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022『北海道を歩く エピソード3-4 2013.6.30-2』

022『北海道を歩く エピソード3-4 2013.6.30-2』

文:守屋佑一

人は足で走るのではない。
気持ちで走るのだ。

僕はいつもこう思って走っている。特につらいレースほどこう思っている。

2013年。サロマウルトラマラソン。100kmを走るマラソン。

スタート時間の朝5時。6月の終わりとはいえ、北海道。神奈川の冬と大差ない寒さ。
制限時間は13時間。長い旅が始まった。

僕はそのせっかちな性格ゆえ、大体のどのレースもスタートと同時にオーバーペースで突っ込み途中で体力を使い果たし苦しい思いをしてなんとかゴールにたどりつくというのが常だ。しかし、100kmという距離でそんな走りをしていては完走なんてできやしない。

何ヶ月も費やした準備を無駄にしたくはない。自分のなかのキメとして、無理なくいくらでも走ることのできる1km6分のペースを崩さないことを誓った。
このペースでゴールまでいけば10時間。もちろん必ずどこかでペースは落ちることは間違いないがこれなら完走できるはずだ。

最初の10kmはサロマ湖周辺ではなく街中。あっという間に過ぎる。10km地点でのタイムは56分。大丈夫。突っ込みすぎてはいない。キメを大きく逸れてはいない。上々だ。

街中を通り過ぎる。移りゆくコース上の景色。
放牧されている牛の姿が見えたり、大きなフキが生えていたり、オホーツクの海、広い道路、雄大な自然。
僕の愛する北海道のすべてがそこにはあるような気がした。

あっという間に、本当にあっという間に42.195km地点まできた。
フルマラソンの距離。コース上にはモニュメントが設置されている。
粋だ。

この時点で4時間23分。キメは守ることができている。こんな考えた通りにレースが展開できたことなんで今までになかった。
完走どころかけっこういいタイムを狙えるかもしれない。
こんな欲まで出てきていた。

50㎞地点5時間16分。少しだけペースは落ちたがまだまだ余裕。
練習ではこの50kmまでしか走ったことはなかった。
どうなることかと思ったが50kmを過ぎてもなんら問題は無い。足も特段ひどい疲労が出ているわけではない。

このまま余裕で100kmを走りきることができそうだ。この時点で僕は確かにそう思っていた。

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