僕の最近読んだおすすめ小説


太陽・惑星 上田岳弘

世界観がすごい。時空を超えてあらゆる物語が繋がり広がっていく。中世の錬金術、アフリカの赤ちゃん工場、テクノロジーの制する社会、不老不死、SNS社会まで。シニカルな語りと飛躍する想像は、哲学的で知的欲求を沸きたててくれる一冊。著者の上田岳弘は2019年第160回芥川賞を受賞したが、IT企業の役員でもある。


彼女がエスパーだったころ 宮内悠介

SF連作短編集。疑似科学をテーマにライターの主人公のルポ調で語られていく。宗教とか超能力を相手にしながら淡々とした描写で、ミステリ的でもある。巻末に載る多くの論文を実際に参照しながらロジック的に理解していく一方、最後に辿り着くのは人間の屈折した闇であり、その綻びまで丹念に表現しているのがすごい。


星か獣になる季節 最果タヒ

最果タヒは今最注目の詩人。そんな彼女の小説作。冴えないアイドル好きの高校生が、同じアイドルを陰ながら応援していた人気者と犯罪の計画に挑むことになってしまう、というストーリー。「正しさ」って何だろうと悩む10代の葛藤危なさ不安定さをポップな文体で表現している。言葉の一つ一つが切実でエモい。


この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 白石一文

出版社勤務の主人公が、組織の闇や権力争いから起こる陰謀に巻き込まれていくストーリー。主人公の格差社会・政治と紛争・死生観などを度重なる引用文を混じえて語られていく。少し偏った見方もあるため周りの登場人物と意見もぶつかるが自分なりのロジックを構成し主義主張していく様子は、現実のエリートサラリーマンの思考回路をリアルに再現している。第22回山本周五郎賞受賞作。


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