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地球を形成した材料について

 地球を形作ってきたものがどのようであったかを特定するのは難しい。これらの材料が惑星の進化の際に混ぜ込まれてしまうからである。この未だよくわかっていない太古の材料についての研究が現在行われている。

Natureによる以下のNewsを訳出して読んだ。
Ancient rock bears isotopic fingerprints of Earth’s origins

本文

 Fischer-Goddeは、グリーンランドで発見された古い岩石の鉱物に含まれているルテニウムの同位体比を計測したところ、すでに知られている隕石の組成と不一致であると報告した。この発見は水や有機成分などの揮発性成分が惑星成長の最終期に地球にやってきたことを示唆する。

 地球がどのように形成されたかに関する研究は地球由来の岩石と、太陽系形成の最初の数百万年程度に形成されたと考えられている隕石の同位体比を比較することで行われている。この隕石は最終的に岩石惑星を形成するものの代表であると考えられるため、隕石は地球の全岩組成に最も近いものとして考えられている。

 Fischer-Goddeとその同僚による研究により、隕石はそれぞれ特徴的な同位体比を持っていて、それが別の構成要素を区別するための指紋のような働きを担えることが示された。もしこの指紋を地球の岩石サンプルで特定することができれば、地球がどのような隕石によって形成されたのかを推定することができるかもしれない。またこの指紋は揮発性成分がいつ、そしてどこから地球にもたらされたかを制約するのに役立つ。ルテニウム100などの構成要素が地球の降着史のどの段階にあるかをトレースしてくれるからである。

 ルテニウムは親鉄元素であるため、地球のルテニウムの大半は核に含まれている。しかしルテニウムや他の親鉄元素は少量マントルに含まれており、これらの比率は始原隕石に含まれている量と近似できる。これに対する1つの解釈は、親鉄元素は核が形成された後(the late veneer)に供給されたということである。もしもそうであるならば、これらは最後に地球に供給されたものの組成についての情報を保存していると考えられる。

 一般にlate veneerの際にも炭素質コンドライトによって地球に揮発性成分は付加されていたと考えられていた。しかしながら、近年の研究ではルテニウム100の同位体比についてマントルのものと炭素質コンドライトのものが不一致であることが示唆されていた。そのため、炭素質コンドライトがlate veneerの際に揮発性成分を地球に及ぼしていたというのは誤りであると結論づけられる。この結論は、マントル内の親鉄元素はlate veneer以前の物質をあまり含んでいないという仮説を支持する。一方でもしもlate-veneer以前のマントルが核に入り込まなかったルテニウム100もまた含んでおり、それが現在のマントルのルテニウム100の同位体比と区別が可能であるならば、まだ炭素質コンドライトはThe late veneerの際にも地球に衝突していた可能性がある。

 元素合成されたルテニウム同位体比のバリエーションは地球の岩石については報告されていない。これは地球がプレートテクトニクスとマントル対流によって指紋が希釈されてしまうからであると考えられる。しかしながら、ここ数年でこれらを推定する手法が進化してppmのスケールでこれらを推定することができるようになった。そのおかげで原始の同位体比の印を捉えることができるようになった。

 Fischer-Goddeとその同僚はルテニウム100同位体比を地球のものと隕石のものとを比較し、グリーンランドで採取した地球の古代の岩石が通常のものではない構成要素となる指紋を保持していたことを報告した。この報告は現在集められている(衝突している)隕石は原始惑星系円盤のサンプルの中で偏っていることを示唆する。

 筆者らはこれらの通常でないルテニウムのデータはpre-late-veneerにおけるマントルのルテニウムの印ではないかと解釈している。この発見を他の親鉄元素のマントルにおける組成という文脈で考え、筆者らは現在のマントルの化学組成は、今回の新しいデータは、late veneerにおいて炭素質コンドライトがpre-late-veneerにおけるマントル組成のカウンターパートとして供給されていた場合にのみ整合的であると考える。これは地球惑星形成の最終期に揮発性成分が炭素質コンドライトと共に輸送されてきていたということを意味するだろう。

 Fischer-Godde と同僚のデータは、長い間謎となっていた地球の構成要素は変化する構成要素は保持されるか、研究のために得られるか否かについて1つの答えを導き出した。しかしながら、同時に他にもいくつか、この発見の意味を左右するような大切な疑問を生み出した。

・グリーンランドの岩石サンプルから得られたデータはpre-late-
 veneerの代表的なデータとみなして良いか。
・元素合成の指紋は他のマントル内の元素についても求めることが
 できるか。
・pre-late-veneerマントルに含まれているルテニウムを有していた
 「消失した隕石」の化学組成はどのようで、またそれがどうして
 見つからないのか。
・対流するマントルでこれらの同位体比の信号はどのように保持さ
 れていたか。

 これらの疑問はマントルの元素合成による指紋に関する研究をさらに進めることでしか解消できないだろう。

まとめ

 隕石のルテニウム同位体比とマントルのルテニウム同位体比が不一致であったことから炭素質コンドライトの供給時期が後期ベニヤ期以前であるという主張に対して、反対意見を物申す論文について紹介されている。一方で、含まれているルテニウム同位体比が後期ベニヤ以前と後期ベニヤ以後で変化している理由については具体的な証拠はない。しかし、母天体によって同位体比が変わることは他の惑星化学的な研究によってわかっている。微惑星の衝突によって地球が形成されていることを考えると、この微惑星の母天体について制約することが可能になるかもしれない。

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