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“デリバリーもテイクアウトもイートインも” すべてを1アプリ内で選べるのが理想的だ。 【マーケティング戦略の観察】

LINEが飲食業界の“テイクアウト事業”に参入したという(日本経済新聞 2019/4/18付)。

最近ではUberEATSなどの登場もありフードデリバリー事業も注目を浴びており、この飲食業界周辺で起きている“デリバリーとテイクアウトとモバイルオーダーあたり”について最近の市場分析をまとめておく。

1、“中食”と“外食”の違いについて

人はかならず毎日食事をするが、食事方法にはいくつかの選択肢がある。
①内食、②中食、③外食、だ。

①内食・・・家で自分で料理をして食べる。
②中食・・・惣菜や弁当を買って家で食べる。
③外食・・・家ではなく、外のお店で食べる。

生活圏内のコンビニの発達や女性就業率の向上などの社会環境変化を受け「②中食」が増えたのが平成の三十年であったが、
ここ近年は中食にも変化があり、コンビニで買って帰る選択だけでなく「デリバリー」や「テイクアウト」も人気を高めている。もとから飲食店には“出前”も“持ち帰り”も存在はしたが、この人気の背景にはネットやスマホアプリのサービスが増えて便利さが増している影響も大きい。店で食べるより安くつくし、2019年10月の消費税増税ではイートインに比べてテイクアウトのほうは税率緩和が検討されてもいて注目もされている。今回はこの“中食の変化”に注目して市場分析を整理しておく。

2、UberEATSの画期的なオペレーションモデル

まず、『UberEATS』から触れよう。
UberEATSは、2015年にアメリカでサービスインし、たった数年のうちに数十カ国の都市にサービスが広げている。
カーシェアリングの『Uber』がなぜ宅配サービスに参入するのか、はじめて聞いた時はピンとこなかったが、もともとUberは、
“タクシードライバーと、タクシーに乗りたい人をつなぐ”のがビジネスドメインであったので、
この“〇が欲しい人と〇を求めている人をつなぐ”というビジネスモデルの横展開が『UberEATS』を産んだのであった。
Uberのトップ層メンバーがインタビューで下記のように答えている。引用する。

ウーバーの強みは、配車アプリで培ってきた顧客とサービス提供者をマッチングするアルゴリズムだ。配車の場合は乗客とドライバーという2者、イーツの場合は消費者、配達員、飲食店の3者をつなぐ。
アプリ上でボタンをタップすると、瞬時に誰が商品を届けるかが決まる。これが肝だ。
「過去4~5年、配車で学んだノウハウを生かすことで、このビジネスが可能になった」
(2016年10月当時)

3、従来のデリバリー事業者の“2つのビジネスモデル”

UberEATSが画期的なのは“配達員を一般人登録者で賄ってしまおう”という発想だ。ここにすべてがつまっている。日本の伝統的な大企業だと、常識が邪魔をしてこの判断はしにくいのである。

もともと日本にもデリバリーはもちろん存在していたし、インターネット以降のテクノロジーを使った新規事業者の参入も育ってきていた。主要なサービスでいうと、楽天デリバリー、出前館、ファインダイン、LINEデリマといった各社だ。

大きくいうとふたつのモデルがあり、
1つは、プラットフォーマーとして出前ポータルサイトを運営し、そこに「配達員をもともと抱えている外食飲食店」が加盟店登録をする形態である。この場合はデリバリーサービス業者といってもプラットフォーマー役に徹している。
もう1つは、提携した店舗の“宅配代行”のビジネスまで担う形態。ファインダインがそれにあたり独自に宅配員を育成・保持している。このサービスがあると、もともと自社で宅配機能を持っていない「③外食事業者」でも「②中食ビジネス」にも参入挑戦することができる。
これの発展系に、ウーバーイーツが登場する。

どうしてもデリバリー事業をはじめようとすると“配達員の調達”が高くつくが、そこの経費を限りなくそぎ落とす方法の解が「一般登録者に宅配してもらう」というオペレーションモデルの開発であった。画期的。

最近では宅配員どころか店舗さえ持たない“デリバリーに特化したレストラン”も増え、料理をつくるだけが自社事業で、集客から配送まで顧客接点のすべてをUberEATSに任せるビジネスモデルだという。

4、ユーザーからするとデリバリーもテイクアウトも“目的の上では同じ”

それで、今年の注目は「テイクアウト事業」の進化である。
「②中食」の今後の発展には、デリバリーとテイクアウトの両面がある。
“持ってきてもらうか、とりにいくか”である。

この2019年4月に、LINEが『LINEポケオ』という新たな飲食テイクアウトのサービスをリリースしたという。
もともとLINEには『LINEデリマ』というデリバリー形式のサービスもすでにあり、LINEはこれで“デリバリーとテイクアウト”の両面のサービスをそろえた形になる。
サービスインに際してのLINE担当者のインタビュー記事を見つけたので引用する。

現在、「LINEデリマ」ではピザや寿司など14,000店舗の情報を掲載しており、2018年の第4四半期の取扱高は対前年比118%増と、著しく成長しています。そうした中で、土日に利用頻度があがるデリバリーとは別に、平日使いが見込めるテイクアウトサービスとして「LINEポケオ」を開発しました。
デリバリーやテイクアウトは、ユーザーにとっては食事スタイルの選択肢のひとつだと思うんです。もっと気軽に、ユーザーの任意のタイミングや気分で、「今日はデリバリー」「今日はテイクアウト」と食事を選べる、統合的なサービスにしたいと考えています。

“持ってきてもらうか、とりにいくか”。
ユーザーからすると、「弁当を家で食べる」という目的の上ではデリバリーもテイクアウトも変わらないのである。
そうして外食と中食の境界線はますますうすれていく。“どちらかだけを事業にする”というのではもう古いと言われる時代がくるのではないだろうか。

5、近いうちに“イートインオーダー”も同じアプリ内で完結するだろう

ここでふと思う。
あるデリバリーアプリがあるとしよう。
あるチェーン店レストランが、そのアプリと提携し“デリバリーサービス”を提供している。もちろん同じアプリUXの中で“テイクアウトサービス”にも対応している。
ユーザー側の用途に合わせて、レストランからお届けもできるし、店までとりにきてもらえるなら値引きサービスもある。
アプリで決済登録も済ませてあるので、デリバリーにしようがテイクアウトにしようが決済は先に済んでおり、受け取るだけで便利。

しかし、ある日、買い物の帰りに「たまにはいつものレストランで外食にしよう」と思う日もあるだろう。
いつもは手軽なのに、テーブルにつくと紙のメニューを渡されて、店員がテーブルの近くにやってくるのを待って、声でオーダーして、聞き逃しがないか復唱してもらい確認。会計をするには、レジに並んで、店員が伝票をレジに手打ちして値段を教えてくれるのを待ち決済手段を伝えて支払う。

(わざとそう書いている面もあるが) これだと急に不便だ。デリバリーやテイクアウトのほうがUXが進化しつつある。イートインがいつのまにか一番不便に感じられる。

なので、きっとここから次の発展は、数年かけて「デリバリー」「テイクアウト」「イートインメニューオーダー」の3つが、同じアプリのUXの中で完結するようになるだろう。

先行的に出てきているイートインオーダーサービスを少し紹介して、この分析記事を終わりにしよう。

レストランに到着してテーブルに座ったら、自分のスマホからその店のメニュー表を呼び出して、注文をタップするだけ(テーブルにQRコード等がついていたりするイメージ)。
注文と同時に決済も済むので、食べたらウォークスルーで退店するだけか、もしくは出口にスマホのタッチパネルに触れてドアを開けて退店する。


飲食業界も変化が激しくなってきている。
どのプラットフォーマーが、全国数百万店の外食産業の土台にはいりこむか(「お皿の下のお皿」である)、ここ数年間が注目だ。

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