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大河「いだてん」の分析 【第26話の感想②】 1912-1928年の5つのオリンピックを簡単に振り返る。

第26話の舞台は1928年開催のアムステルダムオリンピックである。
1928年。
日本人が初出場した1912年のストックホルムから数えると、16年も経った。ずいぶん長い時間。
この16年のあいだに5つのオリンピックがあったので、ここらでオリンピックの歴史を振り返っておく。

※第26話の感想①(前編)はこちら↓

1、オリンピックを介して日本近代史を知る機会に。

「いだてん」はスポーツドラマではない。大河ドラマだ。
大河ドラマとは、
“日本の史実”をある側面から切り取り現代に伝えることで“今の日本や日本人がどういった歴史の上に成り立っているのか”を広く国民に考えさせる機会にする。これが大河ドラマの意義だ。

特に今回の「いだてん」は大河によくある戦国時代や江戸時代といった時代設定ではなく、“日本近代史”を扱っているのが特徴的だ。1900年代初頭の日本。あまり歴史の教科書としてもフォーカスされにくい時代を知るための、良い機会になっているのではないか。

2、5つのオリンピック(いだてん史観)

さて、それでは、5つのオリンピックの特徴を“いだてんで描かれた視点”を材料として、簡単に箇条書きでまとめてみよう。

⑴ 1912年 ストックホルムオリンピック

・日本人が初参加したオリンピック。
・ただし、たった2人きりの参加選手、金栗四三と三島弥彦。
・慣れない長期遠征、食事、白夜、外国語、等に悩まされ記録は残せず。
・帰国すると、明治から大正へ改元。明治の旧思想が瓦解始めているムードが描かれた。


⑵ 1916年 ベルリンオリンピック

・前年から勃発した第一次世界大戦が戦地欧州で悪化し、オリンピックは中止に。
・金栗四三は選手生命のピーク時をこれによって逃す。一時は自暴自棄に。

⑶ 1920年 アントワープオリンピック

・前年に終戦。戦災被害が大きかったアントワープでこそ、平和のシンボルである五輪を開催しようと発起。
・日本人ははじめて15名もの大世帯選手団で臨んだが惨敗。テニスで銀2。初のメダル。
・金栗四三はマラソンで16位どまり。
・水泳に日本人初参加。

⑷ 1924年 パリオリンピック

・1923年に関東大震災が起こる。
・被災後の暗い世相を元気づけたい目標も持ち、自粛をうながす反対世論も押し切り五輪に参加するが、またしても惨敗。
・日本人選手は19名参加、銅1 (レスリング)。
・金栗四三、引退表明。

⑸ 1928年 アムステルダムオリンピック

・1926年に大正から昭和へ
・28名の選手が参加し、日本人初の金メダル獲得。
・記録は、金2、銀2、銅1。
・女子選手参加が始まった初のオリンピックで、人見絹枝が陸上800mで銀メダル。
・金メダルは、陸上男子三段跳の織田幹雄と、
競泳男子200m平泳ぎの鶴田義行。
・当オリンピックまでの間に、体協から独立する形で陸連/水連がそれぞれ設立。金メダルはその影響もあったか。



こうして16年間分を駆け足で俯瞰すると、「いだてん」のおかげで、日本近代史の大きな時代背景はつかめている気がする。
世界大戦。関東大震災。改元。性差。等々。
はじめて知ることも多い。いだてんを1年見切ると少し近代史を語れるようになるかもしれない。

(おわり※他の回の感想分析はこちら↓


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