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大河「いだてん」の分析 【第14話の感想】 新元号への変わり目

第13話までが『ストックホルム大会編』で、この第14話からは新章突入。ストックホルムから4ヶ月ぶりに金栗四三が帰国。日本を舞台にした物語の始まり。日本は、新しい時代を迎えていた。

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1、新元号という“大きな変わり目”

四三たちがストックホルムへ旅立ったのは1912年5月である。そして帰国し新橋駅に戻ってきたのが同年9月。

まずその間に、明治天皇が同年7月30日に崩御され、新元号『大正』へと時代は移り変わっていたのであった。
新元号。
まさに今年、2019年の新元号『令和』への変化点とシンクロする。
元号が変わろうとも毎日の生活には特に支障がないようにも思えるが、“時代の変化”というものは意外とこういう“節目をきっかけ”として変わりはじめるものである。

四三たちは、たった4ヶ月間だけの海外渡航だったのに、日本の空気感が変わっているのを感じとる。

新たな登場人物、二階堂トクヨ(寺島しのぶ)があらわれる。金栗四三へピシリと質問をする、「敗因は何だとお考えか」と。のちの日本女子体育大学の創設者、強い女性たちの登場である。

三島弥彦は、1913年1月に帰国する。
そして仲間たちが、天狗倶楽部を解散するのを知る。「風当たりも強い。歳もとった。時代が変わったのだ」と諭される。

体育協会には革命が起こっている。
嘉納治五郎のポストは永井に奪われている。「嘉納さんのやり方ではダメなんだ、オリンピックがそれを証明したのだ」と。

たった数ヶ月でガラリとムードが変わる。
そういう“恐ろしさ”はいつの時代にもある。現代だけが“テクノロジーが発展して、時間の流れが早くなっている”わけではない。“ムードが思ってもいないほうへガラリと変わる”という事は、節目節目で起こり得ることなのだ。『令和』にもきっと言える。歴史は巡る。

2、さまざまな“旅立ち”。それを横目に見る四三

しかし、変化とは、成長の機会でもある。
停滞には成長はない。変化は、リスクでもあるが、良い機会をも生み出す。

この第14話では、実にさまざまな“旅立ち”が描かれた。

三島弥彦はこう言った。
日本の新聞がアメリカ発祥の野球を野蛮だとこき下ろしたが、弥彦はアメリカほどのスポーツ大国はないぞと警告しながら、「ならば、ボクは、アメリカに渡ろう。アメリカを学び、正しいアメリカを日本に伝えてみせよう」と。
弥彦は陸上ではなく銀行員としてアメリカを目指すと宣言する。
現代からみると、弥彦こそ時代の流れを正しく読んでいると言える。

二階堂トクヨも、登場していきなり外国留学へと出発する。体操科目の先進国であるイギリスでスポーツを学びにいくという。目を輝かせて新橋駅を出発する。

そして、美濃部孝蔵(朝太)も旅立つ。
地方へのドサ回り巡業に帯同するよう、師匠から指示された。新しい挑戦、旅立ちである。

では、四三は?
“金栗四三の旅立ち”は、まだ今回には描かれなかった。
四三はストックホルムから戻ってきて、日本の変化にまだついていけていないとでもいうように“迷い”をみせている。
共に戦った三島弥彦はそんな四三を連れ出して、無声映画のストックホルムオリンピック映像を見に行こうと誘い、四三の心を勇気づける。
いろんな仲間の旅立ちを横目に見ながら、四三も、“自分の旅立ちの模索”を始めている。


3、50年後

寄宿舎でのストックホルム報告会で、二階堂トクヨに「敗因は」と指摘をされて、四三は反射的に「言い訳はしたくない(ので言いたくない!)」と言い返す。
「それではダメだ、未来のために敗因をきちんと考えろ」と永井と二階堂から責められる四三。

誰よりも四三は考えてきたのである。
描かれこそしなかったが、それがわかる。帰りのシベリア鉄道に四三はひとりきりで揺られて帰ってきたことになるが、行きが2週間かかったのだから帰りも2週間。四三はひとりで悶々と繰り返し繰り返し何度もオリンピックの敗北について考え続けたはずだ目に浮かぶ。そして、次に自分が何をなすべきかを。

永井が叫ぶ、「我が国の体育は、10年、いや50年遅れている。欧米人と肩を並べる未来のために何をすべきかを追い求めるのだ」と。四三は言い返す、「50年後では遅い、4年後だ!」と。
「10年待てば31、50年は71。それではもう走れん」のだと。「4年後のベルリンに向けて早速もう明日から走る」と。

50年後。
それは、この物語を語る古今亭志ん生のいる世界、1963年のことである。
四三も実はまだ健在である。
71歳になった四三は、50年後の世界で何を思っているだろう。
ストックホルムから50年の時を経て、夢の“東京オリンピック開催”を間近にして、四三ははたして喜んでいるのだろうか。(おわり)

※画像引用元:すべてNHK公式ホームページより



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