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プレシーズンマッチを語る-サガン鳥栖編

突然始まりましたこの企画。Jチームのプレシーズンの試合を見て、2019シーズンどんなサッカーをやるのかある程度把握しておこう、というものです。そのチームのやってるサッカーの4局目を超簡単に整理していきたいと思います。

第1回はこのクラブ。鳥栖は2月5日に香港選抜と、7日に山東魯能と対戦し、それぞれ1-1、1-3という結果となりました。

試合動画はこちら→→ https://app4.rthk.hk/special/healthsports/player/player.htm

個人的な時間の都合上、山東魯能戦しか見ることができなかったので、同試合からサガン鳥栖の戦い方の感想を述べていきます。

スタメン <基本システム>

今シーズンから就任したカレーラス監督。基本となるシステムは433を採用。新加入組のうちクエンカ、樋口の2人がスタメンに名を連ねました。

【攻撃】

ボールを保持している時、ディフェンスラインにボールを持つ余裕がある時はショートパスでのビルドアップから前進を図ります。その際、システムは以下のように変化します。

SBが大外レーンの高い位置を取り、WGがハーフレーンに絞ることで2-1-4-3のような形に。また、CBに弱めにプレッシャーがかかった場合はGKかアンカーをCB間に入れて3v2の数的優位を作ります(強めのプレッシャーがかかった場合は基本的に前線へとロングボールを蹴っていました)。

昨季、トーレスは下がってボールを受け、落ち着かせるシーンが多かったかなと仙台サポの自分は思っていましたが、この試合は敵DH、CF間の俗に言う第2レイヤーに入って受けるシーンは少なく、ゴール前の仕事に従事させているようでした。

その代わりにボール落ち着かせる役割を担ったのがクエンカです。クエンカの初期位置は左ウイングでしたが、ハーフレーン〜トップ下のような位置も取ってボールを受けていました。

そして攻撃時に目を見張る活躍を見せたのが原川です。彼もまたボールを落ち着かせる役割を担っていましたが、彼はSBとCBの間=チャンネルに入ってペナルティーエリアに侵入するシーンが何度も見られました。このチャンネルはトーレスが中央に位置取ることでCBの動きを封じ、SBやWGが幅を取っているために生まれたものです。

鳥栖のミドルゾーンでの戦い方は簡単に言うと「オーバーロード+アイソレーション」です。片方のサイドは人を集め数的優位を、逆サイドはウイングのクエンカや島屋を孤立させ、相手と1v1の状況を作り、質的優位を確保します。
鳥栖のオーバーロード↓

そしてまさにこの形からこの試合の鳥栖の唯一の得点が生まれます。
※黄色矢印:ボールの動き 青波矢印:ドリブル グレー矢印:敵の視界や体の向き

右サイドでオーバーロード。敵陣を同サイドに集めます。また、左IH樋口は相手のRMとDHの間に入ることでRMがクエンカ方向へ行くことを牽制していました。
この時の敵の視界や体の向きは彼らから見て左方向。

敵が集まってきたところで藤田からアイソレーション役クエンカへロングフィード。クエンカには広大なスペースと時間が与えられ、落ち着いて縦に運びます。

ボールが逆に来たことで、敵の視界、体の向きも逆に。サイドチェンジ最大の特徴です。そしてその背中側で完全にフリーになった安在へと落ち着いてクロス。ヘディングは一度はGKに弾かれましたが、こぼれ球をトーレスが押し込みました。

最終局面、ラスト30mの部分は簡単にクロスを上げるのではなく、ショートパスでニアゾーンへの侵入を心がけているようでした。上記しましたがニアゾーン侵入において、原川の存在感は大きく、出してとしても、受け手としても素晴らしいはたらきをしていました。

【攻撃→守備 ネガティブトランジション】

鳥栖は奪われたら近くの選手がボール保持者へプレスをかけ、そこが剥がされた場合撤退守備へ移行するという形を取っていました。

そしてオーバーロード+アイソレーションから幾度となくチャンスを演出していた鳥栖ですが、この形はネガティブトランジションにも効果を発揮します。

右サイドでのオーバーロードでの数的優位。藤田からトーレスへと縦パス。

しかし奪われてしまうトーレス。ネガティブトランジション。

オーバーロードで人数をかけていたため、選手同士の距離感が近く、一目散に4人で敵を囲い込みます。

そしてボール奪取。

ゲーゲンプレスには
・プレーエリア制圧型
・パスの受け手制圧型
・パスコース制圧型
・ボールホルダー制圧型
の4つの形がありますが*、鳥栖のこれはプレーエリア制圧型に該当するかと思います。
※ 参照 https://www.footballista.jp/column/44404

【撤退守備】

敵CBがボールを持っている際はトーレスが緩めのプレッシャーをかけ相手をサイドに誘導し、その間後ろの選手たちはマンマークで敵につくという形を取っていました。山東魯能が奪ったら縦に間髪入れずいれてくるチームだったので、完全に撤退して守備をするシーンはごくわずかでした。

【守備→攻撃 ポジティブトランジション】

撤退守備からボールを奪い、前線にスペースがある場合は素直にWGとCFに入れ、カウンターを発動させます。鳥栖はこの試合3失点しましたが、2失点目はカウンターを発動したものの、トーレスが中央で奪われ、返り討ちに会って喫したものでした。カウンターに行く際のネガティブトランジションの整理はされていなかった印象です。
逆にスペースがない場合はバックパスや横パスで相手の即奪還チャレンジをいなし、丁寧なビルドアップに切り替えていました。

【セットプレー】

ここではコーナーキックを取り上げてみます。まず守備時

ゴールエリアの辺上に5人が並びゾーンで守り、4人がマンマークで人を捕まえるという形ですね。ちなみに鳥栖はこの前半2分のCKで相手に先制点を献上しました。ゾーンの間に入り、合わせられたものでした。

攻撃時のコーナーキックはこの試合8回ありましたが(手元の集計)、そのうち5回がショートコーナーを使っていました。ペナルティーエリアの手前からゴールに対しあまり角度をつけずに浮き玉を入れたり、逆サイドまでショートパスで展開してクロスを上げたりとバリエーションが豊富でした。中でも面白かったのが26分のシーン。

ぽっかり空いたニアにグラウンダーで入れ、折り返したもの。この形はワールドカップでスペインもやっていましたね。
カレーラス監督はセットプレーにも細かくこだわる監督のようで、対戦相手はプレーが切れても集中は切れないよう注意する必要があります。

最後に

プレシーズンマッチを語る。第1回はサガン鳥栖を取り上げました。鳥栖にはこの試合での出場はありませんでしたが、金崎夢生やイバルボなど強力なFWがベンチに控えています。もし右WGに金崎がいれば、アイソレーションから突破したクエンカのクロスに対し逆サイドの金崎が仕留める形も考えられます。相手チームにとって脅威でしかありません。昨季はリーグ最少の得点数で14位に沈んだチームをスペイン人監督がどのような色に染め上げていくのか楽しみです。

以上。次回はコンサドーレ札幌を取り上げます。

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