この夏は京都で「バレエ・マンガ」展ですよ!!!!

初出:図書の家の「この漫画を今日は読もう」/『漫画の手帖特マル』no.08 2013.8.1発行

 『漫画の手帖』読者の皆さまにはくどいほど予告でお伝えして参りました京都国際マンガミュージアム(以下京都MM)の「バレエ・マンガ 〜永遠なる美しさ〜」展がとうとう開幕。この原稿を書いている今は原稿をぎりぎり待っていただいての7月上旬で、ようやく図書の家から展示に貸し出す資料本等もお渡しできたところです。

 この展覧会は、バレエ・マンガの歴史を実際のバレエ資料や衣装や映像などとともにたどるもので、チラシや各種広報、公式サイトの情報等で詳細が出ていますのでここでは簡単に。原画を一同に介する夢が実現したのは山岸凉子、有吉京子ほかの12作家です。名前を見ていただくとわかりますが、あまりの豪華メンバーに目がくらみます。この中で、高橋真琴、牧美也子、北島洋子については、バレエものを描いた時代が特別に取り上げられることは、これまでほとんど無かったのではないでしょうか?

 また、広報では名前が出ていませんが、昭和40年代の学年誌のバレエ・マンガのイメージを形作った谷ゆき子をフューチャーしています。谷悠紀子名義で貸本デビュー、『虹』『すみれ』等で大活躍した作家であり、週刊誌を経て、北島先生と同じく学年誌で「白鳥の星」「バレエ星」「さよなら星」「かあさん星」といった星のシリーズを10年ほどに渡って連載しました。小学生の当時、いずれかをちらっとでも読まれた方はその物語の「超展開」ぶりが脳裏に刻まれているはず。ご存じない方は、ぜひとも今回の資料展示も観ていただきつつ、図録収録の倉持佳代子の熱の入った解説をお読みいただきたい。谷ゆき子については事務局の藤本さんも熱い紹介記事をお書きくださるのでは?と思い、私はちょっと裏話を。

 この展覧会の企画を倉持さんからお聞きしたとき、ぜひとも原画の展示をと強く願った作家さんは決定した12人の他にも何人もいたのですが、中でも個人的に、谷ゆき子先生にはぜひとも登場してほしかったのです。既に亡くなられていることは存じていましたが、これだけ時系列をたどって紹介をする展覧会に谷先生の展示がないなんて考えられない。そして、いろんな方のお力を借り、たどりにたどって現在の著作権者の方に連絡が繋がり、谷先生の展示も実現する運びになりました。谷先生が1999年にまだお若くして亡くなられたこと、原画は全く残っていないことは本当に残念です。しかし、今回は学年誌の少女マンガ部分を担うバレエ・マンガを、その代表作家と言える北島洋子〜谷ゆき子〜上原きみ子まで総括して一度に展覧する。こんな夢企画が実現するなんて(その展覧会に尽力できたなんて)本当に嬉しい限りです。

 最後に再び図録の話を。太田出版に編集してもらったこの図録は読み応えたっぷりの大判ムックのようなものでして、美麗な絵をカラーで楽しめるだけでなく、詳細な作家インタビュー、そして研究資料としても大充実です。本物のバレエについては展覧会の企画段階から協力している舞踊研究家の芳賀直子が日本のバレエの受容史を細やかに解説(展示では兵庫県立芸術文化センターの薄井憲二バレエ・コレクションからの美しいバレエ資料を観ることができます)。また、抒情画に描かれたバレエや、映画からの影響、そして本展の監修者であるヤマダトモコのバレエ・マンガ登場についての解説までを一気に読めば、これまで米沢嘉博さんが取り上げている以外にはほとんど紹介されていない時代−−「アラベスク」や「SWAN」の前の時代−−にはこういう流れがあったのだなあ、ということがわかります。さらにはバレエに造詣の深い藤本由香里の解説、単著も7月に出て今年一番勢いのある若手研究者の岩下朋世による「トゥシューズに画びょう」に代表されるいじめの考察など、盛り沢山過ぎて困るほど。巻末には、図書の家が制作した「バレエ史とバレエ・マンガを対比させてたどれる年表」と「学年誌のバレエ・マンガ年表」を掲載。後者は自分の小学生時代に読んだのは何?とか、萩尾先生たちの年には学年誌のバレエ・マンガ連載はなかったんだ?とか、いろいろ楽しめます。

 展覧会場には、貴重な時代の雑誌や貸本、資料もたくさん並びます。ぜひともこの夏は京都に!! おみやげとして、オリジナルグッズもたくさん企画されてますよ!(図録はぜひ京都MMでお求めください。残念ながら会場に来られない方のためにamazon等での扱いもあります)

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