見出し画像

おじさんと姪っ子

「わっびっくりした」
「・・・・」
「いたの」
「・・・・」
「何やってんの?」
「広い世界について思いを馳せてた」
「・・・・」

「私今日からここに住むから」
「はあ?」
「もうママのところには戻らない」
「何言ってんだよ・・・うちはシェルターじゃないんだぞ。居座るなら家賃を払え」
「ケチ」
「不満があるなら自分の家に帰りな」
「・・・・」
「どうせまた小遣いのことで姉貴と喧嘩でもしたんだろ。うちにだって金はないぞ」
「別におじさんにお金貸して欲しいわけじゃないよ」
「どんな理由でも居候は迷惑だ」


「私は誰かの稼いだ金じゃなくて自分が稼いだ金で生活したいの」
「よく言うよ」
「じゃあおじさん、私と寝てみる?」
「あ?」
「3万でいいよ。私、いつも男の子たちに上手って褒められるんだ。スゴいんだって。手でも口でも満足させられるよ。自信ある。それに、私それなりに可愛いでしょ」
「アホか」
「おじさんも一回私を抱いておいたら?近親相姦とか、一度はやってみるもんかもよ。
だって大昔のギリシャの悲劇にだってそういう話あるじゃない?そんなに昔から、今の安っちいAVまで、人間がコーフンすることって変わってないってことだよね。背徳感の上に成り立つ快楽とかさ。おかしいよね。
ねえ、ちょっと、聞いてる?」
「頼むから早く帰ってくれ」
「追い出すなら私、街でエンコウして生計を立てるからね」


「お前、そんなにお金が必要なの?」
「必要だね。世の中金だよ」
「なんで?」
「自分が欲しいものを買うためだよ。当たり前でしょ」
「援交までして欲しいものなんてあるか?」
「自由だよ。おじさん、わかる?」
「わかりたくもないね。」
「私、あんな家にもういられないよ。お姉ちゃんは頭いいけど、私はバカだもん。お母さんはいつも怒ってるし、お父さんは知らんぷりだし、あんな家に居場所なんてないよ」
「・・・・・」
「おじさんの仕事の邪魔はしないからさ、ね?掃除も洗濯も、ご飯も作るよ。いいでしょ?」
「いいわけあるか。だいたい、家出なんてしてもお前の行くとこなんてここしかないことぐらい姉貴もわかってるよ」
「・・・・お母さんは私のことなんか興味ないよ」
「・・・・・」


-------


「おじさんは将来何になりたかった?」
「銀行の社長かな」
「どうして?」
「金持ちになれると思ってたんだよ」
「じゃあなんで今売れない小説なんて書いてんの?」
「人生金じゃねえんだよ。お前みたいな若造にはわかんないだろうけどな」

「私はさ、もっと自由に生きたいんだよ。女子校のこのダッサいブレザーとかさ、早く脱ぎ捨てて大人になりたい。それで自分のお金は自分で稼いで、自分のためにつかいたい。お母さんはなんで私にこんな強く当たるの?自分だって好き勝手やってるくせに」
「金で自由は買えないよ」
「そんなのわかってるよ」
「わかってないさ。自立と自由は全くの別物だろ」
「・・・・」


「・・・・もう寝るぞ」
「もっと話聞いてよ」
「寝たら不満なんて忘れてるよ」
「・・・ケチ」


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?