hammer&hummingbird

磯村勇斗さん主演の舞台を観てきました。hammer&hummingbird。金槌とハチドリ。
感情をぶん殴られて観劇後しばらく立てませんでした。舞台を観てこういう気持ちになったのはすっごい久しぶり、というか始めてなんじゃないかくらい物凄く揺さぶられて。そんな舞台のことを、ぽつりぽつりと文字にしたいと思います。脈絡もなければネタバレも含み、かといって思ったこと並べてるだけなので意味も通らないかもしれませんが殴り書き。

この舞台は磯村さん演じる中村泳(およぐ)という詩人の青年の物語。泳は女手一つで自分を育ててくれた母の星子の死や、自身の詩人としての成功から生まれた苦悩に飲まれつつ、自分の意思を持って泳ぎ続ける、つまり生き続ける物語です。

泳は世間のズレや歪みに直面した時、詩を書くことによって自分の泳ぐ道を決めてきた。泳の信念の集大成とも言える詩集が世に出て売れることは、泳の思いが届いたとも言えるのかもしれないけれど、その才能はお金となってしまう。売れるものを書けという編集者、文字をお金に換算し始める自分に嫌気がさす泳の姿は、まさに表現者が必ず直面してしまう現実なのだろうと思った。

父がつけた泳という名前。それは、社会のなかで浮くわけでも沈むわけでも流されるわけでもなく、目的と意思をもって泳げという意味だった。父は行方をくらませ泳の母とは別の女性と幸せな家庭を築いて死ぬわけだけど、そんな父のことを母は最期まで愛していた。父が言った、泳ぐ方向に迷ったら、道に迷ったら、星を目印にしろという言葉には、星子という名前の母を目印にしろって意味も含まれてるみたいで、本当に自分勝手だと母は笑った。

自由は何でもできることじゃなくて、自分がよし(由)とした道を歩くこと。あてもなくふらつくことじゃなくて、ちゃんと自分で責任持って歩くこと。これが泳の母の教えだった。

泳はそんな母の死や、表現者としての成功から生まれた苦悩で道に迷うけれど、そんな時には一緒に道に迷う仲間がいた。粗大ゴミを売って、ガソリンを盗んで、盗んだトラックで「カリフォルニア」を目指す仲間。彼らと過ごすうちに泳は自分の走り方、泳ぎ方を取り戻し、やるべきことを再確認する。泳は詩を書かないと走って行けない。最後に、仲間のひとりであった子供が「お気に入りの詩」だと渡してくれた本が泳の本だった。彼は「その本は大好きな本だから持っていてほしい」と言った。泳は泣いた。こんなところにまで届いていたんだ、俺は書かなくちゃいけない、と。

最後の暗闇の中、泳が落とした数滴の涙は、光に反射してキラキラ光って、舞台の木の床に落ちていった。その瞬間、わたしの目からも同じものが落ちて、落ちた。届いた、泳の思いは作品の中だけじゃなくて、こっちの世界にも届いたよ、と思った。

生きづらくて、苦しくて、全部汚れたみたいに見えて。わたしも感じたことのあるような、というか今も薄々感じてしまうようなこの世界の息苦しさに一度は負けそうになったけど、その後ぜんぶ背負って生きようとする泳の姿に物凄く揺さぶられた。綺麗事を言っているのはどっちだ、汚れているのはどっちだ。社会なのか他人なのか自分なのか。わけがわからなくなって、迷う。でも、答えを見つけられるのは自分しかいないんだなあと思う。自分の意思でしか泳げない。

泳がムシャクシャして木の板をハンマーで殴った時できた穴が、この公演でしか見られない、この瞬間でしか見られないものなのだと思うと、舞台ってすごいなと思う。本当にナマモノだ。舞台はナマモノ。

とにかく、なんでもいいからわたしも生きようと思えた。少々乱暴でもいい。もうちょっと自分勝手に、自分でよしとした道を生きていいんじゃないかって、泳が教えてくれた。そんな舞台でした。

磯村勇斗くんを好きになって、彼は本当かっこよくて。お顔も骨格も性格もドストライクで、今日も舞台観るまでめろおた全開♡勇斗くん見られる♡みたいな気分で行ったけど、こんなに頭ぶん殴られるような舞台だと思わなくて、立てなくて、本当に凄かった。そこにいたのは磯村勇斗ではなくて中村泳だった。いい意味で裏切られ、いい意味で頭を殴られた。彼は本物の俳優だ。最高の俳優を好きになったと思った。

この作品に出会えてよかった。中村泳に出会えてよかった。この作品はずっとわたしの心に残って、細かい色々が抜け落ちても、必ず泳の詩と、泳の思いと、泳の母が泳に託した思いは残って、わたしの中で輝き続ける。泳はわたしの中で生きるんだ、そう思うとすごく嬉しくて、負けてられなくて、わたしも自分の意思で泳げるようになろうと思う。

まとまりもなければ自分で何言ってるかもよくわからないけど、そんなこんなを感じた舞台でした。わたしは明日も、この生きづらくて、苦しくて、汚れた世界の中で、自分なりの綺麗なことを求めて生きていきたいと思います。

#hammerandhummingbird #磯村勇斗 #舞台

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