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6月7日のリノベーション

文:大川直也

昼前、前回に引き続き手伝ってくれる友人を迎えに行く。気合いの入ったファッションに身を包んでいる。この場合の気合いというのは、ペンキにまみれてもいいようなボロのこと。

慣れたもので、更に14リットル買い足したペンキに適量の水で溶いて混ぜる。1週間ぶりのペンキ塗りは楽しい。慣れてきたねぇ、楽しいねぇ。2度目はペンキがよくのるねぇ。とても楽しい。友人との共通の趣味である音楽などを聴きながら和やかに作業が進む。

ここからはいつもの流れ。お決まりパターン。一瞬で無言になる。文字通り、ただただ目の前が真っ白になっていく。いつもと違うのはこの日はもう1人友人が手伝いに来てくれること。

ぶち抜いたままの入り口を押し開けてやってきた友人を迎えると場は少し明るさを取り戻した。コツのようなものを教える。ここはこうやんだよ、水の量はこれくらいね。なかなか難しいもんだね、いやいや筋がいいよ。はみ出しちゃった、これだから初心者は。わっはっは。冗談が飛び交う。そして次の瞬間、全くの無言になる。

梅ちゃんがやって来る。ぶち抜いたままの入り口を押し開けて。その後は同じ。

黙々と作業を進め、日没の頃にはペンキが尽きていた。残りあと少し、給仕場の壁だけを残して作業を切り上げた。

無言の作業の後は妙な連帯感につつまれる。思えばここ数年で出会った梅ちゃんとも随分長い付き合いのように感じてくる。リノベーションもほんの少しだけ、終わりが見えてきた。

僕と、友人2人と、梅ちゃんと、どうしようもない会話をしながら安いラーメンを食べて帰路についた。

※この記事は全文無料の投げ銭ブログです。投げ銭はまだまだ完成していない牛乳ビルのリノベーション資金となります。

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