ベガルタセットプレーレポート 〜第3節 ヴィッセル神戸戦〜
はじめに
2019年のJリーグが開幕して早いこと3週間経ちました。そして今季が始まり、私が一番驚いているのは
「仙台の無敗優勝がなくなったこと」
でも
「あの味スタの選手紹介が豪華になったこと」
でも
「エスナイデル監督が今年も元気にハイライン!」
でもありません。
そう。私が一番驚いているのは
「各試合のマッチレビューの多さ」
なのです。
どのマッチレビューも非常に質が高く、両チームの戦術的狙いやそれを踏まえた試合展開が詳らかに記され、試合を見なくてもそのチームの状況の把握が少なからずできます。
しかし私はそれらを拝読させていただきながら思ったのです。セットプレーに対して淡白なものが多いなと。
ということで今回私はこのnoteで、私が愛してやまないベガルタ仙台の第3節、ヴィッセル神戸戦で生まれた各セットプレーの分析をしていきます。
図中の表記
○攻撃・守備の表記について
それぞれ保持時、非保持時と置き換えて考えていただければ…
○矢印の意味について
実線:ボールの動き(シュートやパス)
点線橙:人の動き
波線緑:ドリブル
○図中の番号
各選手の背番号になります。こちらでご確認ください↓
キックオフ
まず仙台のキックオフの狙い。それは「ラインを上げ、陣形を相手陣内にまず押し込む」というものです。そのために仙台はキックオフからCB大岩にボールを下げ、180cmの右WB蜂須賀へロングボールを放り込み、最終ラインをハーフウェイライン辺りまで一気に押し上げます。
さてロングボールを放ったのち、気にしなければならないものはセカンドボール。仙台は蜂須賀を囲むように、同時に周りの選手にマンマーク気味につくことでセカンドボール回収率を上げています。局地的なスペース占領、オーバーロードとでも言ったところでしょうか。
上図はマリノス戦のもの。周りの選手にしっかりつくことができています。このシーンでは敵SBがボールに触りスローインとなっています。
先程マリノス戦のものを出したのは、チームが理想とする形を神戸戦では作れていなかったため。まず大岩のキックが身長を考えた上で圧倒的に不利な石原の頭上に行ってしまったこと。そして三田が浮いてしまってることが問題です。この2つの問題が重なり、セカンドボールを拾われた仙台は、一気にラインを上げたことの弱点、裏のスペースを突かれ、失点してしまいました。
おそらく三田の位置はシマオがカバーしなければいけないところ。新加入ということもあり、完全に戦術が浸透していないために起きた失点とも位置付けることもできます。
ちなみに仙台はこの試合4度キックオフを行いますが、この後半開始時のキックオフ以外はCBに戻してから蹴らず、ビルドアップによる前進を試みていました。中途半端にやってんじゃないよと私は言いたいのです。
スローイン
スローインについては攻守ともに全く設計されている素ぶりが見られません。攻撃時は基本的にWBが投げ、ポジション的に近い選手が即興的、すなわちその場で各選手が自由に動きボールを受ける。守備時は近い同じく近い選手が相手に寄せる。また、かなりガッツリくっつくため、それが高い位置からのプレッシングのスイッチとなることもあります。
FK -攻撃
仕留めるべきゴールから遠い場所でのFKは基本的にCBに下げ、ビルドアップにより前進を試みます。
対してそのゴールに近いFKがこの試合は2本ありました。一つはゴールから25mほど、直接狙ったもの、もう一つはサイドから入れ、中で合わせるものです。いずれもキッカーは永戸です。以下は後者の図。
FK -守備
神戸も早めにリスタートし、ビルドアップをやり直すことが多く、セットして構えることはほとんどありませんでした。以下は唯一といってもいいセットされた状態での神戸のFK。
後半の40分。ラインを一線にセット。ダンクレーに合わせに来たポドルスキのボールを長沢が触り、危なげなくペナルティーアーク内で弾き玉回収班の石原が回収。そこから梁に繋いで前進にトライしていました。
CK -攻撃
神戸の守備はポドルスキをニア側のゴール前にストーンとして置き、他はペナルティーエリア内の仙台の選手にマンマークでつく形。それを逆手に取ったものが8分のCK。
アベタクは石原よりも30倍シュートが上手いと噂で聞いてるんですけどさすがに枠入りませんでしたねこれは。
さてこの試合、仙台は神戸のGKキム・スンギュが出て触ることが出来ないところ、ゴールエリアの辺上に落とすようなボールを何度も蹴っていました。その形は試合開始早々に報われます。
ニアに突っ込んでドーーン!マーカーが三田だったことが神戸としては災いしたか、シマオが冷静に首でコースを変え流し込みました。ユアスタからは盛大なシマオコール。
神戸は同様のボールから開幕戦でも失点していたため、これを狙うのは必然であるのかとも思います。
昨年のベガルタで、身長が180cmを超え、かつ継続して試合に出場していた選手は大岩、平岡、蜂須賀、板倉の4人でしたが、今年は板倉が抜けたもののシマオ、ジャーメイン、長沢が加わりセットプレーの脅威は大きくなった印象。
CK -守備
神戸はこの試合で前後半通じ15本のCKを獲得しましたが、その全てでショートコーナーを用いていました。187cmあるダンクレー、大崎のファーに高いボールを送ろうとすると、197cmシュミットダニエルにやすやすキャッチされてしまうために、そのようなプレーを選択してたとも考えられます。
仙台のブロックはファー側にゾーンで4枚。その前方にマーク隊3枚。ゴール近くニアに1枚。ニア側ゴールエリア角1枚(兼ショートの準備)。ショートコーナー対策1枚。という構図。
こちらから見て左側のキッカーはポドルスキでした。リターンを受けてからえぐり、角度をつけたクロスというシーンが多かったように思います。以下の場面ではそのように入って来たボールを大岩が後ろに流しました。前に弾けば西がいたので好判断でしたね。
右のキッカーはイニエスタ。66分のニアゾーンに入るダブルタッチは圧巻でしたが、そんなことより3分の仙台の高速カウンターですよ私が見てほしいのは。
からの
ボールがゴールから遠ざかるたび、細かくラインをコントロールする一番外側の蜂須賀が頼もしいなと思ってたらクロスはニアに入り、ジャーメインが触ります。
それが永戸に渡りカウンター発動。例のベルギーのカウンターほど、走りに特徴は見られませんが、しっかりゴール前まで行くことが出来ました。最終的にキムスンギュに防がれましたけど。
しかし右コーナーからの流れで同点ゴールを献上してしまったことも事実。30分。ショートコーナーから入れたクロスは阿部が弾き、そのボールはビジャへ。ビジャは山口へバックパス。この時点ではシマオとジャメはDFラインに吸収されたまま。山口からの放り込みを警戒した形。
で、結果的にアバウトに放ってくることはなく横の初瀬へ。それをスイッチにジャメが寄せます。
さすがに遠かったよジャメ。紆余曲折あり、ビジャからシマオがボールをカットしかけますが、周辺は神戸の選手だらけ。奪われ、トントン繋がれ、右にイニエスタが…あぁ…ああぁ…失点…
前節のマリノス戦では2失点しましたが、それもこのようなセットプレーからの陣地回復をしている最中のこと。「その陣地回復のタイミングが個々の選手で違うが故にこのようにまた失点してしまった」と容易に想像でき、それで片付けることも可能です。しかし私はそれも実はしっかり設計されていると信じたい。そのタイミングに次節以降も注視し明確な基準を探したいと思います。
今回はセットプレーのnoteとなっているためここからの話は余談ですが、仙台は今のところ5-4-1ないし5-3-2でしっかりセットし、引いた時、守備します!と宣言した時の失点数は未だゼロです*。
もちろんカバーがどうだとか、属人的すぎるとか問題はありますが、それでも事実、現状はゼロ。0なのです。
※内訳
マリノス戦
1点目→CKはじき返して陣地回復してる間にペナ内侵入されPK献上。
2点目→上記通りスローインから前プレ開始。かわされ前後分断された状態で失点。
神戸戦
1点目→上記CKのはじきの陣地回復最中。
2点目→上記キックオフのミス。
3点目→高い位置でのビルドアップ最中にミスしカウンターを食らう。
余談が長くなりました。
さて、13本のショートコーナーに対しゾーン+マンツーのミックスで対応していた仙台でしたが、試合終了が近づくと前に人数をかける目的で、また直接的なクロスボールが入ってこないショートを神戸が使っていたこともあり、シマオのみをストーンに置いたマンツーマンの守備に切り替えます。
この構えで2本のショートコーナーを受けましたが、いずれも枠内シュートにつながることはありませんでした。
ゴールキック -攻撃
CBの近くに敵がいなければ繋いでスタートを心がけていますが、この試合では古橋、ビジャ、ポドルスキの監視があったため、ロングボールを蹴る形になっていました。キックオフの時同様、局地的スペース占領も欠かせません。
ゴールキック -守備
神戸はGKからペナルティーエリアの辺に立つCBに入れ(いわゆる観音開き)、ビルドアップを開始するシーンがほとんどでした。仙台はその場合、撤退してから迎撃するという形を採っており、3トップをCB+DHの1人(多くは山口)にそのまま当てることでビルドアップを牽制することもありましたが、微々たるものでした。以下はその僅かなロングボールでのゴールキックの例。神戸も当然落下点の周りに選手が寄っていました。
最後に
ということで今回はヴィッセル神戸戦のセットプレー分析を行いました。
セットプレーは試合内容とはほぼ関係ありません。また攻撃でのFKやCKについては相手によってものを変え、意表を突き、効果的に行う必要がありますし、100%決まった形は持ってはいないと私は思います。なので今日こうだったから明日はこうしようというものでもないですし、そこはgood、badの一つの感想にするのは難しいなというのがふと書いてて感じました。
対して守備は100点の解、形を求めるものです。短期的、1試合のセットプレーからの失点が出来るだけ少なく、長期的に、どの相手に対してもその守備陣形の弱点を見せない。これが理想です。なのでこれは長期的に毎試合きっちり見て、細かい違いに気づけるようになりたいと思ってます。まあこれは結局どちらのオンプレーでも言えるものですが。
締めの収集がイマイチついてませんが以上です。お読みいただきいただきありがとうございました。
Twitter
とーれす @torres9_vega
ベガルタ戦術藩 @vegatarian_
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