第23話うどんこ先生ガンガン日誌「やるなぁ、おじいちゃん」

手術が終わり、ICUから病室に戻ってきたら
隣のベットに新たな住人が来ていた。

目つきは鋭いが、なぜか人懐っこい80才を
悠に超えた「シゲじい」だった。

若いころはお店を手広くやっていたと本人はいう。

食欲も旺盛で、とても元気だが、話を聞いて
みると今年に入って4回めの入院ということで
あった。

ご挨拶ということで、なぜか「塩飴」を頂いた。

おじいちゃんから、頂き物をした初めての
経験だった。

何故か、知らないおばあちゃんから、物を
頂くことが、今までに何回かあったなぁ・・・。

おばあちゃんという人間は、必ず何かを
持っていて、それを他人に渡すことを楽しみに
している人種ではないかと思っている。

ある時、電車の中で、行き先を尋ねられた
ことがあった。

教えてあげたら、お礼にということで
「ボンタンあめ」をしこたまもらって
しまった。

オブラートだけに包まれたものだったから、
ポケットの中に入れることもできず
頑張って口の中に、全部を詰め込んだら

『おまえさんは、そんなにこれが好き
なのかい?』

と言って、お代わりをくれそうになって、
お断りをするのに大変だったことがあった。

また、雪の降ったある日、坂道の下で登るのを
躊躇していたおばあちゃんを、車に乗せて
坂の上に連れて行ったことがあった。

着いたのに、なかなか車から降りない
おばあちゃん。

マジックバックの中から、白菜を一つ取り出して

『この子は、誰かに貰われるために今日は
持ってきたんじゃ』

と言いながら、新鮮は白菜を頂いたことが
あったっけ。

なので今回は、おじいちゃんの生体を
観察できる初めての経験だった。

そんなシゲじいの元に、若~い看護師さんが
一人やってきた。

『シ~ゲちゃん。検査よく頑張ったねぇ、
エライ・エライっ』

なぜか、アニメ声で幼稚園児に接し始めた
看護師さん。

「ウン。ぼくちゃん頑張ったよ~。
傷口 見て見てぇ」

と甘えるシゲじい。

『よしよし。痛かったねぇ。
でも、よく頑張った。エライ・エライ』

「じゃ、ご褒美に、いいもの見せてあげる。
ほらっ。これ見て!」

『うわぁ。すんごぃ。この宝石。すてきぃ~』

もう、聞いちゃいられない。

これじゃ、入院生活が楽しくて、
何回も来るわな。

おじいちゃんの元気の源は、アニメ声の
看護師さんの優しさでした。

(看護師さんも たぁいへん だなぁ~)

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