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『さいしょのリノベーション@牛乳ビルその7』

その6はこちら

https://note.mu/torches/n/n0b0a08d9188d文:守屋佑一

2014/11/15(土)その7

おじさんが振り上げた鉄の棒はすさまじい勢いでデスクに命中した。

同時に部屋中にすさまじい高音が響き渡る。

その高音が鳴り止まぬうちにおじさんはまた大きく振り被る。

僕も、直也も、前の入居者も、ただ、ただ呆気にとられて言葉も出ずおじさんの様子を眺めているだけだった。

すると、ものの数分のうちに一つのがっちりとした事務用のデスクが細かい、ちょうど手でもてるくらいの大きさのいくつかの鉄の塊と変貌した。

僕ら3人でその鉄の塊をビルの外へ運ぶ。ビルの3階から外へその鉄の塊を何度も運ぶのは以外と時間がかかる。

デスクだったものの破片たちを外に出しているうちに、また他のものが鉄の破片へと変わっていく。

そこから先はただ黙々とした作業だ。壊すおじさん。運ぶ僕たち。

どれくらい時間が経っただろうか。

序盤は楽々と鉄の棒を振っていたおじさんも、後半はさすがに息切れをして、ペースが落ちていたが、それでも最後までやり遂げてくれた。

途中、鉄の棒をもたせてもらったが、それはとても重く、きっと僕にはこれを何度も力強く振ることは無理だ。

おじさんはどこでも売っているものだよと笑って話したが、僕はこの棒はおじさんが廃品回収で集めた鉄を溶かして作った特注のものに違いないと思った。

最初は黙々とした作業も、途中からは和やかに進んで5人でいろんな話をした。

前の入居の人も、やっぱり自分でいろいろリノベーションしたことやビルの思い出。

このボロボロのビルにある歴史。そしてこれから僕たち「トーチズ」が作る歴史。

そんなことを考えながら作業を進め、気づいたら部屋からほとんどのものを外に出し終わっていた。

※この記事は全文無料の投げ銭コンテンツです。投げ銭はまだまだ完成していない牛乳ビルのリノベーション費用となります。

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