第22話うどんこ先生ガンガン日誌「チョイ悪おやぢたち」

入院の手続きが終わって、指定された病室へ
行くことにした。

そこには「今日入院した」という緊張した
面持ちの中にも、笑顔で迎えてくれた
おじさんが1人いた。

横浜に出て来て、機械仕事をやって40年という
「マーくん」だった。

お互いに楽しいお酒が好きということで、
話が弾み、いつしか談話室で時間を過ごす
ことが多くなっていた。

そんな2人に「一緒の話に混ぜてくれ」と
体格がよくてやさしい感じがする「ジャイアン」
と紅茶の香りがして穏やかな雰囲気の紳士
「シナモン」が加わり、いつのまにか
ちょいワルおやじ軍団「チーム うどんこ」が
ほどなくしてできあがった。

談話室の一角を占領(?)して話をしている
4人を、遠くからみれば、あんまり近づきたくない
奴らがいるなぁ…と誰もが思ったことだろう。

「小学生のころに東京オリンピック
(1964年開催)を見た!」

という共通点を持つ同世代ということもあって
話はいつも盛り上がっていた。

その晩は20時をずいぶんと過ぎたころ、
いつもの談話室に、ジャイアンと二人で
魚屋さんが経営している料理屋さんに
行った時の話をしていた。

ふと、エレベーターホールを見ると
扉が閉まっていて病棟に入れないパジャマ姿の
女性がいる。

防犯のために、入口がオートロックされるのを
知らずに、近くのコンビニに行ったらしい。

内側からロックを解除して中に入れてあげると
手を合わせて拝まれてしまった。

横にいたジャイアンは、終始、ぽかぁ~ん!

とその様子を見ていた。

席に戻って、ジャイアンにオートロックの
話をしてあげた。

「入院したばかりの、比較的年齢の若い(?)
女性たちは、結構この被害に合うんだよ」

そしたらジャイアンは

「えっ?そうですか。防犯システムなんですね。
若い女性を助ければいいんですね!?」

ものの5分もしないうちに、次のターゲットが
扉を叩き出した。

「オレ 行ってきます!!」

点滴を2本ぶらさげて、ジャイアンは女性の
救出に向かった。

話好きのジャイアンは、テイの良いナンパに
成功し楽しそうなひと時を過ごして
いったのでした。

不思議なことに、病棟内でお互いに挨拶が
できる人は少ないようだなぁ。

まぁ、しょうがないか。

みんな具合が悪くて、テンションが低いのは
当然なんだろう。

ただ、今回、たまたま一緒の時を過ごして
いった4人は、挨拶が自然にできた人の集まり
だったようだ。

ちょっと勇気をだして、こんにちはと会釈を
すれば、いい年こいても、友達は増えるんだなぁ。

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