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Jay Bothroydにさようなら

いつかは来ると分かっていた日、

来てほしくないと思っていた日、


そんな日は、何の前触れもなく訪れた。






北海道コンサドーレ札幌の騎士


私は彼を一言で例えるなら、「騎士」だと思う。

彼の一挙一動に騎士の面影を感じるからだ。


相手DFを何人も背負ってボールキープ出来るし、パスで味方を活かすのも上手いし、強引に点を奪える。

素晴らしいテクニックを魅せたかと思えば、次のプレーでは圧倒的フィジカルで相手を弾き飛ばす。 

彼はまるで、力強さの中にも気品を併せ持つイングランドの騎士を体現したかのようなプレーを魅せるのだ。


そんな彼のプレーは毎年進化し続けた。


2019年は、チャナティップと鈴木武蔵と組んだ強力トリデンテで相手チームを蹂躙した。

2020年は、オールコートマンツーマンに適応し、齢38にしてチェイシングを身につけた。

2021年は、ポストプレーに磨きをかけ、途中出場をメインとしながら4アシストを記録した。

彼は「ぼくは赤ワインみたいに歳をとるとうまくなるんだ」と言っていたが、どうやらその言葉は本当らしい。

彼はオブザピッチでも紳士的だった。

サポーターへの丁寧なファンサービス。

クラブのために率先して動く行動力。

チームメイトのことを考えた発言。

これはそう簡単に出来ることではない。

そんな彼に特に印象に残っているのは、宮澤裕樹とともに選手全員の給与一部返納を発案したことだ。

この行動はコロナ禍においても前代未聞。日本スポーツ界で給料返上が行われたことはこれまで一度もなかった。

この行動について彼は、

「俺たちが毎日サッカーをできるのは、周囲で支えてくれる人がいてこそ。大変な状況にはみんなが一緒になって立ち向かうべきと考えたんだ」。

引用元:スポーツ報知
【札幌】ジェイ、給与返上は宮沢と二人
で発案していた「大変な状況にはみんな 
が一緒になって立ち向かうべき」

という自分たちがプレーできる環境を支えてくれる人たちを逆に支えるための行動だというコメントを残した。

あまりフォーカスされないが、今になって彼のこのような姿勢が札幌を支え続けていたのだと思い知らされた。

やっぱり彼には騎士道が染み付いている。

彼に立ちはだかった障壁

だが、そんな彼でも苦しむことはあった。

1つ目は怪我だ。

2019年、2020年、2021年と、歳を重ねるごとに怪我で離脱する回数が増えていった。年齢による衰えは、彼の意思とは関係なく体を蝕んだ。

2つ目は病気。 

彼はてんかんを患っており、2017年には薬の飲み忘れで練習中に意識を失うこともあった。そして今オフにはコロナウイルスに感染し、シーズン開始に間に合わなかった。 

3つ目は家族

家族とは離れ、異国の地で1人で生活するのはさすがの彼もこたえた。特にこの2年間はコロナの影響で家族に会えず、ストレスなどから眠れなくなるなど、精神的に安定しないこともあった。

特に家族は深刻な問題だったようで、彼を何度も悩ませていた。



それでも彼はこの障壁を乗り越えてきた。

怪我に苦しんでも、病気に苦しんでも、ストレスに苦しんでも、最後には必ず彼はピッチの上に戻ってきた。

そして彼が戻ってくる度に、我々サポーターは彼のプレーに期待した。彼もその期待に応えようと、チームを勝たせるためにピッチの上を駆け巡った。

私はこの関係が好きだった。ある種の信頼関係のようなものが、ここからは強く感じられるような気がした。



別れの時

2021年11月25日木曜日。 

そんな彼との別れの時がついにやってきた。

2017年夏から約4年半所属する彼とももうさようなら。

彼のことを考えるだけで胸が締め付けられる。

Jay Bothroyd

あなたがいない札幌を私は想像できない。

武蔵、荒野、ロペスといった選手がCFで活躍したが、それでも私は「札幌のCFといえば?」と聞かれればあなたの名前と答えるだろう。

 
札幌からいなくなってほしくない。

溢れ出る本音が止まらないのは私だけではないはずだ。

本当に辛いし、考えたくもない。


だが、それでも受け入れなくてはならない。

出会いも別れも等価値だ。
出会いと別れを繰り返し、クラブは前に進んでいく。

だから辛くとも、この現実を受け入れるしかないんだ。


ジェイ、あなたにまだありがとうは言わない。

だから最後となる柏戦、その試合が終わった時、北海道コンサドーレ札幌に関わる全ての人から、あなたにこの言葉を送らせてほしい。


ありがとう、そしてさようなら。
いつかまた、札幌の地に帰ってくるのを待ってる。






最後に俺たちに見せつけてくれ!ジェイボスロイド!!



見出し画像引用元:北海道コンサドーレ札幌


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