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作文の書き方(3)(楽に、良い作文を書くコツ)

次にあげた「条件」は、ある年公立高校入試問題で、作文の問題文の後につけられていたものです。

条件
1、原稿用紙を用いて、題名などは書かないで、本文を一行目から書き始めること。
2、二段落構成とし、前の段落では、自分の選んだ立場について、その根拠となる体験見聞を書き、あとの段落では、それを踏まえて自分考えをまとめること。
3、全体が筋の通った文章になるようにすること。
4、漢字を適切に使い、原稿用紙の正しい使い方に従って、30行(300字)以内におさめること。

この条件の中に、良い作文を書くための留意点が2つ、上手に述べられています。

1つ目は、300字程度の作文であれば2段落構成が適当であること。

2つ目は、前半で自分の体験見聞を書き、後半で自分考えを述べればよいこと。

この2つは、この問題に限ったことではありません。作文全般に通じる普遍性を持っています。

★「起承転結」と「序破急」

昔から言い伝えられている、どう文章を構成したらよいかを簡潔に言い表わす言葉に、『起・承・転・結』と、『序・破・急』の2つがあります。

起承転結(き‐しょう‐てん‐けつ)
漢詩の構成法から生まれた言葉で、話を書き起こす)、それをさらに承(う)ける)、ところが、と話を横に転じる)、まとめて終結させる)という4段階の構成を持たせると、文章のおさまりがよいとされています。

序破急(じょ-は-きゅう)
日本の芸能、雅楽(ががく)から生まれた言葉で、短めの導入部)、話題を広げ本論を述べる展開部)、一気にまとめる終章)の、3段階で文章を構成します。

起承転結は4段階の構成、序破急は3段階の構成ということになります。

字数や時間に制限がある入試の作文や小論文の場合、起承転結は悠長に過ぎます。序破急でいくべきです。

さらに、300字程度の作文で3段落も段落分けをすると、行をかえないといけない分、文字を書けない余白の部分が多くなってしまい、よくありません。
1段落目書出し本論(序・破)、2段落目結論(急)、の形にまとめるべきです。

★2段落構成で書く

1段落目は自分の経験を書く

作文の課題が『挨拶』であったとします。

「挨拶は大切です。」と冒頭に書くと、後が続きません。

入試では、じっくり構想を練る時間なんかありません。考えこまなくても書けることで字数を稼がないといけません。
誰でもある程度すらすらと書けるものは何か?
それは自分が過去に体験したこと、経験したことです。きれいごと、抽象論だと、書くことはすぐに尽きてしまいますが、具体的な体験についてはいくらでも書けるはずです。

第1段落経験を書いて8割第2段落意見を書いて2割が目安です。

『挨拶』という題名を見て、「挨拶」に関連して自分が実際に経験したことまず思いうかべます。

毎日の家族との挨拶、これは話を発展させにくいので避けたほうがよいかもしれません。話をそこからすぐに発展、広げていける題材を選ぶべきです。
家族でも、例えば、親から近所の人に出あったら必ず挨拶をするように躾けられたことを思いうかべられたら、近所の人とのふれあい、そのことで自分がどうかわっていったか、自分のものの考え方にどのような変化があったかと、話を広げられますので、こちらはOKです。

一番書きやすく、中学生として好印象なのは、学校生活、特にクラブ活動に関連したことでしょう。こちらもおすすめです。

★具体的であるほど良い

さて、クラブ活動中の挨拶について書こうと決めたとします。

下手な人は次のように書いてしまいます。

私は中学校でクラブ活動をしていました。練習中、よく挨拶をしました。

なぜ下手なのか、わかりますか?

この文だと、作文を読んだ人に頭の中に、何のイメージも浮かんでこないからです。

私は中学校に入学して、テニス部に入部しました。初日はコートの横で先輩たちの練習を見学したのですが、練習を終わるとき、先輩たち全員が、「ありがとうございました。」とコートに頭を下げて礼をするのを見て、大変驚きました。
だと、どうでしょう?

テニスコート、そこで練習する部員、コートに頭を下げて練習場を後にする部員、それを眺める中1の子と、頭に浮かんできませんか?

読んだ人に情景が浮かぶ、これが良い作文の必須条件です。

そして、情景を読者に思い浮かべてもらうには、できるだけ「具体的に」、情景を描写するしかありません。

良い作文は、体験具体的に書いた文章であり、具体的であれば具体的であるほど好印象を与えます。

★2段落目で自分の意見を書き、結論に導く

自分の経験を長く、自分の意見や考察は短くが鉄則で、前にも述べたように、「第1段落の経験で全文章量の8割、意見や結論を書く第2段落は全体の2割」が一応の目標です。

一応と言ったのは、本当は作文もその人の「考える力」を審査するもので、意見考察の部分が充実していればいるほど良い作文だからです。だから、経験7割以下、意見3割以上の割合で、人をうならせるほどのものがもし書ければ、それにこしたことはありません。

しかし、よほどの識見がある人以外、それは無理です。
入試にばくちは禁物、経験8割、意見2割と思っていたら、それくらいは時間内に、それなりのものを、誰でも書けます。

★婉曲話法(えんきょくわほう)を心がけよう

自分の意見、結論部分を書くに際しては、文章の上手さに3段階あることを知っておきましょう。

例えば、悲しかったと言いたいとき、
「私は悲しかったです。」は小学生以下のレベル。
「思わず涙が出てきました。」で中級、中学生だとこのレベルで充分です。
「唇をかみ、どんよりと曇った空を見上げました。」で上級です。

例題の「挨拶」だと、
だから挨拶は大切だと思います。」では、幼稚すぎます。
毎日コートに挨拶をすることで、私は、すべてのものに感謝する気持ちの尊さを学びました。」で、大きく合格ラインをこえます。
さらに、「私がクラブ活動を通じて学んだのは、テニスの技量だけではありません。全てのものに感謝するという謙虚な心構えがスポーツの技量を支えているのだという、強い信念です。」くらいホラを吹けるようになれば、採点者をうならせることができます。

俊英塾代表。「塾学(じゅくがく)」「学道(がくどう)」の追究がライフワーク。隔月刊誌『塾ジャーナル』に「永遠に未完の塾学」を執筆中。関西私塾教育連盟理事長。