武勢みさき
もはや三十一文字の日記。
なんとなく毎日を歌に。私小説ならぬ徒然の歌。
だいたい一日一首ずつ増えていく短歌を、キリの良いタイミングでまとめた記事。ゆるーい自選だったり、思いつきと勢いにまかせた単発企画だったり。
note2019年開催イベント「おばさん大喜利」参加自作品のアーカイブ、全17本。更新終了。
単調な毎日を短調な三十一文字に切り詰める、2021年のまとめ。
月を待つうちにあなたも来るでしょう ほかに居場所のない私たち
分の悪い賭けだ 君にも私にも明日が来るのは確定事項
のの字かと思えば無限、僕の背にまじないかける君の指先
変わり映えしない焦りと苛立ちをまた八月の最後の夜に
あなたから届いた花は冷凍庫の中でずっと満開のまま
好きな人と特別な人の境目を日に5ミリずつ埋め立てていく
冬の日の写真の父の横顔は年経るごとに若返りゆく
出来合いのかたちを真似た思い出で見るもののない過去を彩る
「幸せでいて」と「せいぜい苦しめ」と同じ軽さで歌うくちびる
愛をする、愛することの方法を教わらぬまま朽ち折れる骨
ほろほろと砕ける月の影の下あなたのくれたリングが光る
威勢よくはしご蹴倒し逃げていく遠い背目掛け吹き矢の真似事
手触りも色も香りもある夢に生きてるんです これは夢です
焼きたてのマフィン三つで手を打とう周回遅れのデートの誘い
とびら越しつまさき立ちで幸せが部屋を出ていく足音を聞く
まだ少し笑い足りない顔だった香箱座りのタコは3点