『大島弓子の話をしよう』


初出:図書の家の「この漫画を今日は読もう」/『漫画の手帖特マル』no.07 2013.1.27発行

 リトルプレス『大島弓子の話をしよう』(発行:Scopeboy Books)ですが、11月発行予定が12月初旬まで作業がずれこみまして、ようやく印刷入稿して中旬の完成を待つ←今ココ。の状態でこの原稿を書いています。この本には当方も、編集協力から(本業の)デザインとDTP作業までかなりの分量で制作作業に関わらせていただきましたのでご紹介です。

 『大島弓子の話をしよう』は、さまざまな立ち位置におられる「大島弓子を愛するファン」33人の皆さんにその愛の有り様をうかがったインタビューとエッセイが中心です。

 「大島作品に初めて出会われたのは幾つのときで、何という作品か?」という質問から始まるインタビューは、主婦、編集者、アーティスト、映画監督、漫画家、研究者…… そして大島作品の装丁家までを含んで素晴らしいバリエーションになりました。いつ、どの時代に、どんな風に大島弓子が読まれて、受け入れられていったのかがそれぞれに語られます。それも、さまざまな年代の方が語っておられるので、自分の読みたいところからぱらぱらと読み進むことができるはず。一見、大島作品を読みこんでいないとわかりにくいかと思えるのですが、意外にこれらのインタビューやエッセイ群は間口が広いのではないでしょうか。大島作品に興味があれば、どこかにきっと自分なりの〝とっかかり〟があるはず。どこをとっても十二分に大島弓子なわけなので、おそれずこの世界に踏みこんでいただけたらと思います。

 加えて、大島作品を収録した本や雑誌の紹介もしっかり入れています。特に今回、力を入れて扱ったのは「詩画集と絵本」。書影でその大きさ感もわかるようにして、一冊ごとの内容紹介と一覧リストも。そしてまさにこの原稿を書いている時に、79年発行の大判の絵本『ディーゼルカー』が飛鳥新社から再発するという嬉しい驚きのニュースが!(12月23日発売予定)にわかに、世間的にも月中旬から大島弓子まつりなのか? とか勝手に活気づくタイミングではありませんか。めでたい。

 また、大島イラストが表紙を飾った各少女漫画誌の出版社雑誌別一覧リストに、書影を掲載。74年から99年までの25年で全80冊。今回は図書の家の資料のほか、大阪府立中央図書館国際児童文学館で主に「プチコミック」「LaLa」「ASUKA」を調べ、明治大学米沢嘉博記念図書館では主に「ギャルズコミックDX」で調査のお世話になりました。角川書店の「ヤングロゼ」はほとんど前情報がなかったので、まず先に特定するために夏の暑い最中に図書の家3人で国立国会図書館に行き、その全ての号を確認、特定しました。それにはむろん蔵書印やバーコードシール等が貼られており。オークションや古書店でもなかなか出てこない雑誌はこういうとき困ります。もし押し入れに当時の雑誌類をお持ちの方が居られたら処分の前にはぜひとも然るべきところに寄贈もお考えくださいまし。(図書の家にもお声をおかけください)

 ……何か脱線してしまいましたが、そのような往年の書影特集だけでなく、今書店で買えるのはどの本なのか、どの本にどの作品が収録されているのかという実用的なリストはもちろん、デビューから最新までの現時点での完全版といえる作品リストも漫画作品以外も載せて網羅。それも未収録チェックに加えて同時代の主な少女漫画対比までしているちょっと濃すぎる資料収録です。

 更には、コラムにおいても旧小学館文庫(現行ではなく、70年代後半から出た、著者とは別のイラストレーター起用のあれですね)を取り上げたらその成り立ちや意義までを語って更には一覧リストを付けるとか、大島作品が音楽や映画に与えた影響までも総括して逐一リストを付けようとする勢い。

 これって……(ぜいぜい)やっぱりちょっとおかしなテンションになっています。コラムというのは穴埋め的箸休め的なポジションであるはず……ではありませんか。なのに、最後の大詰めで原稿が編集さんからやってきたとき、レイアウトを担当していた私は本当に正直なところ、驚きましたよ。だって、もう、校正の嵐で毎日へとへとになっていて、どんどん印刷入稿予定は遅れるけれどももうこの1週間で印刷に入れたい、しかしまだ手つかずな所が何ページも、その上、まだ巻末に控える作品リスト数ページ分が真っ白なのに、どうしよう、な時にやってきたコラムが、文字数が想定の倍、さらにリスト付きだなんて これを皆入れろと……?(あの時の気持ちが一瞬蘇ってちょっとくらくらしました。いや、相談してかなり削ってもらったんですけれども)

 ちなみにこのあたりのリスト制作は図書の家はお手伝いしておりません。編集の三浦沙良さん(ちなみにプロの編集さん)の「大島弓子の話をしたい」気持ちがどばーーーっと奔流のように流れ出たそれを必死に受け止めて私は粛々とレイアウトをしていたわけですね。(いえ、私もハタから見るとかなりおかしな修羅場状態が二ヶ月以上続いて、なんだかふと気づくと冬になっていて『月はふたつある』の世界だったかも。3月から始まったこのプロジェクト、入稿までいろんなことがありました。どんどんインタビュー数も増えていくし……どこまでご縁で繋がっていくんだろうとか、夏の京都でのタルホな夜とかも思い返すと尋常でないハイテンションで赤面、でもそこは長年の朝日ソノラマ大島弓子選集への愛をこめてレイアウトしましたし悔いなし。そしてご参加の皆様のお名前はまだ公式発表されていないので一応ここでは書きません。本が出てのお楽しみです! すごいです)

 ……というような情報量をぎっしり詰めこんだA5判108ページ・オールカラーのお得な一冊。「今一番優れた大島弓子ガイドブックになっているよ」というのは同じく編集協力に携わったヤマダトモコさんの言葉ですが、いや、手前味噌ですがそれは間違っていないと思われます(ヤマダさんもインタビューと構成を4本担当してプロの技を見せておられます。インタビュー記事のトリも務め、日常の激務のなかどのようにこれらをこなしてまとめたのか、堂々変なテンション作業組の一員と言ってよいでしょう)。

 関係してくださった皆様全員の大島先生への熱い思いを載せて、12月中旬から販売開始予定です。

 詳細は専用サイト(http://blog.livedoor.jp/yumin_talking/)で。イベント参加や通販も予定しています。どうぞ一人でも多くの方にお手にとっていただけますよう、よろしくお願いいたします。

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