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結婚記念日

昼頃、母からLINEが届いた。

「ケーキを買いました。
生け込みが終わったので、接骨院に行こうと思ったけど、受付終了したので今から帰ります」

明日から始まる上野の花展に来て、という遠回しな催促なのかと思い、しばし放っておいた。

3月はお稽古に一度も行けないほど私が多忙な事は知っているはずだ。

でも、しばらくしてやはり気になって

「腰、まだ悪いの?」

とメッセージした。

先日ギックリ腰をしたと聞いていたからだ。

すると、間髪いれずに

「さっきのメールは、間違いです。お父さんに送ろうと思って間違えました」

と来た。

「今日が、48周年の結婚記念日です」

48年も一緒に暮らして、

知り合ってからは50数年で、

この世で出会った誰かと
そんなに長い時間一緒にいて、

しかも結婚記念日を毎年覚えていて、

その上、母がケーキを買って帰るって、

なんか良いなあ、と心がほっこり温かくなった。

なんで父のことを好きになったの?と昔
聞いたことがある。

「高校のとき、クラスで一番頭が良かったから」

父の通った北大の文化祭で高校卒業後、偶然に再開した二人。その日、父が母を食事に誘ったらしい。

「あなたたちは可哀想よね。だってお父さん以上の人は絶対見つけられないわよ」

独身時代、何度も言われてきたその言葉。
でも最近、母はこうこぼす。

「お父さん、今までずっと我慢していたみたい。
退職してから最近、すごいワガママなのよ」

家の仕事を全部やらせて好きな生け花だけしているんだからそのくらい我慢すれば、と言おうとして母の
表情を見ると、言葉とは裏腹になんだか嬉しそうだ。

「それでも生まれ変わったら、お父さんと一緒になりたい?」

と聞くと

「お父さんしか知らないからね」

知らないことって、知っていることより何倍も幸せなことなのかもしれない。

母は、仕事も結婚も1つしかない道をまっすぐ歩いた人だ。

そんな母が無性に羨ましくなった。

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