見出し画像

永遠の味方

もう十年ほど前になるんでしょうか。
私が高校受験で失敗したとき、
もう努力などしても何も報われない
何もかも無駄だと途方に暮れていたとき、
ちょうどこのアルバムが発売されました。

東京事変の4枚目のアルバム「スポーツ」

このアルバムの中に「絶対絶命」という曲があります。


「かなしみよ寝返り打って私を喰らい尽くさないで」

受験の失敗なんて、人生の中では小さな挫折ですが
そのときの私は、うつろな気持ちの中でただこの曲をきいてボロボロ涙をこぼしていました。
この歌は、当時の私にとって単なる慰め以上の意味をもっていたのです。

歌詞の中には、大きすぎる「かなしみ」に脅かされる女の子がいます。彼女は「かなしみ」に飲み込まれそうになり、喰らい尽くされそうになります。
なのに、この明るい曲調に合わせて歌われることで、
彼女が自ら悲劇のヒロインになる事を拒んで、「かなしみ」なんてものを突き放そうとしているようにも聞こえるんです。

この曲では、辛さや孤独を歌った歌詞とアップテンポで明るい曲調が相反する形で激しく反発し合いながら、それでも調和し、共存しています。
その二律背反によって、悲しさがより一層増してくる面もあれば、
その一方で、この悲しみを笑い飛ばしてやりたくもなる。

当時の私にとってこの曲は、自分の傷を認めてあげて、深く悲しむことを許してくれるような、
そしてそれを乗り越える勇気をくれるような、そんな曲でした。

そんな複雑で、養分がぎゅっとつまったようなこの曲を
まさに今つらい時期にいる自分が聴きたくなったようで、
久しぶりに聞いてみたらまたボロボロに泣いてしまいました。

女の子の永遠の味方

椎名林檎さんが以前のインタビュー記事で彼女の曲作りの根底にあるものについて語っていました。

女の子の味方になる材料をみんなで世の中に溢れさせたい。15歳の女の子全員が「人生、余裕! 楽勝!!」と清々しく言いきれる世の中になればいい。その思いはいまも何ら変わっていません。
突拍子もない格好をした私が「私ってば、ブス!」という瞬間を歌っているのを見たり聞いたりして、さっきまで「もう消えちゃいたい」と思っていた女の子が、「なんかお腹空いたな」とでも考え直してくれたら。クスッとでも笑ってくれたら。それこそがこのお商売における一番のやりがい。私にとって、神様は八百万(やおよろず)ではなく、女の子なんです。

もう東京事変も解散して7年が経ち、椎名林檎さんもデビューして21周年目に入ろうとしています。

私にとって彼らの曲はいつまでもお守りのようで、
この先もきっと私を支え続けてくれるものだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?