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金曜日の熱気

肌をつるっとさせるために2,200円払ってサウナに入る。風呂もサウナもあるタイプの店ってどっちでよべばいい?

最寄りのサウナは自分に合っているのか、ここでは5セットをこなせる。客にチャンネル権のないテレビでは日テレが垂れ流しで、21:00までは野球(巨人戦ではあるが)を観て無心になれるのに、21:00を過ぎると嫌なキャスティングの嫌な番組が始まる。そんなのが流れるとサウナを出て風呂に切り替える。

サウナを出て、今の渇きにフィットする飲み物を探してコンビニを何軒も南下する。雨が上がって濡れた地面に湿っぽさが満ち満ちており、金曜日の熱気が底から湧いてくる。金曜日は季節を問わず熱があると思う。家から二人でちょっと出てきた、という格好の男女が多く、そのラフな格好からも金曜日特有の非日常と日常が醸し出される。夏がくる。明日から7月。駅の周りに何本かある木に星のイルミネーションが施され、その木のせいでわりと死角になっているところに短冊がいっぱいぶら下がったカラフルな笹がかけられていた。

学芸大学の高架下には夜の時間帯になると何らかの集団が車座になって酒を飲むスペースがあり、そのために向かいにローソン(旧スリーエフ)が存在している。今日は100m手前からもきこえてくるほどの嬌声で60人近くのダンスサークルが酒盛りをしていた。高架下の北のスペースと南のスペース、間をまあまあ往来のある道路が分断しているのに、それぞれとても楽しそうにしている。なぜダンスサークルかわかるかというとその恰好や態度もさることながら、ちょっといったところにダンススタジオがあるから。

この集まり、普段は多くても10人ぐらいで、ダンスのチームで楽しく飲んでるんだろなと思っていたけど、いよいよ60人の規模で飲んでるところを見ると彼らは自然発生的にこの高架下で飲んでいるのではなく、サークル内で「学大で飲むならあの高架下!」と評判になっているのではないかと思い始めた。たぶん略称もある。卒業後は想い出になって。週2ぐらいの頻度で夕方にサラリーマンが飲んでるときもあるけど、もしかしたらOBなのかな。意味のない場所にも誰かが意味付けをしている。

高架下で飲んでいる彼らの、そしてラフな格好をした男女があふれたこの街(生活が営まれている証左でもあることが嬉しい)の、金曜日の熱気にあてられて、俺もローソンに入ってドリンクを買った。ひやしあめの220mlぐらいのやつがあった。めっちゃうれしい。俺が一番欲しかったのはこれかもしれない。この夏たくさん飲むだろうな。夏が来る。今年の夏は金曜日を大切にしよう。俺は人生のかなり早い段階で金曜日の開放感と寂しさの高次元での両立に気づいた男で、携帯のメアドにFridayって入れていたぐらい金曜日がめちゃくちゃ好きです。

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