懐古主義みたいでいやだなあと思うけれど、大学生は楽しかった。

正直勉強した内容はぜんぜん思い出せない。もともと記憶力はよくないけれど、それにしても覚えていない。講義をサボって練習室でふざけて遊んだことや、食堂でばかみたいに笑ったこと、夏のばかみたいに暑い稽古場。昨日のことのように思い出せる。たぶんつらかったことがないので、ランダムに引き出しに仕舞われたんだろう。もう少し丁寧に厳選してしまっていてくれたら、役に立つ知識も少しは引っ張り出せたかもしれないのに。

最近、所属する劇団が本格的に動き出した(ずっと活動はしている)。いいなあ、やりたいなとは思うけれどなかなか参加出来ない。東京に住むことはないだろうし、そんなに頻繁に通える余裕も今のところない。それは仕方ない。でもまた、ただのファンみたいになってしまっては嫌だな、とは思う。

おもしろい人たちの中に混ざってけらけら笑っているだけの演劇部員だった。4年間いても演劇のことはよくわかっていなかったし、演出の意図を理解しないまま舞台に立っていたこともある。とにかく面白くて仕方なかった。笑われるものをつくるというのも魅力的だったし、周りにいる人たちもみんな好きだった。自分がそこにどう関わっているのかまで、考えが及んでいなかった。今思うと、無知というのは恐ろしいし、ある意味幸せだった。

稽古が一番楽しかった。本番は来なくてもいいと思っていた。お客さんに観てもらいたいという気持ちがあまりなく、本当に自分のたのしさのためだけにやっていたような気がする。今もそんなに気持ちが変わりないのは、やっぱり考えが幼いんだろうな。観てもらうからには、時間をいただくからには、という気持ちが足りなかった。ただただ、一緒に居たいだけだった。

またやりたいなぁというイメージが、学生の頃のままだから参加できないんじゃないかと思う。あれは、あの頃だから許されていたけれど、もっと大人の年齢になってしまった。なにが足りないのか具体的にはわからないけれど、絶対に足りない。わからないけれど。

演劇や音楽はわたしにとって必要な手段であることは間違いないと思う。ただ熱量や創造力が足りないので、お遊びで満足してしまう。芸術分野において欲がないというのは、結構致命的だ。

どう気持ちが変わればついていけるのか、変わらなくても参加することでギアが入っていくのか、わからない。ただ今までのように稽古場でけらけらしているだけでは、だめそうだなぁというのはわかる。なぜこんなことを書こうと思ったかというと、久しぶりに過去映像を観たからだ。おもしろかった。

またやりたい。それは好きだからだし、楽しいからだ。ぜんぜんわかってないんだと思う。楽しいだけじゃないんだとは思う。あの頃よりもちょっと理解して、中に混ざることができる時が来たら、またおもしろいものを一緒につくりたい。です。