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新年と再会と

文:守屋佑一

年内に終わらそうという志をもって取り組んだ牛乳ビルのリノベーションだが、木材の宛ても決まらず、電気も通らないまま年が開けた。

2015年の元旦。

僕は自分の中で毎年恒例となった早朝登山へと出掛け、日の出を見た。

元旦の山頂は当たり前だが、とても寒い。ただし、この日はいつもの元旦よりさらに寒かった。それに気付いたのは、この日の午後、お世話になっている新聞社に新年の挨拶をしに行ったときだ。
山の上の新聞社につくと、人気がなく、3日まで休みだと張り紙がしてあった。そこで途方にくれていると、空から雪が降ってきた。
小田原には雪が降るなんて珍しい。ましてや元旦に降るなんて少なくとも僕の記憶にはなかったことだ。

それでも、積もることなんてないだろうと呑気にかまえているとどうやら様子が違う。どんどんどんどん降ってくるのだ。
そのとき、僕がいた場所は久野の奥地。このままでは帰れなくなると焦りながら車に飛び乗り、家に戻った。

予想は当たった。

雨が降りだしてから数時間後、すっかりと雪が積もり、小田原を白銀の世界へと変えてしまったのだ。

夕方、僕はもう一度出掛ける用があった。
小学校の同窓会だ。

同窓会といっても、大々的なものではなく、20名程度が参加するくらいのもので、これまた正月の恒例行事となっている。
雪が月明かりで照らされた神秘的な農道を歩いて町へと向かった。


飲み屋について、席につくと隣に珍しい顔があった。
智之だ。

彼とは家が近く、中学時代同じ部活だったということもあり、よく一緒に下校した仲だったが、高校、大学ではほとんど遊ばなかった。
一緒に酒を呑むのは初めてだ。

しかし、懐かしい気分に浸る暇もなく、智之は開口一番
「最近、直也となにかやってるんだろ?」
と、話かけてきた。智之と直也は高校が一緒で、いつもつるんでいたということは知っていたが、久しぶりに会った彼の口から直也の話題が出てくることがとても不思議だった。

僕は直也と何をしているのか、そしていま、何に困っているのかざっと話をした。
このときは本当に牛乳ビルに敷き詰める木材のことで悩んでいたので、特にそれを話した。

智之はなんとタイミングのいいことに、現在都会で木を扱う会社で働いているらしい。
もし、僕らが求めるような木が余ったらすぐさま連絡をくれるという約束をしてくれた。

僕は正直期待していなかった。
あれだけ情報を集めたのだ。きっと出てくる結果は一緒で、それなりのお金が必要になることだろう。

それでも、古き友と今の友の共通点がなんだかおかしくて、たのしい気分でこの夜はこれで満足だった。

智之も機会があればリノベーションを手伝いたいと申し出てくれた。

この出会いが、後日牛乳ビルのリノベーションを加速させることとなるんどけど、それはまた時が来たら。

※この記事は全文無料の投げ銭コンテンツです。投げ銭はまだまだ完成していない牛乳ビルのリノベーション資金となります。

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