なつかし劇場/ブリキ屋の太鼓
日曜日。荒川土手のグラウンドで
「そんな事じゃ、プロにゃなれねえぞ!」
などと叫びながら、年端も行かない子供達にへなちょこノックをしている。
野球選手を夢見ていたであろう化石のようなオジサンを見ておりますと、子供の頃を思い出すものでございます。
へーちゃん、こうちゃん、小生の3馬鹿は、ゴミ置き場で自転車の車輪を発見。
元はハタキであったであろう竹の棒も入手。
下町のガキ大将が主人公のテレビ漫画「国松さまのお通りだい」で、子供たちが棒で車輪を押し出してクルクルと走り回るシーンがあり、その場面を再現をしようとしております。
車通りのほとんど無い、都電の線路脇の道路。
道路に沿ってブリキ屋の小さなこうばのような庭があるのですが、ブリキ屋のおいさんも興味があるのでございましょう。
縁台に腰掛け、枝豆で一杯やりながら我々の様子を眺めております。
ヨーヨーやけん玉など、コツをつかんで遊ぶオモチャが得意なこうちゃんですが、何度やっても数十センチしか車輪を押しだせません。
ガシャ〜ン!
すぐに倒れてしまう車輪、それもそのはずです。
片側に5段変速用のギアが付いていて、そちらの側に倒れてしまうのです。
「バカヤローだな、おめえたちゃ」
しびれを切らしたブリキ屋のおいさんです。
おいさんの言い方だと、ブルキ屋になるのですが、、、
昼間からコップ酒。
呑み助魂を感じさせる、桂小金治似のおいさん。
「ワッカだけにしねえと、クルクル行かねんだよ」
こうちゃんから車輪を取り上げ、何やら超特大のペンチで、タイヤのスポークを、
バチ〜ン!バチ〜ン!
と切断。
車輪はワッカだけになり、
「ホラ、見てみろ」
とおいさん。
目を輝かせた3馬鹿は、
「すげ〜!カッケ〜!」
と大はしゃぎ。
気を良くした、ほろ酔いおいさん。
仏壇の仏具を磨く、金属磨きの「ピカール」で薄汚いワッカをピカピカに磨いてくれます。
さらに、竹の棒も竹を割って新たにこさえてくれ、最高の道具を仕立ててくれました。
「じゃ、おいさんがお手本見してやっから。おめぇら、よく見とけ!」
シュル、シュル、シュル〜。
ワッカは軽快に回転。テレビ漫画の子供たちよりも楽しそうに走り回るおいさん。
小生達も大歓声です。
しかし、その時。
おいさんのセッタとほろ酔いが災いしました。セッタが地面に引っかかり、足がもつれて、
ビタ〜ン!
もんどりうって倒れるおいさんでしたが、たまには笑いの神様が降臨するものです。
動力を失い、ユラユラと走行するくだんのワッカ。
すると突然。線路側の植え込みから走り出た野良猫が、そのワッカをライオンの火輪くぐりのようにくぐりぬけ、走り去ったのです。
「すげ〜!サーカスみたい!」
「おいさんすげ〜!」
3馬鹿は大興奮で拍手喝采。
すると。
ムックリと起き上がったおいさんが一言。
「バカヤロー。おいさんはなぁ。わけえ頃、猛獣使いだったんだぞ」
いい感じでサゲのセリフを言い放ったおいさんでしたが、、、
コチラを向いたおいさんの顔面には生々しい擦り傷が出来、血がしたたっています。
ヒーローのように、にがみばしった笑顔を作り我々の心配を跳ね返す、おいさん。
それを見た時。
おいさんを称える気持ちと哀れむ気持ちが入り混じり、何ともいたたまれない気持を初体験した、小生でございました。
最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。(*´∀`*)
鳥裸族
なつかし劇場集|torirazoku|note(ノート)
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