんなに描くと、すぐにシナリオが枯渇するのではないか?
全く問題ありません。
最初に、構想スタートが2011年、第1話の公開が2015年と書きましたよね。
その間、私が何をしていたかというと、ずっとシナリオを書いていたのです。そのシナリオの総量がどれくらいか明言しませんが、第6話の段階でも、まだ全体の2パーセント程度でしかありません。
もしも私1人で、今のペースで漫画を描き続けた場合、シナリオをすべて消化するのに100年以上かかるかも知れない……という計算が出ています。
要するに、めちゃくちゃ先の方までできているんです。
それで私の本当の気持ちはというと、もうずっとずっと先の方まで進んでしまっているんです。何しろ、一番新しいシナリオでは天子サキが××××になっていますから。かなり面白いことになっているんですよ。自由度の高さが『ProjectMOE』の本来の面白さなんです。そっちのストーリーを早く進めたいです。

しかし、私には友人は1人もおらず、当然助けてくれる人なんているわけもなく。上に書いたような構想を現実にできるわけもなく。
何より、お金がありません。人脈もなく、予算もない。お金がない人に技術的な協力をしてくれるという人なんて、この世にいるわけがありません。
体力的にもそろそろ限界……いえ、もう騙し騙しやっている感じです。この調子であと2年やれ、と言われたら、私はどこかで力尽きて死ぬでしょう。過労が行きすぎて、常に疲れている状態です。
誰かと話すことなく、意見を交わすこともなく、ずっと1人きりです。そろそろ喋り方を忘れる頃でしょうか。
私は今も1人で描き続けています。私1人で描き続ける限り、困難な状況は続きます。
ですが、私は“夢のお話”を書いたつもりはありません。実現に向けて動きたいと思っています。
具体的には、第6話の制作を完了させ、『ProjectMOE 第2巻』を制作し、それを出版社や編集部に持ち込んでみようか……と考えてみます。
もうダメ元ですよ。
ここまでダメダメできて、どっちに向かってもダメダメなのはわかってますから、とりあえず動いてみようかと思います。
家に閉じこもり続けてももう終わりが見えているから、外に出ていかねばなりません。
それが、おそらく最後の悪あがきになるでしょう。

おそらく……私の想像ですが……門前払いを喰らうでしょうね。
なぜなら、まず絵が下手。今の若い編集者はストーリーを読まない、絵しか見ないと聞きます。ストーリーも果たしてどれくらい見てもらえるのか……。
作品の構想を聞かれてもうまく答えられるか……私はずっと喋っていないから、この口かうまく動くかどうかわかりません。
『ProjectMOE』は作者の私が言うのですが、この作品の弱点はパッと見で個性が見えづらいところです。いくつものエピソードを重ねて、その層の厚さの総体から作品の個性が見えてくる……という感じです。第6話はまだ“さわり”もいいところで、まだ『ProjectMOE』という作品の“本当の姿”は見えてこないでしょう。
現代の漫画は“コンセプト”をまず強調する傾向にあります。野球をやるのか、サッカーをやるのか、音楽をやるのか……まずコンセプトを早い段階で見せて、そのコンセプトからはみ出ないように物語が作られていきます。『ProjectMOE』ははっきりとそういうタイプの作品とは異質な作品なんです。ゆえに、わかりにくい。第6話まで追いかけてきてくれた人にも、まだ作品の“本当の姿”を伝えられていないんじゃないか……という気もしています。
もちろん、第1話の段階でコンセプトは見せていますが、「女の子がギターをはじめる話し」とか「女の子が自転車をはじめる話し」というようなわかりやすいモチーフが登場していないから、わかりづらい作品になっているのではないかと思います(絵の技術問題で、「構想にはあったけど見せられなかった」部分が結構あります)。
1~6話までのエピソードを見て作品のコンセプトを裏読みできる編集者なんていたら、その彼は間違いなく超優秀ですよ。
それ以前に、こういう時の作法を知らない、身なりも汚い若者の応対をしてくれるかどうか……。

考えていると、不安要素しかありません。
しかし、私に残されている選択肢はありませんから、やります。
やらないと、始まらないどころか、終わりもしないんです。

まあ悪あがきなので、挑戦が失敗したら……指をさして笑ってください。
笑って「あんなふうにはなるまい」と心に留めてください。
最後に笑いものになることが、私の挑戦の供養になるかな……と思っていますから。

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