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テクニカル・ディレクター

テクニカル・ディレクターって何なの、という質問をよく受けるので、メモしておく。

清水幹太のベースドラムという文章の「テクニカルディレクターとはどんな仕事なのか」に書いてある。でも、仕事の分野が離れると、分かりにくいかも知れない。

というわけで書く。

最初に、コンテクストを共有しておく。広告キャンペーンを、ウェブ上でも展開するような仕事を考える。あるいは単発のイベント(大きなスポーツのイベントとか)と連動するようなウェブサイトとか。そして、その企画自体が、高度である場合を考える。

たとえば Bloody Tube というテレビの生放送の仕事をしたことがある。テレビ番組の進行と連動して、スマホ画面が切り替わる。テレビでは向こうからなんか飛んでくる絵があって、スマホを操作してスコアを稼ぐ。最後、勝ったチームに所属したユーザーでポンタポイントを山分け。

こういうとき、クリエイティブ・ディレクターというロールが、ゲームにしようよとか、こんな進行にしようとか、壇蜜にプロジェクションマッピングしようとか、を決める。この企画やコミュニケーションの設計みたいなもの、あるいはその成果物を「クリエイティブ」という。もともとは広告としてのメッセージとか、そこにだす音とか絵とかの大まかな構造やその成果物をいう。(憶測だけど、転じて、体験全体を設計することを言うんだと思う。アプリとかサービスの文脈であればUXを設計とか。)

テクニカル・ディレクターの仕事は、クリエイティブ案を受けて、その技術的な実現に責任を持つ。生放送の進行に合わせて、スマホの画面を切り替えるにはどうするのか? WebSocket? WebSocket 使えない状況だったら http のロングポーリング? 

番組の進行に合わせてスマホの画面が変わり、しかも点数とかは動的にサーバーから取得しないといけない。ってことは、システム全体がグローバルな状態を動的に持つことになる。ってことは、各開発担当者ごとに環境が要るよね? 各環境が、開発中の環境が、どのバージョンをサポートしているかってどう管理する? 作業中にデプロイが発生するときはどうすんの?

この種の仕事では、アプリケーションと技術の間の、知的な距離がけっこう大きい。案件が複雑だったり、文字通り大きな創造性が求められるときいは、とくにそうだ。クリエイティブ・ディレクターの仕事をテクニカル・ディレクターが完全に肩代わりすることは難しいし、その逆も然り。両方できる人もいるだろうけど、分業したほうが専門領域で卓越しやすい。

テクニカル・ディレクターは、多くの場合、設計だけでなく、実装中のエンジニアのプロジェクト・マネジメントや、運用にも関わる。Bloody Tubeの場合は私はサーバーサイドのエンジニアと一緒にモニタリングをしていた。テレビの放送映像を作るチームのテクニカル・ディレクターは、サブコントロールルームにいた。で、いろいろ対処するわけだ。

範囲は組織やプロジェクトによって違う。運用は完全に渡してしまう場合もあるかもしれないし、もっとクリエイティブ・ディレクターよりの業務を担う場合もある。

最初に紹介した、清水幹太は、私に比べてかなりな勢いでクリエイティブよりなので、私が普段やることとは違うであろう。彼が作ったというテクニカル・ディレクター集団の「ベースドラム」は今どうなんってるんだろう。いつか話を聞いてみたい。

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