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理想のライブ


0.熱狂

ファンはアイドルが登場するのを今や遅しと待ち構えていた
照明が少し落とされる
始まりを察したファンの熱気が高まっていく
ライブの開始を告げる音楽が鳴り響く
反響するようにファンの叫びが轟く
ポーズを取るアイドルが次々に映っていく
音楽が終わると一人のアイドルが映った
頭の上にリボンを結んだ一人のアイドル
彼女の名前を呼ぶ怒号に似た歓声
他のアイドル達は彼女の元に集まると隊列に並んだ
鳴りやまない歓声が熱狂を物語る
彼女が隊列の間から前に出てくる
目を閉じる
少し歓声が落ち着いてきた
目が見開かれる
そして彼女はマイクを構えた

1.熱が伝わる距離

なんて美しいんでしょう(悦
今なお語り継がれる伝説を文字で表してみました。
いや、これでも魅力の100分の1でも伝わればってそれぐらいの完成度。
ここに書いた理由、それは乃木坂46にハマったきっかけが2015年神宮overture~太陽ノックの生駒里奈さんを見たことだったからです。
だから乃木坂ちゃんで一番好きなコンテンツは何ですか?と問われると、「ライブ」が私の答えなんです。

今年のライブ~真夏の全国ツアー2023~を見て何度も、とても良かった、という感想を抱いたのですが、それってどこから生まれるんだろう、どういうライブが素晴らしいんだろう、と考えをまとめようと思って久々にnoteを描いてみた次第です。
まあ、もう3週間も経ってるんですけどね…

1.シンプルなライブ

今回のライブは、地方と神宮でセトリは多少違うと思うのですが、私は神宮の配信しか観れなかったオタクなので、神宮で行われたライブを前提にお伝えしたいと思います。

基本的なセットリストの構成は2022年と変更がありませんでした。夏曲5曲のラッシュからスタート、期別楽曲も各期2曲ずつの1曲は固定、ユニットのコーナーがあり、照明を極力落とした歌のコーナーで雰囲気を創り出し、終盤に『ごめんねFingerscrossed』からの『Actually,,,』で盛り上げる。アンダー楽曲が2曲から3曲になった分、全体的に1曲から2曲増加となりましたが、変更点といえばその程度でした。
ちなみに、『インフルエンサー』や『日常』は2年連続神宮ではしていないようです。特殊効果のイメージが強いだけに結構意外ですよね。

大きく違ったのは、2022年は、トリンギョ(CV:齋藤飛鳥さん)が登場してかき回してくれたり、個人ブログにユニットコーナーの隠し要素があったり、MCでも短いコーナーがあったりしたわけですが、そういうアトラクションが2023年にはなかったのです。

X(旧Twitter)でも「シンプル」や「曲の部分が長い」というポストを見かけました。私も同様の印象を受けました。そして思いました。
アンダラっぽくね?

2.神宮でアンダラ!?

アンダラ、つまりアンダーライブですが、観戦したことのない方にひと言で説明すると「単純明快」です。基本的にステージは一つで、VTRも簡素で特殊効果も少ない。紙吹雪や銀テープもあるっけ?ってレベルです。
メンバーからするとファンを真正面に受け、ただただ歌って踊る。MCもありますが、息を整える時間と言った方がいいのでしょうか。言うまでもなくハードなライブだと思います。

ただ、アンダラの熱量はとても高いのです。もちろんアンダラに参戦するファンの皆さんの熱量が高いのもありますし、アンダーメンバーの気合が満ちている空間だというのも間違いないでしょう。
しかしながら、選抜メンバーのファンの熱量が低いかと言われれば嘘でしょうし、選抜メンバーがパフォーマンスに手を抜いていたかと言われればそれこそ大嘘でしょう。

私が考えたのはメンバーとファンとの「距離」です。
アンダラの会場はいかんせん全体ライブよりも小さいものになりがちですから、アイドルとファンとの物理的な距離も小さいのですが、ここで言いたいことはそれではありません。
アイドルとファンが心理的に一体になれるか、ということだと思います。

分かりやすい例で言えば、コール&レスポンスです。
「お前ら、騒げ~!」「オオオ~~~!」ってあれです。
ライブなので本来声を出していいのは演者側、アイドル側だけのはずです。それがファンも声を出していいわけですから、そこではグッと距離が縮まることになります。アイドルとファンの呼吸が合えば、そこにはさらなる熱狂が生まれてくるはずです。
声出しライブが最近になって解禁された影響で、静かなライブに慣れ、コールそのものを疑問に思う方もいらっしゃるようですが、アイドル側から「声出せ~!」なんて煽られているわけですから、そこは思い切って応えてみるのもいいのではないでしょうか。きっとアイドル側に近づけるはずです。

コロナが原因でこのアイドルとファンとを近づけるものができなかったわけですが、ある程度沈静化したことにより、ファンの束縛が少なくなりました。ファンからアイドルに近づくことができるようになったわけです。

しかしながら、それは演者も同じだと思います。
コールができない期間、アドバルーンを飛ばせてみたり、メッセージプレートを持ってみたり、メッセージカードを降らせてみたり、と趣向を凝らすことでファンに飽きのこないものにしようとしてきました。
でも、それではアイドルが見えないんです。
アイドルの本分である「歌って踊る」の部分が隠れて見えない。アイドルにとってはとても残念なことだったと思います。せっかく練習したのに、自分とファンとの間に”壁”があっては見てもらえないじゃないか、と思うメンバーもいたかもしれません。つまり「距離」が遠かったわけです。

思えば、乃木坂46で印象的なライブの場面は、シンプルなものが多いと思います。冒頭の生駒ちゃんの絶叫、後ろ手でピース、アンコール『きっかけ』、ソロパート数珠つなぎ…いくらでも思い出せるものですが、はっきり映像として記憶に残ってますよね。つまり、アイドルとファンの間に割って入るようなものがない、「距離」が近いと名シーンが生まれやすいのかなと思うのです。

さて、理想のライブが生み出される要因はスタッフさんの裁量による演出だけでしょうか。

2.人が生み出す熱量

1.中西アルノさんの場合

分水嶺という言葉があります。
水が東西南北どちらに流れるか決める山のこと、転じて物事がどうなるか決める分かれ目のことです。
個人的に、「乃木坂46の分水嶺だな」と思うことが1年前にありました。

中西アルノさんは乃木坂の歴史において特異な人です。
まずお披露目から1か月も経たないうちのセンター抜擢。
急なセンター抜擢は2期生の堀未央奈さんとも比較されるところですが、堀さんでもお披露目から5か月は研究生として在籍しているわけです。いかに彼女にかかる期待が大きいものか分かるでしょう。
そして諸事情があって活動休止。先輩に迷惑をかけたという重すぎる十字架を彼女は背負うことになりました。
さらに追い打ちをかけるように活動再開から2週間で日産スタジアムでのバースデイライブ。心の整理をする暇もなかったと思います。

アルノさんのセンター曲『Actually…』は当時の最新シングルでしたから、登場する順番としても伝説級の先輩方がサプライズ出演した後でした。彼女がセンターに立つのも2月以来でしたし、ネガティブな声も数多く聞いていましたから、私も正直どうなるのかなと不安なまま、楽曲披露を迎えました。

そこで日産スタジアムのファンから拍手が起こりました。配信でもはっきり聞こえるぐらいの拍手でした。日産のファンはアルノさんを迎え入れるぞ、そういう意思表示がそこにはありました。
そして楽曲披露。構成は初披露の時と違い、アルノさんの歌う部分は短くなりましたが、それでも活き活きと歌声を響かせてくれました。
視聴しているこちらも何かが動いた、そんな気持ちになる楽曲披露だったと記憶しています。まさしく分水嶺はここでした。

この1年で『Actually…』の披露は何度かありましたが、その度にアルノさんの歌声は磨きがかかっていきました。もちろんご本人が歌のトレーニングを頑張っておられるのでしょうが、時間の経過とともにファン全体が中西アルノという人物を理解していきましたし、アルノさんもファンが抱く思いを理解していったのだと思います。「距離」の話に戻るようですが、アルノさんとファンとの心の距離が近づいたからこそ『Actually…』はさらに盛り上がる曲へと変貌していきました。

そして今年の神宮、特に2日目以降は『ごめんねFingerscrossed』が終わった瞬間から、アルノアルノとファンの叫びが聞こえました。それほどまで大きくなったアルノさんの存在感に見ている方も嬉しくなりました。
アルノさんは上手く歌うというより熱く歌うようにしている印象を受けました。神宮のファンを沸かせたい、そのためにどう歌えばいいかを彼女が考えてセンターに立っていたのだと思います。

ファンがアイドルを大きく育てる、そんな夢みたいな話があるんだなと思っています。

2.松尾美佑さんの場合

「四期生メンバーとして配属予定だった松尾美佑が学業のため活動を辞退となりました。」

松尾美佑さんは一度アイドルとは違う道を選びました。
大人びた風貌からは分かりにくいですが、彼女は現在19歳、坂道合同オーディションのあった2018年当時はまだ中学生ですから、将来の様々な不安を考えた末の決断だったのでしょう。
しかし、彼女はもう一度アイドルという道に戻ってきました。1年と言うアイドル人生としては長い期間を研修生として過ごし、再び乃木坂46の門をたたいたのです。

アンダーに推しがいるという方は分かっていただけるかもしれませんが、アンダーメンバーの一番辛いところは、見えにくいことです。乃木坂46の冠番組「乃木坂工事中」では顔が売れているはずの選抜メンバーが出演することが多く、顔を売り出していかないといけないはずのアンダーメンバーは出番が少なくなりがちです。
研修生の当時から自分を発信する機会が少なかった松尾さんを始めとする5人は余計に辛い立場にあったことでしょう。松尾さんの同期で同じ研修生からスタートした弓木奈於さんのように、少ない出番の中で面白い言動を出せるという素晴らしい能力があれば話は別ですが、万人にそんな能力があるはずもないのです。

いきおい、アンダーメンバーの自己表現の場はアンダーライブとなります。先述のアンダーライブの熱量はこういうところから生み出されるのかもしれません。松尾美佑さんもその一人でした。ライブでの華麗なパフォーマンスに注目が集まり、徐々に評価を上げ、32ndシングル『人は夢を二度見る』で選抜メンバーに抜擢されます。パフォーマンスを評価されてか、3列目のセンターというポジションでした。

そこから33rdシングルではアンダーセンターとなりました。
地方公演での感想では「松尾さんよかった」という声が散見され安心してはいたものの、正直、私は松尾さんのアンダーセンター像は想像ができなかったので、どういう表現をするのか注目していました。

神宮での『踏んでしまった』が始まると松尾さんの圧倒的な魅力に引き込まれました。初のセンターとは思えない「君臨」といえるような力に思わず画面越しに称賛の声をあげてしまいました。
『踏んでしまった』はかなりアップテンポな曲で、コールを入れるのはかなり難しいのですが、4日目にはおおよそ揃っていましたし、続く『錆びたコンパス』でも松尾さんがセンターを務めたのですが、4日を経るにつれだんだんとサイリウムが一面黄色になっていきました。
このようなファンの行動を導くのは松尾さんのセンターとしての魅力が開花した表れだと思います。

ファンに見てもらいたいという情熱、涼やかな印象の松尾さんですが、その熱量あってこそ理想のステージを生み出してくれたのだと思います。

3.ファンは熱を大きくできるか?

1.ファンの行動が伝説を生む

私事ですが、乃木坂46を応援する前は、アニメの界隈にいまして、『アイドルマスター』というコンテンツを特に応援していました。奇しくも乃木坂46と同じ2015年に西武ドームで公演を行うのですが、そこで起こった伝説をお伝えしたいと思います。
『Rebellion』という曲があります。歌っている我那覇響(CV:沼倉愛美さん)というアイドルのサイリウムカラーはターコイズなので最初はその青一色に客席は彩られています。曲中「心の奥に波打って目覚めゆく真実の」という歌詞の「赤」のところで一面赤に変わるのです。誰が言い始めたわけでもなくファンの意志でどんどん広まったもので、このような大きいステージで完成形が実現し大きな感動を呼びました。

乃木坂46においても、真夏の全国ツアー2016in神宮において、『ハルジオンが咲く頃』が披露された際、アリーナは黄色、スタンドは白色に統一され、ハルジオンの大きな花が咲きました。センターを務めた深川麻衣さんはその時点で卒業していましたが、深川麻衣さんのファンを中心に神宮球場に詰めかけたファン全体の意志が美しい景色を表現したのだと思います。

その頃から現在に続くコールで「ナカダカナシカ」というのもあります。『おいでシャンプー』の間奏中に叫ぶものですが、これも卒業メンバーである中田花奈さんのファンが主導して定着してきたものと言われています。中田さんが卒業されてから3年が経っていますが、今なお『おいでシャンプー』の間奏では「ナカダカナシカ」の声がよく聞かれます。ファンが定着させたものが根強く残り続ける好例ではないでしょうか。

乃木坂46のファンが拡大し、通常の呼びかけではなかなかファンの意志が統一するのは難しくなってきたものの、粘り強い働きかけにより、先述した『錆びたコンパス』は黄色、の他にも『日常』は青、のようにサイリウムカラーが定着する楽曲もあります。

コールやサイリウムの色はある程度「勉強」しておかなければなりません。それもまた「推し事」や「推し活」になると思います。
ライブに行くことに慣れてきたという方は、推しを輝かせるという楽しみ方もある、ということを知っていただければと思います。

2.ファンも”演出”できる

このようなことから、素晴らしいライブのためにスタッフさんだけでなくファンも演出できると私は思います。それはコールやサイリウムのようにファンから「出す」方の演出だけではありません。

例えば、メンバーから挨拶のコーナーが各ライブどこかしらに存在します。挨拶の間にメンバーのライブに対する思いがあふれてしまい、涙する場面も少なくありません。そこで「頑張れ」とファンが声をあげることもよくあります。確かに、「頑張れ」と声をかけたくなる存在であることは間違いありません。

ですが、ここでは「静寂」が正解だと私は思います。
メンバーがどんな思いでその言葉を発しようとしているのか、それを読み取るためにはファンが作り上げる「静寂」という演出が必要だと思います。
特に卒業メンバーへのお手紙などー今回も早川聖来さん卒業セレモニーがありましたがーメンバー同士の空間、物語が形成されようとしているのに、ファンが割って入る権利は全くありません。

ただ黙っていることを薄情ではないか、静寂を怖いと思うメンバーもいるのではないか、という方もいらっしゃると思います。そういう方には拍手をすることで勇気づけることを私は勧めたいのです。あくまで、言葉を発するのはアイドルが優先されるべきであって、ファンはそれを邪魔しない程度に応援するのがよいと思い、このような案を記しました。
これはあくまで次善の策ですので、本当は静寂を保つということを心がけていただきたいのですが、それはライブに行かれる皆さんが状況を踏まえた上でする判断にお任せしたいと思います。

2023神宮ライブでもサイリウムも消してロウソクの火でライトアップする演出がありましたが、「マイナス」の演出もファンはできると思います。
例えば、『逃げ水』の間奏部分『月の光』や、『Actually…』のイントロ・清宮レイさんが英語で語りを入れる部分など、歓声をできるだけ少なくするのも美しい演出、幻想的な演出に繋がるのではないかと考えます。

これらは強制されるものではありませんし、それ故に「マイナス」の演出をファンが統一するのは極めて難しいのですが、さらにアイドルとして研鑽を積む乃木坂46の面々を目にするとファン側も彼女たちを美しく際立たせる何かができないか、そう思った次第です。

終わりに

数年前に書いたnoteの冒頭にもあるのですが、私はライブ会場に行ったことがありません。大音量や大人数の喋り声、突然の大声などはとても苦手で、それ故に配信で音量を調節しながらライブを楽しんでいます。

現地にはいないながらも、素晴らしいアイドル、素晴らしいスタッフ、素晴らしいファンに恵まれたライブで感情を動かされることが度々あります。今回の神宮公演はまさにそれだったのでしょう。視聴後の爽快感、達成感のようなものが大きかったと思います。個人的に文字での表現しか応援ができないので、このような形でその感動を残してみました。

そしてゆくゆくは、新国立競技場での全体ライブ、ドームでのアンダーライブなど、大きな会場での公演が開かれ、成功することを祈っています。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次の横アリアンダラを楽しみにしながら終わりとさせていただきます。

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