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【3/4】請負契約と成果完成型準委任契約の違い

主旨

改正民法の請負契約と成果完成型準委任契約の違いをざっくり理解しよう

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さわり

前記事では、アジャイル型開発と相性のよい契約形態を中途半端に探りました(すみませんw)。
請負契約では非合理的で、無期雇用契約が本命なのは間違いありませんが、さりとて離職を考慮すると、派遣や準委任との差分が縮まり、結局は体制こそ問題なのではないかとほかの観点が生まれます。

また、改正民法が発効すれば準委任契約でも成果が求められると報じる記事を読み、では雇用と派遣がアジャイル型向きで、請負と準委任がウォーターフォール向きということなのか?まかせておきながら成果を求めるとはどういうことか?など、頭の中で整理がしにくくなりました。

そこで本記事では、請負契約と新しい準委任契約がざっくり理解でき、弁護士に相談できるくらいの知識が得られるのをめざします

申し送り

念のため明示的にお伝えしておくと、私はアジャイル信仰おじさんではありません。
プロジェクトの特性や条件などをもとに開発方式は熟慮されるべきです。
だから、プロジェクトの特性や条件が適切に扱われず契約に至るのはおかしいでしょ、という提言がこの契約シリーズ記事の通奏低音です。
顧客もエンジニアも幸せになるよう、契約前に出口戦略を考えておきましょう。

なお、法律の解釈はいっさい弁護士にまかせ相談してください。
すべて語るには、少なくとも法律の文章全体を載せねばなりませんし、弁護士でない私が法的効力の担保を期しつづるものではありません。
したがって、例外的な事象が生じる可能性があっても、いちいち「例外あり」といった記載はいたしません

結論

弁護士に「もちろん留保つきではあるが、基本路線として間違っていない」と太鼓判をもらった解釈を以下述べます。

前提
ITプロジェクトが未完成に終わり、損害賠償責任が問われた

請負契約
受注者は賠償しなければならない

成果完成型準委任契約
善管注意義務を果たした受注者は賠償しなくてよい

ざっくり解説

決められた期限までに、決められた品質のプロダクトが納品されず、発注者がなんらかの損害を被ったケースが想定されています。

請負契約では、たとえば機を逸したことによる損害を賠償してほしいとする訴訟が起きたら、受注者にはその賠償責任が免れられないでしょう。
そればかりか、ひとたびプロダクトを納品すれば、契約不適合責任(2019年2月現在の瑕疵担保責任)を5〜20年間背負うことになります。
なんだか厳しくて、受注者としては多めに見積もりしておきたいですね

いっぽう成果完成型準委任契約では、善管注意義務さえ果たしていれば、予定どおりプロジェクトが完了しなくとも損害賠償責任を負いません。
また受注者は、請負契約と同様ではありますが「予定どおりの完了はしなかったが、これだけはやったしそちらは利益が得られるだろうから、やった分だけは請求させてくれ」と言うことができます。
なんだかゆるくて、発注者としては不信感がつのりますね

請負契約の極論

理論上、極端な質問があります。

ほんとうに、プロダクトをつくる前に、プロダクトの姿がこまっっかいところまで寸分違わず理解(期待や予想でなく網羅的に理解)できるんですか?
万が一理解できたとしても、契約後の発注者の変更要望は、受注者が「別の時期に別料金だ」と言うけどそれでいいんですか?

どちらの質問に対しても無防備にイエスと答えた発注者は、請負契約の不幸を経験するでしょう(怖)

現実解

理論上は、発注者にとって請負契約のほうがいいに決まっています。
予定どおり完成もできなかったのに、賠償責任を負わず金くれだと?なめてんの?と言いたくもなりますよね。
ただ、実際には、予想でプロダクトをすべて描ききるってフツーの人間には無理だよね?無理じゃないなら、なんで世の中でたくさんのプロジェクトが失敗し訴訟が起きているの?に、合理的な返答をするのは難しいはずです。

提訴し裁判に対応するのにはコストがかかります。
そもそもプロジェクトに費やした時間は戻せませんし、逸した機会がまた訪れるともかぎりません。
たとえ損害賠償請求が通ったとしても、決して「万事よかった」とはならないでしょう。

だとすれば、受発注者相互に適度な柔軟性を受けいれたほうが、プロジェクト完了だけでなくその後の関係もうまくいくのではないでしょうか。

ちなみに、私は京都市とシステムズ社間の提訴に注目しています。
旭川医科大学とNTT東日本社間の問題についても合わせて、別途で記事化したいところです

もう一つの準委任契約

「成果完成型」について上述しました。
「履行割合型」というのもあり、こちらは2019年2月現在で施行されている準委任契約と同等のようです

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